先日、ある大手メーカーの役員で、面接官もされている方とお話をした際、「1次面接を通る人って、どの会社も結構同じですよね」というお話になりました。「現場の面接官も採用責任があるわけです。次の選考に進めるにあたり、『なんでこの人を1次選考通過にしたの?』と言われるような人はパスさせるわけにはいかないから。実際、10分程度話すと結論は出ているケースが多いです」。これは多くの人の面接結果を見ても言えることで、就職・転職問わず、どこの企業に行っても1次面接を突破する人がいる一方、なかなか初回の面接が通らない人がいます。勿論、その後のフェーズでは複数の面接や試験を重ねて、社風や本人の持っているポテンシャルなど、より踏み込んだ選考の中で絞り込まれていくわけですが、初回の面接がパスできないと、自分を深く知ってもらう機会すら得られません。そこで、今回は1次面接を突破するのに求められる「基本装備」について考えてみたいと思います。
1.「情報収集」から「問い」をたてる ~企業研究+α~
「企業研究くらいしています」という声が聞こえてきそうですが、面接官に聞くと「この人はうちの会社にさほど興味がないのでは?」と疑問の声が上がることがとても多いそうです。おそらく、面接前に、求人サイト等で求人情報をチェックし、HPにざっと目を通してサービス内容を把握するくらいはされていると思います。ただ、学業や仕事の傍ら複数企業を同時に受けていると、隙間時間のネットサーフィンで何かしらの情報は調べてはみるものの、表面的な情報収集しか出来ていないことも多いのではないでしょうか。
例えば、花粉症の季節なので目薬を販売している「A社と「B社」を例に考えてみます。
消費者目線でいうと、両社ともに一般用目薬のイメージを持つ人が多いと思いますが、実際はA社は目薬の中でも一般用より医療用目薬のシェアが多い会社です。一方、B社は目薬などのアイケアより、スキンケア商品の売り上げが多く、再生医療や食の事業などの新規事業も展開されています。これらの情報は就活サイトやHPで簡単に調べることができます。そしてこうした最低限の情報を押さえた上で、ここから「A社は医療用のシェアが多いけど、海外でのシェアはどうか?競合はどこなのだろう?」「B社はいつ頃からスキンケアの事業が大きくなったんだろう?」など、情報から出てくる「問い」をいかに深めることができるかが重要です。これが化学メーカーであれば、HP上で「機能性材料部門に注力している」という情報を得た後、「機能性材料部門が伸びてるのはなぜだろう?」「具体的にどの化合物で、何に使われてるのだろう?」など、関心のある部分を深堀りして、自分なりの問いを立てることが第一歩です。
「御社は機能性材料部門に注力していると聞き、興味を持ちました」と言われても、面接官は「HPに書いてあることそのままだな。直前に見てきたのだろう」と思うことでしょう。「こんなに調べてきました!」で終わらない企業研究が必要です。
2, 自分なりの仮説を立てる
では、情報収集をして、具体的な「問い」が見つかったところで、どのように考えを深めていけば良いのでしょうか。先の化学メーカーを例に考えてみましょう。
まず「機能性材料事業はどれだけ伸びているのか」が気になったとします。上場企業であれば、IR情報や短信決算は公開されているため、「投資家の皆さんへ」のページを確認します。すると、「前年対比で2割の売り上げ増」が確認でき、さらに短信決算を読んでみると「スマートフォン向けのディスプレイ材料が好調」とあった場合、この段階で最初の問いから少し深化しました。そこで「では今後もスマートフォン向けの市場は伸びるのか?」という新たな問いにたどり着きます。そうしてどんどん問いを進めながら深めていくのです。
まずは自分なりにその分野の記事を読んでみるなどして、仮説をたてる癖をつけることをお勧めします。「知恵を絞る」訓練です。何でもネットを使えば調べることができる時代、ただ情報を知っていることに価値はありません。得られた情報に対して自分なりに「知恵を絞る」ことをしないで面接に臨むと、会話の中で知恵の浅さを呈します。最初に述べた面接官の「10分程度話すと(合否の)結論が出る」というのは、表層だけの情報収集をしている人のことを指しているように思います。事実をもとに知恵を絞らないと、自分の意見が言えません。
3. 一次情報に触れる
情報収集をして問いを立て、知恵を絞ることの重要性について書きましたが、そうしたプロセスの中で出来るだけ「一次情報に触れること」をお勧めします。昔、ある解剖医のドラマで「木が倒れたと聞いたら、自分でどんな木が倒れたのかを見に行く」という台詞があったのですが、現場に足を運び、「自分で見て聞いて感じることでしか得られない情報がある」ということだと理解しています。これは就職・転職活動にも通じることだと思います。インターネット上では、大手企業の就活サイトから企業の口コミや掲示板に至るまで、色んな思惑や意図を持った情報に溢れています。ネットによる情報収集は効率が良いですが、それだけが全てだと思うのは早計ではないでしょうか。
一次情報に触れる例として、メーカー等であれば「医薬品〇〇展」「化学品〇〇展」といった展示会は事前登録をすれば参加ができます。大企業はマーケティングや技術営業の社員、中小規模は社長や役員が来場されているケースもあるので、製品を見に行ったり、自身の勉強も兼ねて、社員の方に技術などを質問することは可能ではないかと思います。実際、面接の中でこんなやりとりがありました。
面接官:弊社についてどういうイメージを持っていますか?
候補者:この前の見本市で御社の○○という製品について技術営業部長の〇〇様に話も聞かせて頂きましたが、実際に想像していたより随分と製品が軽いと感じました。はじめの開発品が非常に重く、改良をされたと聞いています。その後、他社の類似製品と比較してみたところ、おっしゃるとおり、複雑な機能を搭載してしまい、重さや価格がニーズと合っていない製品が多いように思いました。御社はユーザーの声を反映して開発が行われているのだろうなという印象を持ちました。
HPや会社説明に載っている話を根拠に回答される候補者が多い中、こうして自ら出向き、担当者と話し、製品や会社の一次情報を持っている人は強いです。
企業の情報収集に、そこまで時間をかけられない、という人でも工夫次第で出来ることはあります。例えば、一般消費財であれば実際にお店に商品を見に行き、そこでどのような売られ方をしているのか、どこが競合品として並んでいるのか、どういう人が手に取っているのか、少し手間をかけるだけで調べることはできます。他にも工場見学会を定期的に行っていたり、学会に出店する会社も多いですし、OBを紹介してもらったり、少しの努力で出来ることがたくさんあります。
以上、就活・転職中の方も、将来的に考えている方も、1次面接を突破するのに求められる「基本装備」として参考にして頂ければ幸いです。
まとめ
1次面接を突破するかどうかは最初の10分で決まる
1.「情報収集」から「問い」をたてる ~企業研究+α~
- 自分なりの仮説を立てる
- 一次情報に触れる
[文]太田裕子 [編集]LHH転職エージェント(アデコ株会社)
*本記事はLHH転職エージェントによる寄稿記事です
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