[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

変わったガラス器具達

[スポンサーリンク]

皆様、普段どんなガラス器具を使っていますか?ナスフラスコ、三角フラスコはもちろん、カラム管やジムロートなど研究室には様々なガラス器具がありますよね。中には、俺、D3だけどこれってどう使うの?今まで使われてるところ研究室に6年もいるのに見たことないんだけど。。。。といった代物が転がっている歴史のある研究室もあるのではないでしょうか?

今回はそんなほとんどみんなが使わないようなレアなガラス器具や、こんなガラス器具があればとても便利っていうようなものをお伝えしたいと思います。もう知ってる、使ってるというものもたくさんあると思いますが、写真を眺める程度はお付き合いしていただけると幸いです。

長尺フラスコ

長さ100mmの単純フラスコ。長さが長い分、溶媒量が多くなった際も突沸に注意が必要なものの、濃縮、次の少量スケールの反応にそのまま使うことができます。反応のワークアップでも丈が長い分、反応溶液をそのまま水溶液で希釈後、ガラス栓をして振り、上澄みをとってしまえば分液ができるので洗い物が減ります。また、低温反応のバスにしっかり沈めることができ結露でフラスコの口に水が付くということも防げますし、粘性の高い溶媒もしくは不均一系の反応においてもフラスコの底まで磁場が届きやすいのでより確実に撹拌が可能です。筆者も10個程度持ってます。

長尺二口フラスコ

シュレンクフラスコの変性版。横口の取り付け角度をきつくすればエバポレーターでの溶媒の濃縮も可能。研究室によっては横についている口が小さいタイプのすりになっているのを使っておられる方もおられるかと思います。写真のものは細口の共通すりで長さは10cm程度。

長尺フラスコ(左)と長尺二口フラスコ(右)

2口分岐器

二口フラスコで反応を急遽仕込みたいといった時に重宝します。上から温度計や三方コックを差したり、いろいろできます。便利です。

少量スケール用還流管

少量スケールでの還流ができます。上にあげたフラスコと組み合わせて使うと効率的です。もっとも、溶媒量が1.0 mL以下の少量スケールでは溶媒が飛んでしまう可能性もあるので、圧が気にならなければmicroweave用のバイアルを使うことをお勧めしますが。

2口分岐器(左)と少量スケール用還流菅(右)

コック付き分岐器

コックがついており、そのまま通常のフラスコに取り付け、てっぺんにセプタムを付けるだけで、フラスコがシュレンクフラスコに早変わりします。

 

コック付きコネクター

 

 

シュレンクフラスコ

禁水、禁酸素の反応に使います。写真のものは小さなフラスコのようなストッパーを上に被せると化合物を保存できます。反応を仕込むときなどはコックの側からN2またはArを一定量流しながら試薬を投入することで反応容器内の禁水、禁酸素を保ちます。共通すりが逆のものもよくありまが、個人的には写真に示したモノの方が直接禁水濾過する時などに便利かと思います。

シュレンクフラスコ

ヒックマン蒸留装置

窒素置換後下のフラスコに蒸留したい化合物をシリンジを通して入れ、ヒートガンであぶって蒸留するのに使います。空冷により上部に溜まった化合物をシリンジで取り出して使います。簡易蒸留にはかなり便利だが、水冷と異なり空冷には限界があるのであまりにも飛びやすい化合物には適さない、もしくはゆっくりと時間をかけて行うとうまくいく。

ヒックマン蒸留装置

ジアザードキット

アルドリッチが市販しているジアゾメタン用の生成、精製装置”Diazard kits“。ジアゾメタンは爆発性があるため透明スリのついたガラス器具を使う必要があります。(筆者は大量スケールで透明でないものを使ってましたが、そういう危険な真似はやめましょう。)

ジアザードキット (リソース:Wikipedia EN)

吸引ろ過用受け口

吸引ろ過をする際に使います。漏斗は桐山、綿を詰めた三角漏斗、ブフナー(襟足が短いものは注意。)などと組み合わせて使えます。漏斗の受け口はスリがついているもの、付いていないものがありますが、付いていないものはゴム製のフラスコ置きと組み合わせて使うとうまくいきます。

