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研究者のためのCG作成術③(設定編)

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Naphtです。研究者のためのCG作成術に続き、研究者向けのCGの作り方について紹介しようと思います。全て無料でできます。気が付いたら前回から3か月も経っていました。遅くなり申し訳ありません。質問等は随時受け付けますので、コメント欄に記入するか、ご連絡下さい。

前回は結晶構造解析ソフトであるVESTAを用いて.wrlファイル(3D情報を記述したファイル)の作成を行いました。今回は、Blenderの基本的な使い方を説明しようと思います。推奨OSはWindowsです。(Blenderのインストール等は前回等の記事参照)

-略語について-

Blenderは多機能なソフトです。ショートカットキーも多岐にわたるため、簡略化のために「」囲った部分がショートカットキーであると解釈してください。また、▼や⇔はタブという言い方をします。

 

今回はBlenderを使用するための細かい設定を説明します。Blenderの「壁」の一つとして、どのような設定にすればCGとして出力できるかわかりにくいことがあります。

操作する事項屋覚えることも多いですが、一度設定すれば終わりなので、諦めずについてきてください。なお、今回は作ったwrlファイルを読み込むことまでを目標とします。文章で操作を説明することが非常に難しく、手順の羅列となっている項もありますが、とりあえず書いてある通りに設定し、何が変わったかを目で理解していただくことが近道だと思います。

 

-流れ-

本記事では以下のような流れで解説を行います。

①画面の見方

②初期設定

③レンダーの設定

④カメラの設定

⑤背景の設定

⑥wrlファイルの読み込み

 

-CGを作る場合の全体的な流れ-

①初期設定を行う。

②メインのオブジェクトをモデリングする。(面を張ったり、切ったり、付けたり)

③マテリアル(表面の色等のこと)を設定して色を付ける。ガラスとか、液体のようなエフェクトを付ける。

④背景を書き込む

⑤光源・背景、配置等を考える

⑥レンダリングを行う

となっております。今回は①のみです。

 

-Blenderの簡単な使い方-

Blenderは3DCGを描くためのプログラムです。インストール後、Blender.exeをクリックすると、ソフトが立ち上がります。

-画面の解説-

今回の記事では、Tools,mode設定、Render設定に絞り込んでボタンの解説をします。全て解説すると大変なので、よく使うもののみです。

①Translate

Short cut :G G+X,Y,Z+数字で指定した軸に対して数字分だけ移動する

Object modeでは、オブジェクトの移動

Edit modeでは面・辺・点の移動

②Rotate

Short cut :R R+X,Y,Z+数字で指定した軸に対して数字分だけ角度を変える

③Scale

Short cut :S R+X,Y,Z+数字で指定した軸に対して数字分だけ大きさを変える

④Duplicate

Short cut: Shift + d 指定したオブジェクトを複製する。

⑤Delete

Short cut: delete 指定したオブジェクトを削除する。

⑥Smooth

指定したオブジェクトをの面を滑らかにする。

⑦Mode設定

Object mode(オブジェクトの配置などを編集するモード オブジェクトの面、辺、点を編集するものではなく、異なるオブジェクト同士を編集する)

Edhit mode(Short cut:Tab オブジェクトの面、辺、点を編集するもの)

⑧Viewport Sharding

オブジェクトの状態を変えるタブ。後述します。

⑨Layer

Short cut:指定したオブジェクト+mを押し、レイヤーを選択した場所に移動する。あるレイヤーのみを編集したい時に、他のレイヤーに保存したオブジェクトを変化させることなく編集できる。

⑩Render設定

後述します。

 

オブジェクトの選択は右クリックでできます。

①-⑩を操作し、どのような機能なのか理解した後に以下のように設定をしてください。

 

– Blender User Preferences設定-

まず、「Ctrl+Alt+U」を押し、Blender User Preferencesを開きます。(Ctrl Alt Uを同時押し)そうすると、下図のような画面になります。

これは、Blenderの設定画面であり、Add-onと呼ばれる便利なショートカットを設定できます。Add-onsを左クリックし、虫眼鏡の部分にMaterial Utilsと打ち、チェックボックスにチェックを入れてください。これでMaterial UtilsというAdd-onが有効になりました。(下図のようになります)

Material Utilsは「Shift+Q」で選択したオブジェクトの色を一括変換してくれる優れものAdd-onです。後ほど説明します。

Blender User Preferencesを×ボタンを押して閉じ、他の設定を行います。

-Render・カメラ設定-

CGソフトにおいて、Renderingとは完成図を出力するという意味です。Renderと呼ばれるRenderingエンジン(プログラム)を設定しないと、光沢などがうまく設定されていない画像になってしまいます。以下に私がよく使用する設定と特徴を記述します。

①Blender RenderをCycles Renderにする。(下図の赤枠部分を左クリックし、Cycles Renderを左クリック)

Blender Renderでは光源をLightによって設定しますが、リアルさがあまりないため推奨しません。またMaterial設定もあまりいじれず、Nodeも使えないのでCycles Renderの方が良いです。何も考えずにCycles Renderがいいと思います。

(詳しくは、Blenderのマニュアルサイト参照https://docs.blender.org/manual/en/latest/render/cycles/index.html

②Viewport ShardingをMaterialにする。(下図参照)

Viewport Shardingはオブジェクト(今回は立方体)の状態を設定するタブです。

Wire frameではワイヤー状になり、Textureでは貼ったテクスチャが表示されます。MaterialではMaterialの設定画面で設定した色・光沢を反映して表示します。RenderedはリアルタイムでRenderingするモードです。よく使用するのはMaterial とRenderedです。

③カメラを設定する。

下図と同じになるようにパラメーターをいじって下さい。よく使うところだけ説明します。

Dimensionsタブ:

Resolution:画像のサイズ(px ×px)を決める。画像の解像度は0-100%で設定でき、100%に近いほど綺麗な代わりにRenderingに時間がかかります。

Samplingタブ:

Square Samples:影や光源がある場合、計算量を二乗することでキレイに出力する。CPU負荷は高いので、GPUがあると好ましい。

Samples: Render:Rendering時の積算回数

Preview:Viewport Sharding でRenderedを選んだ時の積算回数

④背景・光源を作る。

Blenderでモデリングする場合、光源と背景は必須です。今回は、表示されている立方体を背景・光源にしましょう。

i)立方体を右クリックする。

ii)「S+5+0」を押す(環境によってはテンキーでないと反応しないことがあります)そうすると以下の図のようになるはずです。「S」はSizeを調整するショートカットキーで、50と打ったのは元のオブジェクトの50倍にする、という意味です。(余談ですが、「S+X+5+0」と押すとX方向にだけ50倍されます)

iii)Materialタブをクリックする。(下図赤枠部分 丸いやつ)

iv)SurfaceタブのUse Nodesをクリックし、 Diffuse BSDFをEmissionにする。

(これは、立方体の表面をDiffuse BSDFというモードからEmissionというモードに変えたことを意味します。Diffuse BSDFは拡散反射シェーダ、Emissionは光沢の設定です。詳しくはこちら

以上で、光源と背景の設定は終わりです。

 

⑤wrlファイルの読み込み

File→Import→X3D Extensible 3D(.x3d/.wrl)をクリックし、前回の記事で作成した.wrlファイルを読み込む。読み込むと以下のような図となります。

今回の記事はここまでとします。次回からは、Blenderのオブジェクト操作やNodesの設定について解説します。

今回は特に戸惑う操作が多いと思います。

質問等は随時受け付けますので、コメント欄に記入するか、ご連絡下さい。

【関連記事・リンク(該当するものがあれば)】

  1. Momma and F. Izumi, “VESTA 3 for three-dimensional visualization of crystal, volumetric and morphology data,” J. Appl. Crystallogr., 44, 1272-1276 (2011).
  2. Downs, R.T. and Hall-Wallace, M. (2003) The American Mineralogist Crystal Structure Database. American Mineralogist 88, 247-250.

 

Napht

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企業で働く研究者。サイエンティフィックイラストレーションに興味あり。CG・TOC・Journal Coverを見るのが最近の日課

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