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ケムステが文部科学大臣表彰 科学技術賞を受賞しました

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既にTwitter・Facebookでは速報させていただきましたたが、このたびケムステが文部科学大臣表彰 科学技術賞(理解増進部門)を受賞しました!

昨年いただいた化学教育賞(日本化学会)に続く名誉賞であり、長年にわたるウェブでの教育・啓蒙的な取り組みが国家的表彰として評価された形になります。

受賞者

山口 潤一郎(早稲田大学理工学術院 教授)
生長 幸之助(東京大学大学院薬学系研究科 講師)

「科学技術分野の文部科学大臣表彰」とは?

科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術の水準の向上に寄与することを目的としている賞です。

その一部門である科学技術賞(理解増進部門)は、青少年をはじめ広く国民の科学技術に関する関心及び理解の増進等に寄与し、又は地域において科学技術に関する知識の普及啓発等に寄与する活動を行った者が対象となります。

ケムステ代表・副代表とも本業は大学教員なので、どちらかというと若手科学者賞のほうが、見知った人達が受賞している賞としてなじみ深いです。しかし今回は、理解増進部門といういわば教育部門で受賞しており、なかなかに特色ある話かと思います。ちなみに山口代表のほうは、既に研究成果も評価されており、2年前の若手科学者賞と併せてダブル受賞の快挙。

受賞業績について

『ウェブを通じた化学研究と教育の理解増進』で受賞させて頂きました。

 2000年当時、ウェブ上の科学情報は玉石混淆であり、専門家の査読を経ていないことから信頼性が低かった。正確性・信頼性を備えた情報提供を行う持続的ウェブインフラの構築は、極めて達成困難であった。中でも化学領域では取り組みが遅れており、化学情報に特化した啓発型ウェブサイトは国内・国外どちらを見ても皆無だった。

本活動は、候補者らが2000年5月に立ち上げた化学ポータルサイト「Chem-Station」に関連するものである。候補者らを筆頭に、有志スタッフ120余名で運営される。博士号レベルの専門執筆者の手による6000以上の化学関連記事が、万人に無料公開されている。コンテンツ管理システム(CMS)の早期導入により、多分野の有志スタッフの参画、地理的要因に左右されない寄稿、同一仕様での記事作成を実現したことが持続性を維持できた所以である。

本活動により、化学非専門者のみならず、大学院生以下の「未来の化学者」層への情報伝達を実現した。この化学情報伝達・啓発ウェブシステムの確立は、科学啓蒙サイトと科学コミュニケーション人材におけるロールモデルとなり、化学研究と教育の理解増進に寄与している(業績紹介文より引用)。

二人とも化学の”カ”の字も知らない大学3年生から化学専門サイトのケムステを作り始めるという、普通に考えて無茶なことをやってます。当時のネットが荒れ地そのものだったので、何をやっても構わなかったのが功を奏したと言えなくもありません(笑)。既存フィールドでやっていたら、偉い人たちに大変気を遣わなくてはならず、思い切ったことが出来ず大した話にならなかったのかもなぁ・・・と今でも思っています。新大陸に飛び込んでしつこくやり続けると、最初は見向きもされないかもですが、あとあといいこともあるのです。

おかげさまでケムステ運営は、既に研究者履歴よりも長い活動になっています。まさにライフワークですが、「日本最大の化学ポータルサイト」と認知頂けるまで続けられたことは、読者の皆さんあってこそで、本当にありがたいことです。

受賞にあたって

4月17日に文部科学省で授賞式がありました。

もうすぐ設立20年という節目において、このような国家的表彰をいただけたことは、光栄そのものと言えます。

受賞名義上は代表・副代表2名ではあるのですが、日向になり陰になり、サイトの活動に携わってくださる120名超のスタッフの支えがあってこその受賞と考えています。この場を借りて御礼申し上げます。

以前にも回顧録として書いたのですが、もともとは自分にとって便利なサイト、検索可能な化学情報ソースを作っておきたいとする、極めて個人的なニーズから活動を続けていました。こんなでも19年も続けると、かなりの蓄積になることを実感していす。世代も一回りし、気軽にケムステを参考にしてくれる学生さんも増えました。

移り気になろうと思えばいくらでもなれてしまう情報過多の昨今、継続することがやはり何より重要と改めて感じます。この十数年間を振り返ってみても、沢山の科学解説サイトが立ち上がっては消えていくさまを見てきました。中には素晴らしいクオリティの記事を量産しているところもあったのですが、2~3年で更新停止となることが多かったのです。見ているとやはり単純な話で、日々の忙しさや、持続性に欠ける運営モデルを理由に、続けることができなかったのだろうと思っています。

自分で無理せず続けられるスタンスを通したことも一つですが、読者のフィードバックを迅速に得られる仕組み、志の高いスタッフを沢山集めて一緒に活動できたことが何よりの成功要因、また財産でもあり、使命感を育ませてくれた理由でもあると思います。重要なことは記事の品質や数だけではないのだろうな、と今は考えています。

今後とも引き続き、「化学って面白いよね!」を合言葉に、世の中へ化学をどんどん広めていくつもりです。共感頂けるそこの読者の皆さん、ぜひ、ケムステスタッフとして一緒に活動してみませんか?

今後ともご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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