パスツールカラム と 駒込カラム

使い捨てのガラス器具。全合成の研究室ではよく使われていると思います。少量スケールの精製には持って来いです。シリカゲルも通常の関東の60などより粒径が細かく揃っているものが(少々高価なものの)市販されているので、私はそちらを使ってます。一番下に詰める綿の詰めすぎには注意。

駒込カラムはパスツールよりある程度量があるときに使います。日本ではあらゆる大きさの駒込が手に入るので綿、海砂、シリカゲルの順に詰めカラムが可能です。海外ではメスピペットを代わりに使っています。

パスツールカラム

Dewer冷却器

この凹凸の中をドライアイスアセトンバスにして気化したアンモニアなどの低沸点化合物を再冷却します。バーチ還元とかで使いますよね。

Dewer冷却器

ジオキシラン合成装置

結構大がかりです。もっとも、エバポレーターのトラップを使って簡便にDMDOを合成、精製する方法[1]もあるし、in situ生成、反応の系[2]もあるので、僕はそちらの方を使っています。(というかこれを使う羽目になった事はまだ無いのでラッキーです。)

バブラー

ガスの生成もしくはN2ラインからしっかり窒素が供給されているか確認するために使う。中には粘度の高いオイルを入れ外気からラインを遮断する。

 

蒸留溶媒受け

蒸留塔を組んだことのある人ならだれでも使ってると思われるこの器具。大量の溶媒を蒸留をするのに便利ですね。

 

少量用蒸留装置

少量用蒸留装置

中にはこのようなミクロ蒸留装置なども。

ミクロ蒸留装置 (リソース:菅研究室HPより)

まとめ

今回は変わったガラス器具とその用途について今回はまとめてみました。研究室によってはさらに便利で工夫を凝らした特殊なガラス器具を使っておられる方もおられると思います。最近では合理化の名のもとに大学にガラス細工部屋を持たなくなったこともあり、こういったガラス器具が手軽に手に入りにくくなってはいるようですが、ぜひこの機会に使い勝手のいいガラス器具を手に入れ、より効率よく実験に取り組んでみるのはいかがでしょうか?

もし、これは使い勝手がいいというものがありましたらコメントを書き込むかツイッターで呟いてください。

参考文献

  1. Taber D. F.; DeMatteo P. W.; Hassan. R. A. Org. Synth. 2013, 90, 350-357. DOI: 10.15227/orgsyn.090.0350.
  2. (a) Hashimoto, N.; Kanda, A. Org. Process Res. Dev. 2002, 6, 405–406. DOI: 10.1021/op025511f. (b) Frohn, M.; Wang, Z.; Shi, Y. J. Org. Chem. 1998, 63, 6425–6426. DOI: 10.1021/jo980604+

関連リンク

Gakushi

投稿者の記事一覧

東京の大学で修士を修了後、インターンを挟み、スイスで博士課程の学生として働いていました。現在オーストリアでポスドクをしています。博士号は取れたものの、ハンドルネームは変えられないようなので、今後もGakushiで通します。

関連記事

  1. The Journal of Unpublished Chemi…
  2. フラクタルな物質、見つかる
  3. アメリカの大学院で受ける授業
  4. クロスメタセシスによる三置換アリルアルコール類の合成
  5. 高温焼成&乾燥プロセスの課題を解決! マイクロ波がもたらす脱炭素…
  6. 常温・常圧で二酸化炭素から多孔性材料をつくる
  7. 超大画面ディスプレイ(シプラ)実現へ
  8. ナノチューブを引き裂け! ~物理的な意味で~

注目情報

ピックアップ記事

  1. 黎书华 Shuhua Li
  2. マンダムと京都大学、ヘアスタイルを自然な仕上がりのままキープする整髪技術を開発
  3. 2012年イグノーベル賞発表!
  4. 総合化学大手5社、4-12月期の経常益大幅増
  5. 槌田龍太郎 Ryutaro Tsuchida
  6. 名古屋メダル―受賞者一覧
  7. フロリゲンが花咲かせる新局面
  8. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」④
  9. 連続アズレン含有グラフェンナノリボンの精密合成
  10. ニホニウム: 超重元素・超重核の物理 (基本法則から読み解く物理学最前線 24)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年9月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー