総合職であれば、本社以外の勤務や転勤を職務の一貫として、身近なものとして考えられる方は多いのではないでしょうか。特にメーカーにお勤めの研究職やエンジニアの方々は研究所やプラントが国内でも全国各地、あるいは海外にあり、ルーティンで異動があるというお話を聞くことがあります。
そんな中、育児や介護、配偶者の勤務地など、入社当時は想定していなかった環境の変化により、転職理由を「勤務地」としたご相談も数多くいただきます。
限られた勤務地の中でご自身のご経験や強みをいかし、かつ諸条件を維持していただくことは、そう簡単ではありませんが、色々な経緯や経験を経て、理想的な転職を実現された方もいらっしゃいます。
今回は、みなさまの理想を叶えるヒントになればと思い、Mさんの転職エピソードをご紹介したいと思います。
第一希望は勤務地。あとの条件は下がっても転職を考えたい
まず、Mさんのプロフィールをご紹介します。
・34歳男性
・国立大学大学院(修士課程)修了、学生時代は工学部で材料学を専攻
・1社目:機械メーカー
・2社目:化学メーカー(管理職)※今回の転職先
・家族構成:妻と子ども2人
Mさんは当時単身赴任中で、転職をしない限り今後しばらくご家族と一緒に暮らすことは難しい状況でした。転職前の給与水準は比較的高く、ご本人も「家族と過ごすことを第一に考えたいので、まずは勤務地を最優先に考えたい。給与に関しては同水準以上であれば嬉しいですが、仮に下回ってしまったとしても検討します。」と、給与よりご家族との同居やお仕事の内容を重視されている様子でした。
Mさんの覚悟を持って臨んだ転職活動はとんとん拍子に進み、複数社の内定を獲得。現在は、第一志望だった企業にご入社され、ご希望通りご家族と生活をされています。
待遇も前職とほぼ同等の水準をキープできました。
転職が成功した秘訣は何だったのか?
改めて振り返ったところ、大きく3つのポイントがありました。
成功ポイント① 選考の材料となる強みを持つこと
「“とてもすごい”資格なのです。」
…と、突然言われてもピンとこないかと思いますが、この一言が転職成功となる大きな決め手となりました。
Mさんの第一志望企業の選考途中、「Mさんは××工場の業務なら最適なのですが」と、人事の方から希望とは異なる勤務地での打診があったのです。第一希望の企業であるとはいえ、希望勤務地が叶わなければ、転職活動に踏み切った意味がありません。どうしたらMさんの希望を叶えることができるか、どのように人事に掛け合うべきか、対策を考えていたところMさんからお電話をいただきました。
「選考の材料になるかどうかはわかりませんが、今○○○○という、“とてもすごい”資格を取得中で、一次試験に合格している状況です。近日中に二次試験を受けます。」
私は××工場以外でもこの資格に関連したスキルを生かせるポジションがあるはずだと判断し、すぐに企業の人事の方に連絡しました。その際、面接官の方や選考にかかわる方々にも必ずその資格を共有いただくよう、強く念押しした依頼を行ったのです。
結果、Mさんは無事に第一希望の企業かつ、希望通りの勤務地で、しかも管理職での内定を受諾しました。後日、人事の方から「あの資格が採用の決め手となりました」とお言葉をいただきました。
Mさんの場合はマネジメント関連の資格でしたが、他にも、例えば外国語を使うポジションでは、語学に関する資格を取っておいたほうが選考を受けられるうえでスムーズです。英文レジュメの場合“English (fluent).”などと記載いただくことが多いですが、推薦後に企業人事の方から改めてレベルを尋ねられ、「資格持っていますか?」確認されることもあります。また、研究職の場合はこれまで執筆された論文概要の提出を求められる場合があり、その中で「筆頭のものはどれか」や「論文をいくつ書いたのか」という材料から親和性やご経験を判断されることがあります。
成功ポイント② 未知の環境に飛び込むことで培った応用力とマインド
Mさんは前職では研究職(材料)の採用でしたが、社内異動により2年間(機械)設計部門に配属され、研究職に戻るという経験をされています。
設計に異動した際は「材料が分かって設計できる人」、研究所に戻った際は「設計部門の方のように現場の技術サポートができる存在」ということで、自分の価値を高めていきました。
設計と言っても、Mさんは材料の専門家のため、図面をかくことに関してはベテランの方や外注の方などその道のスペシャリストに力を借りながら、全体のプロジェクトをうまくまわすことに注力しました。その中で、徐々に知識を追いつかせようと努力してきた経験は、プラントオーナー(今回は化学メーカー)への転職において、他のプロジェクトにも応用できるものと評価されました。
中途採用の現場では基本的に“即戦力”が求められます。ですので、募集要項にあるような業務をほとんどそのままご経験されていればそれベターかもしれません。しかし、実際にはそのような転職ばかりでなく、求人の業務内容に対して半分ほどしか合致しない転職も結構あります。また、地域限定でマッチ度高くお仕事を探すというのはとても難しいものです。そんなとき、Mさんのように未知の環境に飛び込み、キャッチアップした経験とその応用力は面接時のアピールにもなります。
後から聞いた話ですが、実はMさんの転職は、第一に家族のためですが、ご自身のキャリアのためでもあったそうです。「今後引き続き金属材料の道を歩み続けるよりは、もう一本別の柱を立ててまた新たな挑戦をしたい。」そんなMさんだったからこそ成功できたと思います。
成功ポイント③ 事実をしっかりと私(コンサルタント)に伝えてくださった
今回Mさんの転職をお手伝いできたのは、ご自身の努力とマインドの他に、企業に対して「アピールすべきご自身のポジティブポイントをコンサルタントである私に的確に伝えてくださった」こと」が大きな要因だと思われます。
アピールすべきポイントについては、「転職活動をする以上、それは当たり前のことでは」と思った方もいらっしゃるでしょう。しかし、転職活動中は意外と謙虚になってしまうものです。今回のように、合格していない一次通過の段階の資格がある場合、謙虚になってしまい、あえて隠される方も多いです。しかし、その資格に挑戦している、挑戦できる段階のスキルにある、という事実は魅力的であり、採用時の評価ポイントになる場合もあるのです。
理想的な転職を実現させるためには
今回ご入社されたケースは希望勤務地での転職を成功させ、かつ、年収維持も成功させた事例です。
条件や待遇に関する基準は企業によって大きく異なるため、何が有利となるかは一概に言えません。そのため、企業から正しく評価されるためには、いくつもの材料が必要です。その材料をどのようにアピールするか、どのように企業に伝えるかによって、最終的な結果に影響する場合があります。
もし、転職を考えようと思ったら、ぜひLHH転職エージェントにご相談ください。私どもは全力で転職のサポートをさせていただきます。
[文] 畠山 紗衣 [編集]LHH転職エージェント(アデコ株式会社)著者
畠山紗衣
LHH転職エージェント(アデコ株式会社)の転職コンサルタント。
現在は理系出身者の転職支援を手掛けるが、主に化学・電気・機械領域、メーカー・商社・プラントエンジニアリング会社を専門領域としている。大学卒業後、人材紹介会社に入社し機械・電気・化学業界全般企業担当コンサルタントとなるも、その後大手金融機関を経て現職。自分自身がキャリアを模索した経験からも求職者の悩みへの理解は深い。
Linkdin:linkedin.com/in/紗衣-畠山-90a212108
*本記事はLHH転職エージェントによる寄稿記事です
LHH転職エージェント(アデコ株式会社)は、中途採用のための転職エージェント。
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