働き方改革が叫ばれ始めた世の中ですが、筆者の置かれた環境は変わるどころではないようで、時代に取り残されております。
しかしながら少しでも研究室の学生さんには良い環境を提供することで、よりよい成果を出してもらいたいなと日々考えております。そんな折り関西学院大学理工学部化学科 山田英俊研究室の方より、凄く便利なツールをご紹介いただきましたのでご寄稿を依頼してみました。ケムステ読者の皆様も是非参考にしてみて下さい。
化学実験は楽しいのでついつい沢山やってしまいがちですよね。それはいいんですけど、なんと言っても面倒くさいのが使い終わったガラス器具の洗い物。筆者も学生時代に大きなバケツに山盛りになった器具を洗うのが一日の中で結構な時間を食っていたのを思い出します。最近では器具の自動洗浄機などもあるようですが、我が研にあるやつは大きめの器具が少し洗えるかな程度で事実上あまり役にたっておりません。企業のように洗い物をやってくれる担当者がいる訳では無い大学にとって、この洗い物にかかる時間を短縮できたらそれは素晴らしいですよね。そこで今回洗い物ハックをご紹介したいと思います。ご寄稿いただいたのは関西学院大学理工学部化学科 山田英俊研究室の若森晋之介助教です。山田研と言えば、先日最小のシクロデキストリンに関する論文をスポットライトリサーチでご紹介したばかりですのでご記憶の方も多いでしょう(記事はこちら)。以下ご寄稿記事となります。
はじめに
山田教授が考案された「働き方改革」のフラスコ洗浄を紹介します。名付けて,スピンブラシ!(まずは動画でご覧下さい)
仕組み
スピンブラシは,電動精密切削工具の「リューター」と呼ばれる器具にブラシを取り付け,使用しています。今回はシャフトフレキシブルグラインダー(WINSA Industrial社製)を購入しました。壁掛け式モーター→フレキシブルシャフト→洗浄ブラシに組み上げ,足踏みスイッチでコントロールします。洗浄ブラシは,市販のフラスコ洗浄用ブラシの針金が丸くなった部分を切り落として使います。リューターは電動ドリルより高回転なので電動歯ブラシのように洗浄効率が高く,山田教授の手にかかると3秒でフラスコ内側の水はじきが無くなります。
左上①電源 スライダックで回転数を調節; 左中②ペダル 器具洗浄では両手が塞がっているので,足踏み式を採用; 左下③モーター 壁掛けして固定; 右上④ブラシ 市販のブラシの持ち手をペンチでカットして,長いものと短いものを用意; 右下④ブラシ ドリルチャックでブラシを固定
注意
使用する際,ブラシをフラスコに入れてから回転を始めることが重要です。そうすることでブラシ側と手持ち側の二点が支点になり,安定してブラシが回転します。ブラシをフラスコに入れる前に回転させると,遠心力でブラシが曲がり,そのまま回転するので危険です。スライダックを用いれば回転数を調節でき,安全性を高められます。
小さいフラスコの洗浄には
爪のケアにも使われるロータリーツール(Tacklife社製)を導入しました。充電式のハンディタイプで,試験管や10 mlナスフラスコなど小さなガラス器具の洗浄に最適です。トルク(回転力)が小さいことが欠点ですが,取り扱いの手軽さがメリットです。
手順
1.ブラシをフラスコに入れる
2.フラスコをしっかり握る
3.回転を始める
4.回転を止める
5.フラスコからブラシを抜く
6.すすぐ
いかがでしたでしょうか?早速私の研究室でもスピンブラシを購入してみたところです(購入品は下に紹介しております。たぶん同じものかと思います)。最初は戸惑いますが評判はなかなかです。是非お試しあれ!
追記
スライダックを入れるなど電圧を調整しないとかなりの高速回転になりますのでご注意下さい。
研究者の略歴
名前:若森 晋之介
所属:関西学院大学理工学部化学科 山田研究室
研究テーマ:有機合成化学を駆使した生物活性物質に関する研究をしています。人間も含めた生物にとって役に立つという立場で生物活性物質を化学合成し,生命の仕組みを解き明かしたいです。
略歴
05年4月〜09年3月 早稲田大学理工学部(鹿又宣弘教授)
09年4月〜14年3月 東京大学大学院農学生命科学研究科(渡邉秀典教授)
14年4月〜16年5月 信越化学工業株式会社研究員
16年6月〜18年3月 関西学院大学理工学部博士研究員(山田英俊教授)
18年4月〜現在 関西学院大学理工学部助教