いまに始まったことではないですが、Sigma-Aldrich社が米国を中心に、著名教授などの最新研究試薬を続々と製品化しています。時々、論文が出版されたと同時に、試薬も発売されていることがあるでしょう(リファレンス部にも記載がある)。
学術研究者と密接したパートナーシップを結んでいることがそのスピーディーな発売を可能としています。売上に結びついているかどうかはわかりませんが、少なくとも先進的なイメージをもたせるには十分でしょう。日本の試薬会社も頑張っていますが、なかなかそのスピード感を出すことはできません。
さて、そんなSigma-Aldrich社が、それらの試薬と研究者をまとめた、ポータルサイト、
を開設したようです。今回はこのウェブサイトを少し覗いてみることにしましょう。
総勢89名の特集ページ
ウェブサイトを開くと、名前順にズラリと著名な合成化学者の顔がアルファベット並んでいます。その数89名。上述したように米国の合成化学者中心ですが、日本人の研究者も3名のみみられます(丸岡啓二先生、柴崎正勝先生、山本尚先生)。
それぞれの写真を開くと、その研究者の略歴と共同開発した試薬が見れるという簡単なしくみ。では例えばいくつかの教授の試薬を見てみましょう。
Phil S. Baran
言わずとしれたライジングスターPhil Baranのページ。最近はかなり反応開発に特化していますが、試薬の種類を見てみると、
- Functionalized Building Blocks
- Fluorination Reagents
- Baran Hindered Amines
- Baran Diversinates™
- Technology Spotlight: Palau’Chlor®
- Technology Spotlight: Diversinates™: Any-Stage Functionalization of (Hetero)aromatic Scaffolds
- Technology Spotlight: Diversinates™: Linkers for Native Chemical Tagging of C–H Bonds
- Technology Spotlight: Electrochemical Allylic C–H Oxidation with N-Hydroxytetrachlorophthalimide (TCNHPI)
と、どんだけ開発してんだという状況。クリックすれば論文の内容が浮かんできます。うーんすごい。ここにないものですと、例えば、
製品:ALD00444 | Late Stage Functionalization Toolkit
がありますが、以下のような12種類のLSF(Late Stage Functionalization)試薬各100mgをキット化して販売しているらしいです。各試薬を個別に購入することも可能。得られた最終工程近くの化合物を何かしら変換したいというときに役立つかもしれません。
Description | Product # |
Zinc isopropylsulfinate, 95% | 745480 |
Sodium 1,1-difluoroethanesulfinate | 745405 |
Zinc trifluoroethanesulfinate | 745499 |
Zinc difluoromethanesulfinate, 95% | 767840 |
Zinc trifluoromethanesulfinate | 771406 |
Sodium tert-butylsulfinate | ALD00288 |
Sodium 2,2-dimethylpropylsulfinate | ALD00290 |
Palau′Chlor®, 95% | 792454 |
Sodium 1-(trifluoromethyl)cyclopropanesulfinate | 790184 |
Zinc benzylsulfinate | 790796 |
Sodium 4,4-difluorocyclohexanesulfinate | ALD00230 |
Sodium tetrahydropyransulfinate | ALD00232 |
Stephen Buchwald
ドクター配位子ですね。彼の配位子を知らない人は有機合成ではモグリです。そんなBuchwald教授の「Buchwald配位子」を気が済むまで試したい!という人におすすめなのが、KITALYSIS-24PD | KitAlysis™ High-Throughput 24 Pd Precatalyst Reaction Screening Kit-Pack of 2
第3,4世代Buchwaldリガンドを中心とした、24種類のPd触媒反応リガンドを一気に試せる試薬キットです。
なお、本キット試薬の使用には、以下装置の購入を推奨しています。
Z742108 | KitAlysis™ スターターキット
Benjamin List
有機触媒反応の先駆者ですね。関連する有機触媒やList教授が開発したChiral Disulfonimidesなどが売られています。同時に関連した反応を学ぶことができるので、閲覧するだけでも価値があると思います。
まだまだ充実していないページも多いですが、研究者を眺めてチェックしながら覚えて試薬も試しに買ってみるという方向でもありですね。こういう代名詞のような試薬・反応を開発したいものです。ぜひご覧あれ。