[スポンサーリンク]

一般的な話題

昇華の反対は?

[スポンサーリンク]

ご無沙汰しております。最近環境の激変への対応に追われておりまして、なかなか執筆時間が取れずにおりました。そこら辺もいつか記事にしたいと思います。

さて、今回はリハビリを兼ねて短いポストです。
例えば水が氷になる変化の事を何と呼びますか?凝固ですね。その反対は融解です。
では、水が水蒸気になる変化は?蒸発!反対は凝縮
という感じで、物質の三体を行き来する現象にはその変化に応じた用語があります。この変化は日常生活でも体験できるので、馴染み深いものでしょう。

その他にも例えばヨウ素のように、固体を加熱したら直接気体になる変化が起こる物質があります。この変化は昇華と呼ばれますね。
ではその逆、即ち気体が直接固体に変化する現象を何と呼ぶでしょうか?私の記憶が確かならば、この現象は昇華と習った気がします。オッサンなので。子供心に、何で逆の変化が同じ用語なんだろうかと不思議に思った気がします。

英語はどうでしょうか(なんてオヤジギャグではないです)。固体から気体に対応する英語は、sublimation、気体から固体はdepositionとしっかり分かれています。

画像はWikipediaより 圧力、温度が赤線をまたぐ変化が固体と気体の相互変化に該当

ということで、やっぱり気体から液体を経ずに固体に変化する現象にはきちんとした用語が必要ではないかという議論が昔からあり[1]、2015年に日本化学会からの提言として、「凝華」という用語が提案されています(リンク)。
これは実は古くから言われていた言葉なのですが、はっきりと学術用語として定着していたわけではありませんでした。実は私の記憶が曖昧であり、固体→気体→固体として固体を精製する方法のことを昇華精製と呼んでおり、depositionを昇華としていたわけではないんですね。

さて、高校の化学基礎の教科書に着目すると、5社10冊の教科書のうち、この凝華は9冊が部分的に対応しており、1冊は対応していないという調査が先日報告されました(リンク)。まだまだ定着とまではいかないようですが、今後の改定で徐々に受け入れられるのではないでしょうか。普段の生活で馴染みがない現象ですので、あまり興味を持たれないのかもしれませんが、ずっと引っかかっていたものがすっきり解決となってくれるといいですね。ちなみに私が使っている日本語入力環境では「ぎょうか」と入力しても変換はしてくれません。

こうしてみると、気体から液体が凝縮、液体から固体が凝固、気体から固体が凝華といずれもという字で始まることから、初学者には覚えやすいのではないかと思います。

その他にも日本化学会からの提言がありますので、これから入試問題を作ったり、若い人たちへの教育の現場などではキチンと対応しておきたいものです。ぜひリンク先を読んで下さい。
特に希ガスを貴ガスに改めるのは気をつけていきたい気がするのです(決してオヤジギャグではありません)。

2018.4.13 追記

冒頭の画像において液体ー固体間の矢印が逆だったものを修正しました。ご指摘いただいた方々ありがとうございました。

参考文献

  1. 「昇華」の逆は「凝華」Hosoya, H. 化学と教育 61, 366 (2013). DOI: 10.20665/kakyoshi.61.7_366

関連書籍

[amazonjs asin=”4524408215″ locale=”JP” title=”学術用語集 化学編”] [amazonjs asin=”4053043700″ locale=”JP” title=”【改訂版】宇宙一わかりやすい高校化学(理論化学)”]
Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. 有機合成化学協会誌2018年8月号:触媒的不斉全合成・分子ロータ…
  2. ゲノム編集CRISPRに新たな進歩!トランスポゾンを用いた遺伝子…
  3. 6年越しで叶えた“海外と繋がる仕事がしたい”という夢
  4. ReadCubeを使い倒す(3)~SmartCiteでラクラク引…
  5. “CN7-“アニオン
  6. 植物生合成の謎を解明!?Heteroyohimbine の立体制…
  7. 超分子ポリマーを精密につくる
  8. 有機合成化学協会誌2022年5月号:特集号 金属錯体が拓く有機合…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 未解明のテルペン類の生合成経路を理論的に明らかに
  2. 【8/31まで!!】マテリアルズ・インフォマティクスの基礎から実践技術まで学ぶワンストップセミナー|期間限定アーカイブ配信
  3. パーコウ反応 Perkow Reaction
  4. 化学系必見!お土産・グッズ・アイテム特集
  5. ワムシが出す物質でスタンする住血吸虫のはなし
  6. ホフマン・レフラー・フレイターク反応 Hofmann-Loffler-Freytag Reaction
  7. マテリアルズ・インフォマティクスの推進成功事例 -なぜあの企業は最短でMI推進を成功させたのか?-
  8. 工業製品コストはどのように決まる?
  9. 石油化学プラントの設備内部でドローンを飛行する実証事業を実施
  10. クロロ[(1,3-ジメシチルイミダゾール-2-イリデン)(N,N-ジメチルベンジルアミン)パラジウム(II)]:Chloro[(1,3-dimesitylimidazol-2-ylidene)(N,N-dimethylbenzylamine)palladium(II)]

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年4月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

第57回若手ペプチド夏の勉強会

日時2025年8月3日(日)~8月5日(火) 合宿型勉強会会場三…

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー