関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」。年4回発行のこの無料雑誌の紹介をしています。
令和元年第一号(2019年第二号)はC–H活性化反応について。有機化学分野で近年合成化学者が最も取り組んでいる課題の1つです。まだまだ多くの課題は残されていますが、工業的にも検討されるようになり、実用化も今後多く出てくることでしょう。
なお記事はそれぞれのタイトルをクリックしていただければ全文無料で閲覧可能です。PDFファイル)。1冊すべてご覧になる場合はこちら。
芳香族炭素-水素結合の触媒的官能基化の新方法論の開発
慶應義塾大学垣内史敏教授による寄稿。日本のC–H活性化反応研究をプレイヤーとして研究をはじめ、20年以上も続けている第一人者による記事です。1993年に村井らによって報告された(著者は当時大学院生)の歴史的なC–H活性化反応の発見から始まり、置換反応(鈴木ー宮浦型、アルケニル化、シリル化)などについて解説しています。
さらに、積極的に取り組んでいた電解酸化との組み合わせによるC–H 結合の官能基化反応についても述べています。
3価ロジウム触媒を用いる炭素-水素結合の直接誘導体化反応
大阪府立大学佐藤哲也教授と大阪大学三浦雅博教授による共著。この2氏が出版している原著論文・総説は本分野で多くの引用数を得ており、トムソン・ロイターの「リサーチフロントアワード」を受賞しています(2012年)。佐藤教授はさらにクラリベイト・アナリティクス・ジャパンのHighly Cited Researchersに5年連続選出されています。
今回寄稿されたのは、3価ロジウム触媒を用いるC–H結合変換反応。同反応に関してもフロンティアであり、多くのフォロワー(改良研究)を生み出しています。
ニッケル触媒によるC–H結合官能基化
京都大学の中尾 佳亮教授による記事。ニッケル触媒を用いたヒドロアリール化反応において第一人者であり、今回は、そのヒドロアリール化反応に加えて、C–Hカップリング反応を紹介しています。ヒドロアリール化反応では、NHC配位子/Ni触媒と、アルミニウムを使った協働触媒反応がユニークで現在の研究にも引き継がれています。
高原子価コバルト触媒によるC-H官能基化反応
最後は北海道大学の松永茂樹教授らによる寄稿記事です。C–H活性化反応の開発としては後発ながら、安価なコバルト触媒にこだわり、さらには不斉反応への展開などユニークなC–H官能基化反応の開発を行っています。
いずれの記事も、第一線で研究を行う研究者の記事が日本語で読めますので、ぜひご覧になってはいかがでしょうか。
過去のケミカルタイムズ解説記事
- 遺伝子工学ーゲノム編集と最新技術 (2019. No.1)
- 感染制御ー薬剤耐性 (2018.No.4)
- 天然物の全合成研究 (2018. No.3)
- 有機分子触媒(2018.No. 2)
- 分析技術(2018, No.1)
- イオン液体(2017年 No.4)
- 電子デバイス製造技術(2017年 No.3)
- 食品衛生関係 ーChemical Times特集より (2017年 No.2)
- 免疫/アレルギー(2017年No.1)
- 標準物質(2016年No.4)
- 再生医療(2016年No.3)
- クロスカップリング反応 (2016年No.2)
- 薬物耐性菌を学ぶ (2016年No.1)