関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」。年4回発行のこの無料雑誌の紹介をしています。
昨年最終号の記事を公開するのが遅かったため、期間が短くなっての公開となりますが、新年第1号は遺伝子工学、ゲノム編集とその最新技術について。
日進月歩で進展している同技術に関して3つの記事が掲載されています。
なお記事はそれぞれのタイトルをクリックしていただければ全文無料で閲覧可能です。PDFファイル)。1冊すべてご覧になる場合はこちら。
ゲノム編集の歴史と基礎
広島大学の山本 卓教授による寄稿記事。ゲノム編集の歴史とゲノム編集を使った遺伝子改変、産業利用や医学分野での応用について簡単に述べています。とくにはじめの歴史部分がわかりやすく、人工DNA切断酵素(ゲノム編集ツール)の変遷について解説しています。ZFNからTALENそして、CRISPR-Cas9へとゲノム編集ツールの進歩により数年前に不可能であったことが可能となりつつあります。
生命現象の光操作技術の創出
東京大学の佐藤 守俊教授による記事。同教授が開発した、Magnetシステムと称するスイッチタンパク質を中心に、ゲノムの光操作技術について開発しています。Magnetシステムはアカパンカビが有する光受容体に対して、多角的にプロテインエンジニアリングを施して、その性質を大幅に向上させてあり、新しい機能を付与するもの。タンパク質の活性を光で自由自在にコントロールすることにより、ゲノムの塩基配列を光刺激で書き換えたり、ゲノム遺伝子の発現を操作することが可能となったそうです。
ローリングサークル増幅によるRNA直接検出
最後のゲノム編集関連の記事は広島大学の岡村好子准教授らによ寄稿。キャリーオーバーコンタミネーションに対して耐性があり、室温程度で反応可能な核酸検出法の開発が求められるなか、筆者らはローリングサークル増幅(RCA)法によるRNAの直接検出方法の開発を行っています。Phil29DNAポリメラーゼを利用したRCA法は室温程度において利用可能で、かつ簡便なシステムであることから、新たな核酸配列検出方法として、現在注目されているそうです。本稿ではその手法を用いた、特定の微生物検出方法について概説しています。
次世代型核酸医薬の創製:マイクロRNAの化学修飾と創薬への展開
もう一つの記事は特集として、マクロRNAの化学修飾と創薬への展開を紹介しています。愛知工業大学の教授であり、株式会社e-NA BIotecの代表取締役である北出幸夫氏による寄稿です。RNA干渉を利用した核酸医薬は、疾患に関わるタンパク質を標的とする抗体医薬とは異なり、mRNAを標的とします。そのため、疾患遺伝子の配列がわかれば、容易に遺伝子制御分子を設計できる可能性があり、抗体医薬の次に来る新たな革新的技術として注目されています。それに関連して、同氏はRNAがDicerによって切断されたsiRNAや分化に関与するmicroRNA(miRNA)の3’末端ダングリングエンド部の化学修飾薬を発売しています。
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過去のケミカルタイムズ解説記事
- 感染制御ー薬剤耐性 (No.4)
- 天然物の全合成研究 (No.3)
- 有機分子触媒(No. 2)
- 分析技術(2008, No.1)
- イオン液体(2017年 No.4)
- 電子デバイス製造技術(2017年 No.3)
- 食品衛生関係 ーChemical Times特集より (2017年 No.2)
- 免疫/アレルギー(2017年No.1)
- 標準物質(2016年No.4)
- 再生医療(2016年No.3)
- クロスカップリング反応 (2016年No.2)
- 薬物耐性菌を学ぶ (2016年No.1)