前回の記事にて研究室内クラウド設立を筆者が行うに至った経緯について記しました。
今回は実際の導入法、導入してみた使用感や利点・欠点などを述べたいと思います。
必要なもの
まず、第1にWiFi環境そのものが必要です。
研究室内に構築されていないと大学との問題が生じる可能性があります。
(大学内ではなく研究室内に構築すること・外付けHDD扱いにできることで大学に対して許可を取る必要がなくなるため)
次に、クラウドそのものとも言えるWiFi対応HDDです。
筆者は以下のものを用いました。
Baffalo HP(http://buffalo.jp/product/hdd/network/cs-x/)より引用
WiFiのルーターと上のリンクステーションを直接ケーブルでつなぎました。
なお上のものは1万円以下で構築することを目指していたため、型落ちしております機器を用いています。
それゆえにPogoplugは現在保証外で有料となってしまうため用いておりません(これを用いなくてもクラウド構築は可能です)。
あとはデータ管理しっかりするぞ!という気概です←
構築方法
上記機器を用いた場合、構築方法は非常に簡単でした(WiFiルーターがBaffalo製で同じであったことも理由の一つかも知れませんが)。
では、実際に構築する流れについて写真を交えながらお教えします。
まず、WiFiルーターに接続します。
ログイン後、デバイス画面に行くとそこにクラウドが認識されています。
ご覧になるとわかるとおり、親のインターネット(すなわち大学の直接の有線LAN)から子の研究室内WiFiへとつながり、孫としてプリンターやその他PCが繋がっており、クラウドもその一部と見なされています。
異なるのはそれを有線でつないでいるため転送速度が少し変わるということくらいです。
これにより、安全かつ安心な環境作りが可能となります。
なお、クラウドやその他機器の情報漏れが怖いものに関しては、内から外へのインターネットへの接続と外から内への侵入を禁止しています。
では次にうつります。クラウドのデバイスをクリックすると、次にクラウドのログイン画面になります。
ログインした後、
ローカルユーザーにて各ユーザーアカウント(研究室全員、および共用PCのアカウント)を作成します。
学生一人一人に好みのパスワードを設定してもらい、登録しました。
その後、フォルダーを共有用のものと、各人ごとのフォルダを作成します。
この際、共有用のもののみ読み込みと書き込みを全てのユーザーに許し、研究室の共通データや卒業生、利用規程などのデータには読み込みのみ権限を与えます。
もしも、全員でこれから先共通して使うデータがある、研究室旅行の写真とかを共有したい!となれば、一旦データ共有用へ入れてもらい、管理者がそれを各フォルダに移動します。
また、各ユーザーのフォルダーもそのユーザーと管理者(保険のため)のみ書き込み権限を与え、それ以外のユーザーへは読み込みのみ可とします。
以上の設定を行うことで、「研究室の各学生は自分のデータは自分でしか保存ができず、でも参照することはどこからでもできる」という環境が作ることができました。
有効な運営方法
筆者はこのクラウド共有システムを構築することで、データの損失を防ぐ仕組みを作ることができました。
しかし、ここで大きな問題が生じました。
そもそもデータ共有先に保存してもらえないとデータ自体が存在しないのです(当たり前だろと思いますよね笑)。
そこで、学生全体のデータのバックアップをきちんと取ることの重要性について自分含め学生で共有することとしました。
まず、普段行っているゼミの資料(進捗報告会や文献紹介など)をきちんとPDF化するように伝えました。
ただPDF化するというだけでは研究室のメンバー自身にメリットがなく、面倒と思って実践してもらえないので、そのメリットについて実演しました。
以下実演内容
PDF化した進捗報告会の資料を開き、探したい反応条件をCtrl+Fで検索すると・・・・そのページに飛べるのです。
(筆者の研究室では1週間に1度報告会があるため)
実験ノートをめくらなくともそのデータから探して、いつ頃に行った実験かを把握することでそのノートのページを格段に探しやすくなるよね!?
過去の先輩が同じ実験を行ったことがあるかわかれば再試しやすいし、安全面もより確かになるよね!?
クラウド内の保存名を統一しておけば、学会発表や修士論文、その他多くの書類の様式を見ることができるよね!?
etc.
こうして実演することで徐々にではありますが利用してくれる人が増えてきた気がします。
PDF化に際してはケムステ記事のローカル環境でPDFを作成する(Windows版)を参照してもらいました。
PDFをまとめる際には、UnityPDFを用いてもらいました(こちらは修士論文などにも利用できて、使いやすいのでオススメです)。
ただ、学生も急に導入したシステムについていけるわけではないので浸透するには1~2年ほどかかりました・・・。(これは筆者の問題かも知れませんが)
利用者が増えてきてからはかなり良い循環で回っていて、どんどん良い方向へと移りつつあります。
学生の入れ替わりへの対応
私も一学生ですので卒業してしまいます。
私が導入して満足しても、クラウドが常に運営可能でないのなら導入する意味がありません。
そこで筆者は利用規程を作成し、しっかりとしたルール作りをすることにしました。
また、卒業した先輩たちが作成したルールを変える際に、変えるべきものなのかどうかを考えやすいように利用規程は削除をしない追記型のものとしました。
以下当研究室の一例ですが抜粋します。
初代 Cloud管理者 gladsaxe
本利用規約は必ず守ること。
1誰が、どの人のフォルダを見ても、どこに何が入っているかわかるようにすること
2誰が何の反応を行っていたかがわかるようにする、検索できるようにすること
を目的にこの規約を作成する。・それぞれの人のフォルダは本人しか書き込みができない仕様とする。
・フォルダ内の分類に関しても統一性をはかるため、ガイドラインに則って各自フォルダを作成しそこにファイルを保存すること。
・ガイドラインに分類できないファイルや、不明点が生じた場合はそのときの規約作成者へ必ず問い合わせること。
・すぐに手元からファイルを開きたいという場合にはフォルダのショートカットを作成すること。
・重複するデータが存在しないようにすること。
・MTGのデータは必ずPDF化したファイルも保存すること。
(PDF化はPrimoPDFをインストールし、印刷するプリンターでPrimoPDFを選択すればOK。わからなければ聞いて下さい。)
・MTGデータは期末にそれぞれが自らPDFを連結し、連結ファイルも保存しておくことガイドライン
各々のフォルダは以下のように分類すること。
NMR
(ここに関しては実験番号ごとにわかるようにしてあればファイル名一字一句まではこだわらない)
Meeting
cdx
学会発表
(各学会の正式名称で)
~シンポジウム
要旨
参考資料
発表
卒研発表
要旨
発表
原稿
修士論文関連
要旨
修士論文
修論用データ
文献紹介
元論文
Reference
HPLC
MS
論文
(フォルダ分けはテーマごとに行うかそれぞれ参照すべきところがわかるようにしておく)
IR~ガイドライン注意点~
・フォルダ名は一字一句同一のものを用いる
・学会発表
このあたりはその研究室のみんなが運営しやすいように決めるとよいと思います。
卒業と同時にフォルダを卒業生フォルダに移し、新入生が入室してきたらクラウドのアカウントパスワード申請用紙を渡して登録を進めることで代替わり完了です。
まとめ
以上クラウド導入方法についてお示ししましたがいかがでしたでしょうか。
筆者が思う欠点は、管理者の負担が少しあることとシステムの浸透に少し時間がかかることでした。
前者は研究室内で設定されている係の一つとして指導教員に打診してみるのもありかもしれません。
後者は筆者自身の問題であると思いますので、皆様はきっとうまくできると思います。
また、今回の記事は紙のノートを使用していて、基本的な研究室の運営を紙ベースで行うという研究室に向けて現状の方法を変更せずにデータ共有をしやすくする一例としてご紹介しました。
筆者の方法以外にも、もっと良い方法を皆様はお持ちかも知れません。
こんなのあるぞ!って方はご教授頂けますと幸いです。
本記事関連の過去記事はこちら
2018年3月8日 追記
本記事における「クラウド」という言葉についてご指摘を頂きました。
クラウド」とは、クラウドサービスプラットフォームからインターネット経由でコンピューティング、データベース、ストレージ、アプリケーションをはじめとした、さまざまな IT リソースをオンデマンドで利用することができるサービスの総称
引用元:https://aws.amazon.com/jp/cloud/
今回構築したものはまだVPN設定などを許可していないため、現段階では「ファイル共有サーバ」と呼ぶのが正しい呼称となります。
今後の拡張予定、わかりやすさ(読者の方への伝わりやすさ)を重視した結果、情報の正確性に欠けましたことをここにお詫び致します。