[スポンサーリンク]

一般的な話題

黒板に描くと着色する「魔法の」チョークを自作してみました

[スポンサーリンク]

昔ながらの授業・講義といえばチョークと黒板を使ったもの。ホワイトボードや電子黒板の普及により需要が減っていると言われますが、まだまだ現役です。チョークの主原料は炭酸カルシウムや石膏。貝殻や卵殻のリサイクル品も流通していますが、いずれにしろチョークといえばまず真っ白な棒というイメージです。黄色い線を引くためには黄色く着色したチョーク、赤い線を引くためには赤いチョーク、他にも水色やオレンジなど色つきのものも使用した経験があることでしょう。

ここで唐突な質問ですが、真っ白なチョークを使ってカラフルな線を引けたら楽しいと思いませんか?というわけで、単分散シリカ粒子を用いてそのようなチョーク(っぽいもの)を自作してみました。

ここでのチョーク作りに利用する原料は

  • 単分散シリカ粒子(富士化学株式会社ハウトフォーム使用)
  • 少量のポリビニルアルコール(PVA・洗濯のりでも可)

です。理由は後半で説明しますがシリカ粒子径に応じて色が出ます。粉体を扱うためのマスク・保護メガネ・ゴム手袋を装着したら、手順は以下の通りです。

1. まず原料を練り合わせます。PVAはそのまま加えてもダマになるだけなので、あらかじめ熱湯に少しずつ加えて溶かしておきます。泥団子を作る要領で、シリカに対して少量ずつPVA水溶液を足して練っていけばうまく塊を作ることができます。水を足しすぎたらドロドロになるので逆にシリカを足して粘度を調整します。

2. 任意の形に成型します。私は面倒なので手で棒状にしました。キレイな形を作りたい場合は「チョーク作り」でググればいろいろ出てくるので参考にしてください。

3.乾燥します。常温でもドライヤーや乾燥器を使っても構いません。PVAを多めに足せば急速乾燥でも崩れにくくなるはずです。

完成したチョークで描いた線が上図。単分散シリカ粒子径によって青、緑、赤へ色が変わっていく様子がわかります。上の写真ではわかりにくいですが、実際はもっと鮮やかに色が出ます。黒板は通常、コントラストの都合で緑がかったものが多いため、レイメイ藤井から販売されている真っ黒なものを使いました(濡らして消せるメリットもあるため)。

[amazonjs asin=”B00KQ9VG26″ locale=”JP” title=” レイメイ藤井 ブラックボード アンティーク A4 LNB185 “]

さて、これらは何故色がつくのか?魔法でも何でもなく、単分散シリカ粒子の特性を利用しています。一般的に粒子は光を散乱します。その背景を黒くしておくと余計な散乱光が吸収されるため、大きさが揃った粒子を利用すれば特定の色(粒径の倍くらいの波長?)が出るという仕組みです。トップの写真も単分散シリカ粒子を指でのばしただけのもので、色素は一切加えていません。

名古屋大学大学院 工学研究科 竹岡グループのコロイドアモルファスの研究内容を参考にしており、以下はその論文(Adv. Mater. 2017, 29, 1605050)の解説動画です。

グループの研究成果は去年のスポットライトリサーチでも紹介されています。

なお私自身は竹岡グループと面識があるわけでも、現状似たような研究発表をしているわけでもありません。研究用に購入した単分散シリカ粒子が余っているため、作業待ち時間に遊んで記事を書きました。1時間もあれば簡単にいろいろ確かめることができるので学生実験等の題材としておもしろいのではないかと考えています。

Avatar photo

GEN

投稿者の記事一覧

大学JK->国研研究者。材料作ったり卓上CNCミリングマシンで器具作ったり装置カスタマイズしたり共働ロボットで遊んだりしています。ピース写真付インタビューが化学の高校教科書に掲載されました。

関連記事

  1. 化学系必見!お土産・グッズ・アイテム特集
  2. スタニルリチウム調製の新手法
  3. whileの使い方
  4. ワイリー・サイエンスカフェ開設記念クイズ・キャンペーン
  5. 核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」
  6. セブンシスターズについて① ~世を統べる資源会社~
  7. 反芳香族性を示すπ拡張アザコロネン類の合成に成功
  8. 金と炭素がつくりだす新たな動的共有結合性を利用した新たな炭素ナノ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 危険ドラッグ:創薬化学の視点から
  2. ウェルナー・ナウ Werner M. Nau
  3. 2010年ノーベル化学賞ーお祭り編
  4. 特許取得のための手続き
  5. 日本学術振興会賞受賞者一覧
  6. 独バイエル、世界全体で6100人を削減へ
  7. 第三回ケムステVプレミアレクチャー「夢のある天然物創薬」を開催します!
  8. 英グラクソスミスクライン、抗ウイルス薬を大幅値引きへ
  9. とある化学者の海外研究生活:アメリカ就職編
  10. 電池材料粒子内部の高精細な可視化に成功~測定とデータ科学の連携~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年1月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー