クラウド版オフィススイートとはOffice onlineやGoogle ドライブなどのことで、ソフトをインストールすることなくブラウザ上で作業できるサービスのことです。クラウドサービスならではの便利な点がある一方、研究で使用する上では不便さもあります。そこで研究用途に焦点を当てて使い勝手を紹介します。
クラウド版オフィススイートとは
主にブラウザ(IEやChrome)で動作するオフィスのことで、マイクロソフトが提供しているOffice onlineやグーグルが提供しているGoogle ドライブが有名です。繰り返しになりますが、ブラウザを使って文章や表、プレゼンのスライドを作ることできます。一昔前であれば、各専用のソフトをパソコンにインストールして使っていましたが、クラウドのソフトが増え、ホームページや年賀状、プログラムなど様々なものがブラウザで完結するようになりました。現にこのケムスケの記事作成もブラウザで行っています。また化学分野でも電子実験ノートやChemDrawもクラウド版が登場しています。
話は逸れましたが、クラウド版オフィススイートであるOffice onlineやGoogle ドライブには大抵のデスクワークはできるのではないかと思います。どちらにも無料版と有料版があり、有料版ではクラウド上に保存できる容量が大きかったり、使える機能が多かったりします。有料版については、Office online (Office 365)やGoogle ドライブ(G suite)ともに多くの企業が利用していてすでにクラウドはスタンダードになりつつあります。産総研でも2015年からOffice365を使用しているようです。
ソフト
使えるサービスは、ファイル保存を軸に文章、表計算、スライド、メール、カレンダー、メッセンジャー、ビデオ通話などがあります。フォームはアンケートを作成するソフトで、簡単に意見を集約できます。
便利な点
- 常に最新版のソフトが使える:従来のソフトでは、機能に関しては最新版を購入しなければ同じでしたが、クラウド版のソフトは、常にアップデートされ使いやすくなったり便利な機能が追加されます。ただし改悪もあるため、アップデートされてしまうことはデメリットでもあります。
- 操作は同じ:Office onlineでは従来のOfficeと使い方は全く同じでGoogle ドライブも似たような名前、形のアイコンを使用しているのですぐになれると思います。
- どこでもどのデバイスからもアクセスできる:基本的にデータは、One driveまたはGoogle driveというクラウドのドライブに保存されます。データは自動的に保存されるため、消してしまったりファイルが壊れて見れなくなることもありません。iOSやAndroid版のアプリもあり、いつでもどこでもアクセスできます。例えば、電車の中でプレゼンの最終チェックをスマホしたりとわざわざパソコンを開かなくても読んだり編集することもできます。
共有が簡単で同時に作業できる:共有のフォルダに入れたエクセルなどを他の人と共同で編集する場合、一人しか編集できず不便です。しかしクラウド版ならば、複数人が同時に開いて同時に編集できるので大変便利です。例えば、研究室の物品管理を表で管理している場合、誰かが開いていてすぐに記入できず、忘れてしまうなんてこともありません。また共有する際に、編集できる人、コメントしかできない人、閲覧しかできない人と設定できます。研究報告会の資料を後でシェアする場合、作成者のみ編集できて、他のメンバーはコメントのみ可とすることで勝手に編集されることを防げます。指名してコメントすると指名された人にアラートが飛ぶようにできているため、オフラインでの作業効率もはかどると思います。
- ヒストリーで戻ることができる:論文の原稿をメンバーでやり取りしていると、ファイルがrev1,2,3・・・と増え、さらには誰が編集したか名前をファイ名に書き加えていくと、最新版がどれなのか分からなくなります。しかし、クラウド版ならすべての編集履歴が一つのファイルに記録されているため、一つのファイルをに共有すれば大丈夫です。過去に戻りたいときはヒストリーによって戻りファイルを復元することも可能です。
- 検索が早い:共有フォルダなどの膨大なファイルの中からデータを検索すると、大変時間がかかります。でもクラウドなら数秒でささっと検索結果が出ます。
不便な点
- ネット接続が前提:クラウドにデータがある以上、ネット接続が必要となります。オフライン作業もできるようになっていますが使い勝手が良くはありません。そのため、ネットに接続しない分析機器での使用には向きません。
- グラフ、関数・VBAが弱い:まずグラフに関してバリエーションが少なくExcelのように思い通りになりません。これはOffice onlineでも同じです。またデータが多くなり関数が多用されると動作がとても遅くなります。またOffice onlineではマクロは動きません。そのため実験データの整理やスライドで使うグラフの作成には適していません。
- 横のつながりがない:クラウドサービス内では、コピペなどが不自由なくできますが、インストールしたソフトからのコピペはできません。一番困るのがChemDrawで、コピペで構造式を貼り付けられません。そのためいちいち画像化する必要があります。
- メモリ・ネット回線をたくさん使う:外でカフェのWiFiなどでは、動作が不安定になることがあります。また、メモリをたくさん使うため、搭載メモリが少ないPCでは動作が遅くなってしまいます。その分、古いPCに入っているオフィスは新しく購入しなければ、PCのスペックにあったバージョンのソフトを使い続けることができるので問題ありません。
- 容量が少ない:無料版では5GBから15GBという容量しか割り当てられません。この容量は、メールなどすべてのサービスでの合計使用容量なので、写真を多用したスライドなどが多いとすぐにいっぱいになってしまいます。容量を増やすには、月額料金を払う必要があります。月額の費用は安いですが、外付けの記憶媒体とは違い、月額払いを止めると無料超過分のデータは消されます。一方でクラウドでは自分の記憶媒体が壊れてデータを失う心配はないので、外付けを購入した場合よりも安全性は高いです。
詳しい使い方は、いろいろなサイトで紹介されているのでそちらを参照してみてください。もちろん、クラウド版のオフィススイートを使ってよいかどうかは研究室によりけりだと思いますが、クラウドによってデスクワークが楽になることは間違いないと思います。これからもクラウドの利用範囲は5Gの普及拡大も相まって、広がると考えられます。するとほとんどデータは各自のPCには保存せず、常にクラウド上で作業が進む場合ことになるかもしれません。分析機器も例外ではなく、現状ネットワークに接続しているケースはまれですがネットワークにつながり、データ収集は自分のPCから行うことになることも予想されます。
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