有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2019年4月号がオンライン公開されました。
今月号のキーワードは、
「農薬・導電性電荷移動錯体・高原子価コバルト触媒・ヒドロシアノ化反応・含エキソメチレン高分子」
です。今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。
とうとう新年度が始まりました。筆者は読んで字の如く、目の回る忙しさで少々参り気味です。笑
今月の有機合成化学協会誌も非常に濃い内容となっています。
ぜひ研究室や部署の新人に読むことをオススメしてください。
巻頭言:“Japanese Way” 6つの視点
今月号は、住友化学株式会社 健康・農業関連事業研究所 坂本 典保 所長による巻頭言です。
農薬の創薬研究と有機合成化学
日本曹達株式会社 柴山耕太郎
本論文は、農薬の創薬研究について非常に分かりやすく説明されています。特に、農薬の作用機序や生物評価について、ヒト向けの医薬品とは異なる視点で研究開発されていることが実例を交えて紹介されています。
水素結合と電荷移動相互作用の協奏に基づく導電性電荷移動錯体の開発
愛知工業大学工学部応用化学科 村田剛志、中筋一弘、森田 靖*
著者らが開発してきた核酸塩基類が導入されたテトラチアフルバレンやイミダゾールオリゴマー類の合成と物性をまとめた総合論文です。「プロトンのダイナミクスが電子状態の鍵を握る」という興味深いコンセプトで多彩な分子が紹介されております。合成を武器に簡単には到達できない材料を開発し、素晴らしい物性を見出しております。ぜひご覧ください。
高原子価コバルト触媒の特性を活かしたC-H官能基化反応と不斉反応への展開
本総合論文は,高原子価コバルト触媒による炭素-水素結合を活性化するさまざまな官能基化反応,光学活性対アニオンを利用したロジウム触媒,コバルト触媒による不斉炭素-水素結合官能基化反応が記されています.いくつかの反応については,機構についても合わせて議論されています.
ニッケル触媒を用いる炭素—炭素多重結合へのヒドロシアノ化反応とその応用
千葉大学大学院薬学研究院 荒井 秀*、天児由佳、堀 弘人、西田篤司
ヒドロシアノ化の温故知新!ニッケル触媒による多重結合のヒドロシアノ化によって、様々なニトリル化合物が選択的に合成できます。重要な生物活性天然物合成への応用も可能であり、本反応の有機合成における有用性が丁寧に書かれています。
炭酸プロパルギルエステルと各種求核剤とのPd触媒クロスカップリング重合による含エキソメチレン高分子の合成
パラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応は、みなさんご存知ですよね。本論文では、クロスカップリング反応を利用した重合反応として、炭酸プロパルギルエステルと各種求核剤との反応からエキソメチレン構造を有するポリマーの合成が述べられています。一方、求核種の代わりにジボロン酸を用いた反応では、交差共役系ポリマーの生成が見出されております。
Rebut de Debut
今月号のRebut de Debutは3件あります。全てオープンアクセスですので、ぜひご覧ください。
・保護基フリー立体選択的グリコシル化の開発(岐阜大学研究推進・社会連携機構生命の鎖統合研究センター 助教)田中 秀則
・Electron-Donor-Acceptor錯体の光誘起電子移動を利用した有機合成反応(金沢大学理工学域物質化学類・助教)菅 拓也
・生体内反応を模倣した含アミノ化合物の変換反応 (熊本大学薬学部地域イノベーション・エコシステム形成プログラム 特任助教) 下田 康嗣
Message from Young Principal Researcher (MyPR)
今回のMyPRは、名古屋大学生命農学研究科の北 将樹教授によるMyPRです。現在、ご自身のバックグラウンドである天然物化学を起点としたユニークな異分野融合型研究を推進されていますが、そこに至った経緯とともに我々にメッセージを与えてくださっています。刺さりました。オープンアクセスです。
感動の瞬間(Eureka Moment in My research):企業の研究で出会った二個の特異な化合物
感動の瞬間(Eureka Moment in My research)の第九弾は、東京大学薬学部の夏苅 英昭博士による寄稿記事です。
企業の研究現場で体験された感動や衝撃について詳細に語ってくださっています。オープンアクセスです。