さて1年間のときをおいて再開された、若手研究者の通り門「Reaxys PhD Prize」。ついに先日そのファイナリストが決まりました!
全世界から360人以上の屈強な新人博士(およびその卵)の応募の中から、ファイナリストに残ったのは45名。このなかから3名のReaxys PhD Prize受賞者が決まります。それでは、日本の研究機関から応募したファイナリストを中心に紹介していきましょう。
日本の研究機関からはなんと2名
今回選ばれたのは、以下の2名。まずはおめでとうございます!
毎年4,5名多いときは8名ほど日本から選ばれるのですが、今回は応募者が少なかったのでしょうか。非常に簡単に応募できる国際賞なのでぜひ応募してみると良いと思います。なお、現在カーネギーメロン大学に所属している博士課程学生であるMr. Tatsuya Higakiさんも日本からの留学生と思われます。
それではまず上記二名の経歴と業績を簡単に紹介しましょう。
永澤 彩博士ーアンモニア合成触媒の開発
東京大学西林研究室で昨年度博士を取得しています。西林研といえば窒素固定に関する研究。最近もハイインパクトな研究を報告しているため、ケムステでも何度か取り上げています。この永澤さんもこのテーマの重要な研究に携わっており、2年前スポットライトリサーチで紹介されています(記事:世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発)
Remarkable catalytic activity of dinitrogen-bridged dimolybdenum complexes bearing NHC-based PCP-pincer ligands toward nitrogen fixation
A. Eizawa, K. Arashiba, H. Tanaka, S. Kuriyama, Y. Matsuo, K. Nakajima, K. Yoshizawa, Y. Nishibayashi
Nature Communications 2017, 8, 14874. DOI: 10.1038/ncomms14874
経歴をみるとこの論文を含めて14報も報告している強者。ファイナリストに選ばれて当然ですね。今年の春からMITのRadosevich研で博士研究員(JSPS海外PD)として研究を続けているようです。
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高畑 遼博士ー極細金ナノロッドの長さ制御と表面プラズモン共鳴
もうひとりの高畑さんも東京大学。佃研究室の出身です。佃研究室は金属クラスターを機能中心とする物質群の創出を中心に研究を行っており、高畑さんは極細金ナノワイヤとナノロッドの長さ制御に関する研究を行っていたようです(ハイライトレビューはこちら)。おそらく以下の論文が代表論文だと思われます。
Gold Ultrathin Nanorods with Controlled Aspect Ratios and Surface Modifications: Formation Mechanism and Localized Surface Plasmon Resonance
R. Takahata, S, Yamazoe K. Koyasu K. Imura T. Tsukuda,
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 216640-6647. DOI: 10.1021/jacs.8b02884
2018年に博士を取得され、現在は京都大学の寺西研究室で博士研究員(JSPS国内PD)をされているようです。
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日本以外からも未来のスターが?
今回ファイナリストに残った日本の研究機関に所属していない人も研究室で時代を作った学生ばかりです。
例えば、Máté Bezdek(プリンストン大・Chirik研)はScience誌を含む十数報の論文を出版していますし、Alexander Fawcett(ブリストル大・Aggarwal研)はフォトレドックス触媒を使った脱炭酸ボリル化で同じくScienceやNature Chemなどの論文誌に優れた研究を報告しています。Yoonsu Park(KAIST, Chang研)も完全に研究室で突出したプロダクティビティを示してます。あげたらきりがないので、このぐらいにしておきますが、このメンバーから書類のみで3名を選ぶのは相当至難な技ですね。
ファイナリストはどうなる?
最終的なReaxys PhD Prizeに選ばれなくてもファイナリストには特典があります。
最終選考に残った45名は、2019年の10月3日と4日にオランダのアムステルダムで開催される「Reaxys PhD Prize Symposium」に招待されます。この祝賀会には、特別イベント、最終選考者による研究発表ポスターセッション、基調講演、そして食事会が含まれます。また、最終選考に残った仲間や国際的な化学のリーダーたちとネットワークを作る絶好の機会でしょう。日本でも、Reaxys PhD Prize Symposiumが不定期で日本化学会年会の際に行われており、懇親会だけでなく、近い将来シンポジウムでの講演にも招待されます。
というわけで、簡単な書類だけで至れりつくせりのこの賞、腕に覚えのある人は来年(継続されれば)応募されてはいかがでしょうか?最後にもう一度今回のファイナリストの方々おめでとうございます!