[スポンサーリンク]

一般的な話題

Reaxys Ph.D Prize2019ファイナリスト発表!

[スポンサーリンク]

さて1年間のときをおいて再開された、若手研究者の通り門「Reaxys PhD Prize」。ついに先日そのファイナリストが決まりました!

全世界から360人以上の屈強な新人博士(およびその卵)の応募の中から、ファイナリストに残ったのは45名。このなかから3名のReaxys PhD Prize受賞者が決まります。それでは、日本の研究機関から応募したファイナリストを中心に紹介していきましょう。

日本の研究機関からはなんと2名

今回選ばれたのは、以下の2名。まずはおめでとうございます!

Reaxys Prize 2019ファイナリスト(写真は許可を得ていないので、問題があればご連絡ください。)

毎年4,5名多いときは8名ほど日本から選ばれるのですが、今回は応募者が少なかったのでしょうか。非常に簡単に応募できる国際賞なのでぜひ応募してみると良いと思います。なお、現在カーネギーメロン大学に所属している博士課程学生であるMr. Tatsuya Higakiさんも日本からの留学生と思われます。

それではまず上記二名の経歴と業績を簡単に紹介しましょう。

永澤 彩博士ーアンモニア合成触媒の開発

東京大学西林研究室で昨年度博士を取得しています。西林研といえば窒素固定に関する研究。最近もハイインパクトな研究を報告しているため、ケムステでも何度か取り上げています。この永澤さんもこのテーマの重要な研究に携わっており、2年前スポットライトリサーチで紹介されています(記事:世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発)

Remarkable catalytic activity of dinitrogen-bridged dimolybdenum complexes bearing NHC-based PCP-pincer ligands toward nitrogen fixation

A. Eizawa, K. Arashiba, H. Tanaka, S. Kuriyama, Y. Matsuo, K. Nakajima, K. Yoshizawa, Y. Nishibayashi

Nature Communications 20178, 14874. DOI: 10.1038/ncomms14874

経歴をみるとこの論文を含めて14報も報告している強者。ファイナリストに選ばれて当然ですね。今年の春からMITのRadosevich研で博士研究員(JSPS海外PD)として研究を続けているようです。

関連記事(西林研究室)

高畑 遼博士ー極細金ナノロッドの長さ制御と表面プラズモン共鳴

もうひとりの高畑さんも東京大学。佃研究室の出身です。佃研究室は金属クラスターを機能中心とする物質群の創出を中心に研究を行っており、高畑さんは極細金ナノワイヤとナノロッドの長さ制御に関する研究を行っていたようです(ハイライトレビューはこちら)。おそらく以下の論文が代表論文だと思われます。

Gold Ultrathin Nanorods with Controlled Aspect Ratios and Surface Modifications: Formation Mechanism and Localized Surface Plasmon Resonance

R. Takahata, S, Yamazoe K. Koyasu K. Imura T. Tsukuda,

J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 216640-6647. DOI: 10.1021/jacs.8b02884

2018年に博士を取得され、現在は京都大学の寺西研究室で博士研究員(JSPS国内PD)をされているようです。

関連記事(佃研究室)

日本以外からも未来のスターが?

今回ファイナリストに残った日本の研究機関に所属していない人も研究室で時代を作った学生ばかりです。

例えば、Máté Bezdek(プリンストン大・Chirik研)はScience誌を含む十数報の論文を出版していますし、Alexander Fawcett(ブリストル大・Aggarwal研)はフォトレドックス触媒を使った脱炭酸ボリル化で同じくScienceNature Chemなどの論文誌に優れた研究を報告しています。Yoonsu Park(KAIST, Chang研)も完全に研究室で突出したプロダクティビティを示してます。あげたらきりがないので、このぐらいにしておきますが、このメンバーから書類のみで3名を選ぶのは相当至難な技ですね。

ファイナリストはどうなる?

最終的なReaxys PhD Prizeに選ばれなくてもファイナリストには特典があります。

最終選考に残った45名は、2019年の10月3日と4日にオランダのアムステルダムで開催される「Reaxys PhD Prize Symposium」に招待されます。この祝賀会には、特別イベント、最終選考者による研究発表ポスターセッション、基調講演、そして食事会が含まれます。また、最終選考に残った仲間や国際的な化学のリーダーたちとネットワークを作る絶好の機会でしょう。日本でも、Reaxys PhD Prize Symposiumが不定期で日本化学会年会の際に行われており、懇親会だけでなく、近い将来シンポジウムでの講演にも招待されます。

というわけで、簡単な書類だけで至れりつくせりのこの賞、腕に覚えのある人は来年(継続されれば)応募されてはいかがでしょうか?最後にもう一度今回のファイナリストの方々おめでとうございます!

関連リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ウレエートを強塩基性官能基として利用したキラルブレンステッド塩基…
  2. マテリアルズ・インフォマティクスの基礎から実践技術まで学ぶワンス…
  3. 固有のキラリティーを生むカリックス[4]アレーン合成法の開発
  4. 年に一度の「事故」のおさらい
  5. 「遠隔位のC-H結合を触媒的に酸化する」―イリノイ大学アーバナ・…
  6. 日本薬学会第144年会付設展示会ケムステキャンペーン
  7. 分析技術ーChemical Times特集より
  8. Reaxys Prize 2011募集中!

注目情報

ピックアップ記事

  1. 支局長からの手紙:科学と感受性 /京都
  2. ペニシリン ぺにしりん penicillin
  3. ジュリアス・レベック Julius Rebek, Jr.
  4. 【PR】Chem-Stationで記事を書いてみませんか?【スタッフ募集】
  5. 旭化成、5年で戦略投資4千億
  6. 有機電解合成プラットフォーム「SynLectro」
  7. ケムステV年末ライブ2024を開催します!
  8. Ugi反応を利用できるアルデヒドアルデヒド・イソニトリル・カルボン酸・アミン
  9. 【PR】 Chem-Stationで記事を書いてみませんか?【スタッフ募集】
  10. 三菱化学が有機太陽電池事業に参入

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年7月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー