[スポンサーリンク]

一般的な話題

有機合成化学協会誌2018年2月号:全アリール置換芳香族化合物・ペルフルオロアルキル化・ビアリール型人工アミノ酸・キラルグアニジン触媒・[1,2]-ホスファ-ブルック転位

[スポンサーリンク]

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2018年2月号が先日オンライン公開されました。

今月号のキーワードは、

「全アリール置換芳香族化合物・ペルフルオロアルキル化・ビアリール型人工アミノ酸・キラルグアニジン触媒・[1,2]-ホスファ-ブルック転位」

です。今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

J-STAGEに続き、有機合成化学協会のHPも新しくなりましたね。美しく見やすくなりました。後日HPの変更を担当された副代表から経緯や紹介記事がありますのでお楽しみに。

〇論の時期でみなさんお忙しいかと思いますが、今月号の有機合成化学協会誌もぜひご一読ください(最後にJ-STAGEの登録に関するお願いがあります)!

カップリング法による全アリール置換(ヘテロ)芳香族化合物の合成


早稲田大学理工学術院先進理工学部 浅子貴士さん・武藤 慶先生・山口潤一郎先生

全アリール置換芳香族化合物は機能性材料、生理活性物質として期待できる化合物群であるにもかかわらず、その立体的制約のため合成法が確立されていないのが現状です。本総説では現代有機合成で欠かすことができない手法であるクロスカップリング反応と近年発展著しいC-Hアリール化を用いた合成法について主骨格ごとに分類しまとめられており、これまでの流れを俯瞰できます。また、合成手段がなかったが故に、その機能が調べられていないものも多く、読者が本総説を読むことで新たな展開が生まれるかも?!

ペルフルオロアルキル化縮合多環芳香族化合物の位置選択的合成

京都工芸繊維大学分子化学系 山田重之先生

東京農工大学大学院工学研究院 山崎 孝先生

本論文は、著者らの行ってきた縮合多環芳香族化合物への位置選択的ペルフルオロアルキル基の導入反応の開発及び、合成した化合物の物性評価に関する論文です。ペルフルオロアルキル鎖をペンタセンに導入することにより、半導体n型特性を獲得しており、今後の分子デザインのヒントのなる結果です。

ビアリール型人工アミノ酸の創製を起点とする分子認識型触媒の開発

京都大学化学研究所 古田 巧先生

アニリン型およびDMAP型のビアリル-アミノ酸不斉触媒を用いた分子認識型触媒の開発と展開について、理論的な解析もあわせた反応設計とその展開に関する論文です。分子内不斉交差アルドール反応の開発、あるいはアシル化反応における「カルボキシラート効果」の解明を指向した触媒設計により、反応自体のさらなる理解が深まります。

キラルグアニジン触媒を活用する5H-オキサゾール-4-オンの求核付加反応:α-四置換ヒドロキシ酸誘導体の触媒的不斉合成法の開発

兵庫県立大学大学院物質理学研究科 御前智則先生・杉村高志先生

ジアリールプロリノール様のキラルなグアニジン触媒の開発、およびそれを用いたα—四置換ヒドロキシ酸誘導体の不斉合成に関する総説です。目的構造の前駆体として、これまでほとんど利用例のなかった5H-オキサゾール-4-オンを用いていることも本総説の特徴です。グアニジン触媒から生じる剛直なグアジニウムと隣接するヒドロキシ基の水素結合による配座制御により高い選択性が達成されています。

ブレンステッド塩基触媒による[1,2]-ホスファ-ブルック転位を利用した新たな分子変換反応

東北大学大学院理学研究科附属巨大分子解析研究センター 近藤 梓先生

東北大学大学院理学研究科 寺田眞浩先生

新たな分子変換システムの創出は有機合成化学の醍醐味の一つです。本論文では、ホスファ‐ブルック転位による炭素アニオン生成を鍵とする新たな分子変換反応について述べられています。ブレンステッド塩基触媒の特性を活かした反応設計の面白さ・深みに触れることができる論文となっていますので、是非ご覧ください。

Rebut de Debut: ドナー−アクセプター型ベンゾ[b]ホスホールオキシドの合成と光学特性

今月号のRebut de Debutの著者は、愛媛大学大学院理工学研究科(御崎研究室)吉村 彩 助教です。

吉村 彩 助教

電子受容性を有するベンゾ[b]ホスホールオキシドを基本骨格とするドナー-アプセプター型共役系分子は、その特異な光学特性から化学者を引きつけ、近年盛んに合成や物性評価が行われています。本総説ではベンゾ[b]ホスホールオキシドを基本骨格とするドナー-アプセプター型共役系分子について、最近の合成報告例が紹介されています。

巻頭言:AIに直面する有機合成化学

今月号は京都大学大学院工学研究科の松原 誠二郎教授による巻頭言です。

AI技術に直面する将来の有機合成化学。松原教授ご自身の学生時代に感じられたことを含め、AIといかに向き合っていくかを論じておられます。オープンアクセスとなっておりますのでぜひお読みください。

ところでJ-SAGE登録してます?(代表より)

ケムステで有機合成化学協会誌を紹介しはじめてしばらく経ちました。協会誌の編集委員長であった林雄二郎先生に「協会誌の見える化」促進のためにと、提案を受けはじめたものですが、かなりの反響を受け、ダウンロード数も上がっています。特に、Review de Debutは無料で閲覧できるだけでなく、超若手の化学者が単名でまとめたミニ総説なので、掲載されることとここで紹介されること両方の利点も相まって非常に人気がでています。

しかし!何度も言いますが、他の総説・総合論文も、会員ならばWebで全部読むことができるんです。現在のものだけではなく、過去のものも全部検索して読むことが可能です。

ただし、そのためにはJ-STAGEに登録しなければなりません。実は5000人以上会員がいる有機合成化学協会ですが、登録しているのはなんと1/5の1000人だそうです。

その登録フォームどこにあるの?」という疑問、色んな人から受けています。はい、利用フォームはこちらです→ J-STAGE「有機合成化学協会誌」利用登録フォーム

過去のHPですとどこにあるかもわからず、断念しかねた人が多いと思いますが(僕もそうでした)、現在はすぐみつかりました。折角の会員特典なのでぜひ登録してみてください。

なおここで注意事項です。登録には会員番号が必要なんです。そんなもの知らねー!という人が多いかもしれませんが、実は有機合成化学協会誌の届く封筒に記載があるんです。そこの貴方、封筒を捨てる前に登録してみてくださいね。あともう一点難点が、「登録後、閲覧が可能になるまでに1週間ほどお時間がかかります。

「今見たいんだよ!」という方多いと思いますが、今のところ仕方がありません。そのようなことがないように前もって登録してみてください!なお、このよくわからない仕様を解決するために有機合成化学協会誌の会員登録と同時にJ-STAGEの登録も済ませてもらえるように提言しました(実現はわかりません)。現在の会員に関しても強制登録してもらうようにお願いしましたが、そこは難しいかもしれないので、ちょうど今登録してみてください。

J-STAGE「有機合成化学協会誌」利用登録はこちら

追記 2018年2月21日:登録が殺到して時間がかかっているようです。気長にお待ち下さい。なお、登録できるのは有機合成化学協会の会員(学生会員も含む)のみですので、会員でない方は登録できません(会員出ない方の登録申請も殺到しているようです)。

有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズ

Avatar photo

めぐ

投稿者の記事一覧

博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

関連記事

  1. 化学Webギャラリー@Flickr 【Part1】
  2. 反応の選択性を制御する新手法
  3. 酒石酸にまつわるエトセトラ
  4. シンプルなα,β-不飽和カルベン種を生成するレニウム触媒系
  5. イオンペアによるラジカルアニオン種の認識と立体制御法
  6. ケトンを配向基として用いるsp3 C-Hフッ素化反応
  7. 科学部をもっと増やそうよ
  8. 元素ネイルワークショップー元素ネイルってなに?

注目情報

ピックアップ記事

  1. ピリジン-ホウ素ラジカルの合成的応用
  2. キラルな八員環合成におすすめのアイロン
  3. ノーベル医学生理学賞、米の2氏に
  4. 耐熱性生分解プラスチック開発 150度でも耐用 阪大
  5. 日米の研究観/技術観の違い
  6. フッ素 Fluorine -水をはじく?歯磨き粉や樹脂への応用
  7. 新生HGS分子構造模型を試してみた
  8. いつ、どこで体内に 放射性物質に深まる謎
  9. ノーベル化学賞受賞者に会いに行こう!「リンダウ・ノーベル賞受賞者会議」参加者募集中!
  10. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartIII+薬学会も!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年2月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー