[スポンサーリンク]

一般的な話題

Retraction watch リトラクション・ウオッチ

[スポンサーリンク]

前からちょいちょい見ていたんですが、皆様このようなサイトご存じでしょか? Retraction watch

Retraction watch

このサイト、2010年の8月に開設された、文字どうりアクセプトされたけど再現性が取れんかったり、捏造だっりでRetractioされた論文や論文に関するグレーな話についての解説サイトです。○保方事件をはじめ、最近ではCiRAの事件、SREPのEditorial Board辞職事件などをはじめ、サイエンスの黒―い側面について詳しく説明してくれています。

Retraction Watchの詳しいポリシーについてはこちら。このウエブサイトを立ち上げるきっかけなどが綴られています。

ここでおさらい。

Retractionとは、論文に致命的な欠陥がありアクセプトされた論文を撤回することをいいます。主に科学的見地からは捏造、改ざんなどの場合、倫理的な見地からは論文の盗用や二重投稿、研究不正、オーサーシップの不正などがこれにあたります。論文が撤回された場合は、その速やかに告知がされ、論文のwebpageなどにはRetractedの注意書きがなされます(よほどのことがない限りデータは削除されません)。これはやったら研究者としておしまいのお話。

ただ、人間誰しも意図せずにやってしまう間違いなんていうのもあります。まあ、初めからしっかりしたデータ出しとけや!って言うのが筋なんですが、それでも実験機器の不備や、計算や試薬を間違えていたりだとかはたまに起こります(詳しくはこちらなど)。そのために、AdditionsやCorrectionsがあります。

AdditionsやCorrectionsは、論文の要旨やデータに関わる重要な問題がある場合に、論文の訂正を行うことをいいます。重要でない事象はAddition Correctionの対象とはなりません。撤回や修正の条件の詳細についてはこちらこちら

個人的には。。。

サイエンスを愚弄する捏造はもってのほかですが、実験をしていると再現性が取れなかったりということはままあります(こちらこちらの過去記事)。もちろん実験者の技量にもよるものもあるのかもしれませんが、理想的には報告されている実験に関してはすべての人が均一に再現できるべきです。その意味ではOrganic SynthesesNature Protocolsなどは再現性を確保するため詳細に条件などを説明しており、研究室に配属になったばかりの学生でも実験がしやすく、理想的な記述がされているのではないかと思います。化学は生物学に比べて再現性が高いとは言われていますが、それでも試薬のロット、細かなテクニック、実験機器について必要に応じてSupporting informationにしっかりと情報を載せるなどの工夫が必要かと思う今日この頃です。

私個人の見解としては、ヒューマンエラーや機器の誤作動などは仕方がないと思っています。もちろん当人は反省もすべきですが、やってしまったものは仕方がありません。ただ、自分から速やかに名乗り出た場合に関しては、そのプロセスを評価してあげる必要もあるのかと思います。あまりにもきつく批判しすぎたり、締め付けすぎると、修正を報告しないといった腐っていく方向に向かいかねません。なので、程度にもよりますが、ある程度のAdditionsやCorrectionsについては、それにより人類の地がさらに正確に深まったと理解するべきかと思っています。

かく言う私も、先日旋光度を間違ってSIに記述していて、reviewから帰ってきた段階で気づいてonlineになる前に修正しました。自戒を込めて今回の記事を締めたいと思います。

関連動画

The Good, The Bad, and The Ugly: What Retractions Tell Us About Scientific Transparency

Don Moore: Scientific Misconduct and Researcher Degrees of Freedom

関連書籍

[amazonjs asin=”4121023730″ locale=”JP” title=”研究不正 – 科学者の捏造、改竄、盗用 (中公新書)”] [amazonjs asin=”4062575353″ locale=”JP” title=”背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか (ブルーバックス)”]

 

Gakushi

投稿者の記事一覧

東京の大学で修士を修了後、インターンを挟み、スイスで博士課程の学生として働いていました。現在オーストリアでポスドクをしています。博士号は取れたものの、ハンドルネームは変えられないようなので、今後もGakushiで通します。

関連記事

  1. シクロヘキサンの片面を全てフッ素化する
  2. 最近の有機化学注目論文1
  3. 【十全化学】核酸医薬のGMP製造への挑戦
  4. ウッドワード・ホフマン則を打ち破る『力学的活性化』
  5. 導電性ゲル Conducting Gels: 流れない流体に電気…
  6. 米国版・歯痛の応急薬
  7. 無限の可能性を合成コンセプトで絞り込むーリアノドールの全合成ー
  8. ポンコツ博士の海外奮闘録XXII ~博士,海外学会を視察する~

注目情報

ピックアップ記事

  1. 新型コロナウイルスの化学への影響
  2. 配糖体合成に用いる有機溶媒・試薬を大幅に削減できる技術開発に成功
  3. ヒノキチオール (hinokitiol)
  4. 第57回―「アニオン認識の超分子化学」Phil Gale教授
  5. ピクテ・ガムス イソキノリン合成 Pictet-Gams Isoquinoline Synthesis
  6. 医薬品の品質管理ーChemical Times特集より
  7. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎と応用
  8. 2021年、ムーアの法則が崩れる?
  9. ケムステの記事が3650記事に到達!
  10. プレプリントサーバについて話そう:Emilie Marcusの翻訳

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

ヤーン·テラー効果 Jahn–Teller effects

縮退した電子状態にある非線形の分子は通常不安定で、分子の対称性を落とすことで縮退を解いた構造が安定で…

鉄、助けてっ(Fe)!アルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化

鉄とキラルなエナミンの協働触媒を用いたアルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化が開発された。可視光照…

4種のエステルが密集したテルペノイド:ユーフォルビアロイドAの世界初の全合成

第637回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院薬学系研究科・天然物合成化学教室(井上将行教授主…

そこのB2N3、不対電子いらない?

ヘテロ原子のみから成る環(完全ヘテロ原子環)のπ非局在型ラジカル種の合成が達成された。ジボラトリアゾ…

経済産業省ってどんなところ? ~製造産業局・素材産業課・革新素材室における研究開発専門職について~

我が国の化学産業を維持・発展させていくためには、様々なルール作りや投資配分を行政レベルから考え、実施…

第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」を開催します!

こんにちは、Spectol21です! 年末ですが、来年2025年二発目のケムステVシンポ、その名…

ケムステV年末ライブ2024を開催します!

2024年も残り一週間を切りました! 年末といえば、そう、ケムステV年末ライブ2024!! …

世界初の金属反応剤の単離!高いE選択性を示すWeinrebアミド型Horner–Wadsworth–Emmons反応の開発

第636回のスポットライトリサーチは、東京理科大学 理学部第一部(椎名研究室)の村田貴嗣 助教と博士…

2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

CAS Future Leaders プログラムとは、アメリカ化学会 (the American C…

第50回Vシンポ「生物活性分子をデザインする潜在空間分子設計」を開催します!

第50回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!2020年コロナウイルスパンデミッ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP