日本発化学ジャーナルはインパクトファクター(IF)が低いといわています(日本発化学ジャーナルの行く末は? )。IFの是非は賛否両論ありますが、個人的には高いことにこしたことはないと思います。
実は、日本から発信されている化学系ジャーナルでIFが10を超える雑誌があるのです。
それが「NPG Asia Materials」です。
このたび、本雑誌が10周年を迎えるにあたり、ハイライト研究収録のコレクションサイトが公開されましたので、本紙の内容とともに紹介したいと思います。
NPG Asia Materialsとは
NPG Asia Materialsはアジア‐オセアニア地区のサイエンスの世界への発信を目指す、東京工業大学グローバルCOEプログラムの重要な事業の一つとして、Nature Research (旧Nature Publishing Group: NPG)と協力し2008年3月に創刊されました。今年で10周年を迎えます。
APAC地域からのインパクトの高い論文の紹介記事をウェブ上で掲載するという形でスタートし、2009年10月に総説、2012年1月からは原著論文も出版する完全オープンアクセス・ジャーナルになりました。
最新の2年インパクトファクターが9.157、5年インパクトファクターは10.089と、高い影響力を保ち、全世界からの良質の論文の掲載を行う世界的にも認知度の高いジャーナルに成長しているようです。
ジャーナルの対象研究分野は以下のとおり。
- 有機材料、炭素系材料、ソフト材料
- バイオ材料、生体模倣材料、バイオセンサー
- 無機、セラミック、複合材料、多孔質材料
- 金属材料、合金
- 光学材料、フォトニック材料、光電子材料
- 電子材料、磁性材料、超伝導材料
- エネルギー変換材料、触媒、分離材料
- ナノスケール材料:特性、プロセス、機能
- 材料理論、計算とモデル化
(出典:NPG Asia Materials)
化学系ジャーナルと上述しましたが、正確にいうと、化学系ジャーナルというよりも名前の通り「材料」なので、材料研究の全領域にわたる科学者、研究者を対象としており、物理、化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー分野の論文を出版しています。
10周年記念特別サイト公開中!
2018年3月、10周年を記念し、2009年以降毎年1本のハイライト研究(総説含む)をまとめたコレクションを公開しています。
上記の中に含まれているものもありますが、過去10年間で最も引用数の高い論文トップ3は次の通り。
1位 High-performance nanostructured thermoelectric materials
Li, J.-F.; Liu, W.-S.; Zhao, L.-D.; Zhou, M. NPG Asia. Mater. 2010, 2, 152–158. DOI: 10.1038/asiamat.2010.138
[Citation 353]
2位:Material characteristics and applications of transparent amorphous oxide semiconductors
Kamiya, T.; Hosono, H. NPG Asia. Mater. 2010, 2 (1), 15–22. DOI: 10.1038/asiamat.2010.5
[Citation 323]
3位:Forming nanomaterials as layered functional structures toward materials nanoarchitectonics
Ariga, K.; Ji, Q.; Hill, J. P.; Bando, Y.; Aono, M. NPG Asia. Mater. 2012, 4 , e17–e17. DOI:10.1038/am.2012.30
[Citation 273]
3報とも総説ですが、高い引用数があります。1位は清華大学のJing-Feng Li教授による、高性能ナノ構造熱電材料に関する総説。2位は東工大の細野 秀雄教授による、透明アモルファス酸化物半導体の材料特性と応用、3位はNIMSの有賀 克彦ディレクターによる材料ナノアーキテクトニクスに向けた層状機能構造としてのナノ材料の形成に関する論文です。最後の論文に関してはオープンアクセスでいつでも閲覧可能です。
最近の論文例は以下のとおり。
- Egg white-based strong hydrogel via ordered protein condensation
Nojima, T.; Iyoda, T. NPG Asia. Mater, 2018, 10, e460. DOI; 10.1038/am.2017.219
- Selective fabrication of free-standing ABA and ABC trilayer graphene with/without Dirac-cone energy bands
Sugawara, K.; Yamamura, N.; Matsuda, K.; Norimatsu, W.; Kusunoki, M.; Sato, T.; Takahashi, T. NPG Asia. Mater. 2018, 10, e466. DOI: 10.1038/am.2017.238
関連:日本化学会年会のランチョンセミナーにもご参加ください
関連話題として、今年の日本化学会年会では化学関連Nature姉妹誌も含む数々の編集に携わた名物サイエンス・ディレクターであるエド・ガースナー氏の講演があるようです。先着150名様限定らしいので、ぜひご参加ください。
Springer Natureランチョンセミナー
日本化学会第98春季年会(2018)
研究の重要性を高めるために
講演者 Ed Gerstner (エド・ガースナー) Springer Nature 中華圏担当サイエンス・ディレクター
日時 3月23日(金)12:15~13:15(入場開始:12:00)
会場 S8 会場(14号館 3F 1432教室)
先着150名/参加費無料(言語:英語)
お申し込みはシュプリンガー・ネイチャーのブースまたは当日朝9時より総合受付付近にて整理券を受け取ってください。
問い合わせ先:シュプリンガー・ネイチャー 新谷洋子 jpmarket@springernature.comイントロダクション:
世界に発信したい素晴らしい科学的発見をしたと確信したとき、どのジャーナルを選ぶべきでしょうか。いかにしてその発見に相応しいインパクトが得られるでしょうか。
本セミナーでは、長年Nature関連誌の編集業務に携わってきたサイエンス・ディレクター Ed Gerstnerより、どのようにしたらあなたの研究論文が明確かつ再現性があり、さらに発見されやすい重要なものとなるか、役に立つヒントをお届けします。
本年創刊のNature Catalysis、Communications Chemistry、また創刊10周年を迎えるNPG Asia Materialsなどハイ・インパクトジャーナルやそれらの位置づけもご紹介いたします。自身の研究を最大限アピールしたい方にとって必聴のセミナーです。ぜひこの機会をお見逃しなく、奮ってご参加ください。