[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ゴードン会議に参加して:ボストン周辺滞在記 Part II

[スポンサーリンク]

ゴードン会議の参加体験記とボストン周辺の滞在記について書いています。

さて、前回のPart Iの続きです。発表が終わったので、基本的にあとは会議を楽しむのみ。夜は1-3時ごろまで飲み、朝7時前に起きて、9時ごろからの講演会に参加する。これを4日間続けました。さすがに最後の方は疲弊していましたが、とっても充実した会でした。

講演について

講演の内容については秘密なのでお伝えできませんが、2日目の私以降の著名な講演者は以下の通り(1日目・2日目の途中まではPartIを御覧ください)。

Suzanne Blum(University of California, Irvine, USA)

Abigail Doyle (Princeton University, USA)

Corinna Schindler (University of Michigan, USA)

Scott Rychnovsky (University of California, Irvine, USA)

Richmond Sarpong (University of California, Berkeley, USA)

Mingji Dai (Purdue University, USA)

David Sarlah (University of Illinois at Urbana-Champaign, USA)

Kami Hull (University of Illinois at Urbana-Champaign, USA)

Steven Weinreb (Pennsylvania State University, USA)

Eric Jacobsen (Harvard University, USA)

米国のトップスクールの若手から中堅・そして、第一人者まで勢揃いという感じでした。

個人的に印象に残ったのが、Abiの新しいアプローチでの研究、あとは若手研究者としてMingjiとDavidの講演が光っていました。Weinreb(Weinrebアミドの人)を初めて拝聴出来たのもよかった。講演のあとの質問の回答が端的すぎで印象的でした。

この他にも、Heterocyclic coupoundsであるゆえに、製薬企業のシニアサイエンティストレベルの講演も多く、普段は講演をあまり聞かないの私が、ほとんどすべての講演に聞き入りました。

毎日の夜の飲み会

講演が終わると、毎夜講演会場のとなりのホールに移動して飲み会です。奥はポスター発表会場になっており、飲みながら談笑することも可能。とにかく23時ぐらいまでは、とめどなく飲めます。会が提供してくれるお酒(ビール)以外にも、参加メンバーが購入してきたウィスキーなどが並ぶ。ここでほとんどの参加者との交流があります。講演者はもちろんのこと多くのひとと話しました(飲みました)。

コーネル大で昨年からPIとして研究をしているSong Linなども。頭いいなあと思っていたら、帰国後ポスター発表していた研究がScienceに(記事:電気化学と金属触媒をあわせ用いてアルケンのジアジド化を制す)。ドイツにサバティカルに行っていたときの、Glorious研の学生とも再会。今は米国製薬会社メルクで働いているそう。あとは学生とも多く話しました(飲みました)。みんなの名札に彼らの名前を日本語(漢字)で書いてあげたら大人気となり、みな欲しがっていました。こういうことも日本からほとんど参加者がいないから起こるわけですね。

フリータイム有り。ポスター発表中も飲める

講演は毎日、朝からお昼までと、夕食後しか行われません。それ以外は何をしているかというと、毎日お昼から4時までがフリータイム。私は1日は街にみなで食事と買い出しの後(昼間から)飲みに行きました。それ以外は部屋で仕事をしているか寝てました。周りはとってもキレイで天気もよく、クリフウォーキングもできるので、そういうことに時間を使っても良いかもしれません。

4時から6時までがポスターセッションです。ポスターセッションでもしっかりとビールを提供されます。また1日だけでしたが、ワインテイスティングの日があり、その日は大量のワインとおつまみが提供されました。飲みながらより交流を深めるといった感じです。GRCはポスターで参加するためにも審査を通らなければいけないためか、ポスターもかなりレベルが高く、これもかなりの人が未発表のデータをもってきていました。

その他

最終日は朝ごはんを食べて変えるだけですので、前日が最後の夕食になります。最終日の夕食はこの地域の名物のロブスター。正直めちゃくちゃうまいという感じではありませでしたが、アメリカ東海岸に来た気がしました。

ロブスター

 

というわけで、講演を楽しみ、飲みまくったGRC。初参加でしたがまた参加したくなりました。PartIに書いたように、講演しないとあまり意味が無いので、また別のGRCにお呼びがかかるまで粛々と待つことにいます。

ボストンに戻る・ボストンの休日

ボストンに戻ったのが金曜日の午後。月曜日と火曜日に講演予定をいれていたので、土日は何もない。ということで、土曜日はボストンの街を散策に。ブルックラインのマリオットを予約して宿泊していたため、ここからMITに歩いて向かいました。飲み過ぎ食べ過ぎだったので丁度良し。天気もとてもよく、6月のボストンは寒いと聞いていたのですが、暑かったです。いやめちゃくちゃ。たまたま暑い日に重なったようで、普通は肌寒いそうなので、この時期に行く方は気をつけて。

MITにつくと、ゴードン前に会ったBuchwald研究室の市川さんに研究室とMITを案内してもらいました。土曜日だったんで、Buchwald教授どころか誰もいなかったのが残念でしたが。化学科と研究室以外の有名な建物なども案内してもらって、コーヒー飲んで、ボストン在住の日本人と飲み会に突入。

全員MITとハーバードの学生&博士研究員です。藤田くんは東大の藤田研究室の助教。なぜかいました。田主くんはいまRadosevich研の大学院生。面白いリン触媒を使っている研究室です(ケムステ関連記事:配位子だけじゃない!触媒になるホスフィン)。市川さんはBuchwald研究室大学院生、天児さんは千葉大の西田研究室で博士を取得し、現在Christina Woo研究室でケミカルバイオロジー関連の研究をしているそうです。梅原くんは、東北大の徳山研究室で博士を取得後、岸研究室で博士研究員。ゴードン会議の体験記の執筆者です。大澤くんは北大谷野研究室で学位、その後同じく岸研で博士研究員。

というわけで、豪華な超若手メンバーと楽しく語らいました。久々の日本語だったのでいろいろ話せました。日本に帰ってきた時はぜひ遊びに来てください。

ボストン在住日本人と飲み会(左から藤田くん・田主くん・市川さん・天児さん・梅原くん・大澤くん)

 

日曜日は次の日からのスライドを作成し、天気もいまいちだったので仕事をして過ごしました。

ボストン・カレッジとボストン大学訪問

月曜日と火曜日は、ボストン・カレッジとボストン大学で講演です。ボストン・カレッジはHoveyda教授と和佐助教授、ボストン大学はAaron Beeler助教授がホストでした。いずれも大学に来た時についでに寄ってもよいか聞いてあったので、快く引き受けてくれました。ちなみに忘れそうなので、先に書いておくと、ゴードン会議への往復の渡航費や参加費等はすべてゴードンで払ってくれましたが、アディショナルな講演旅行に関しては、新学術領域の「反応集積化が導く中分子戦略」(領域代表:深瀬浩一)の国際活動支援費にお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。

さて、月曜日はボストン・カレッジ。朝に和佐さんがホテルまで車で迎えにきてくれました。ボストン・カレッジはすこし郊外にあるようで、まわりもあまりなにもないのどかな感じ。ついてから和佐さんとのディスカッションからはじまり、講演まで怒涛のディスカッション(Jeffery A. ByersAmir H. HoveydaShih-Yuan Liu / James P. Morken / Marc L. SnapperX. Peter Zhang)。いつも通りですが。最新の化学を披露してくれるのでとっても面白いです。和佐さん、Morken教授が特に面白かった。

お昼まで食べながら大学院生とディスカッション。なんとそこで、伊丹研究室時代にカナダから訪問学生で1ヶ月間ですが来ていたキランくんに再会。今はLiu研究室で博士研究員をしているとのこと。世界は狭い。

というわけで、あっという間に講演開始。質問はめちゃくちゃ多くて、30分以上あった気がします。あまり詳細に詰めていないところをつかれたので、なかなか答えに困りました。無事終了後、Hoveyda教授と和佐さんと懇親会。大変お世話になりました。

火曜日は、ボストン大学。名前は似ていますが、全然別の大学です。ここは有機化学の教授が少ないのでお昼からスタート。

歩いていける距離だったので歩いて大学を訪問しました。Aaronが玄関で迎えてくれて、そのまま雑談とディスカッション。その他 Malika Jeffries-ELJohn PorcoScott Schaus とディスカッションしました。Porco教授は大学院生時代同じ化合物をつくっていたコンペティター。主にDiels-Alder反応のどの環化反応で二量化した天然物の全合成を行っています。有機化学で言えば、圧倒的にボストン・カレッジの方が上でした。講演会も、質問も3個ほどでで淡白に終了。その後、AaronとScottと懇親会を楽しみました。 

というわけで、 計11日滞在の初めてのアメリカ東海岸。いろいろと刺激を受けたので、またお呼ばれすることがあればぜひ訪問したいと思います。ながーい飛行機の旅はもう嫌ですが。ゴードン会議関連の皆様、お世話してくれた秘書やホストの先生方に感謝。

P.S. 4ヶ月以上前に行ったのですが、ようやく公開しました。今度はできるだけはやめに書きたいと思います。

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 第3回ITbM国際シンポジウム(ISTbM-3)、第11回平田ア…
  2. 「有機合成と生化学を組み合わせた統合的研究」スイス連邦工科大学チ…
  3. ヒドロキシ基をスパッと(S)、カット(C)、して(S)、アルキル…
  4. 単分子の電気化学反応を追う!EC-TERSとは?
  5. 水晶振動子マイクロバランス(QCM)とは~表面分析・生化学研究の…
  6. 胃薬のラニチジンに発がん性物質混入のおそれ ~簡易まとめ
  7. 遺伝子工学ーゲノム編集と最新技術ーChemical Times特…
  8. Rice cooker

注目情報

ピックアップ記事

  1. アッペル反応 Appel Reaction
  2. 光触媒ラジカルカスケードが実現する網羅的天然物合成
  3. Brevianamide Aの全合成:長年未解明の生合成経路の謎に終止符
  4. 有機合成化学協会誌2021年5月号:『有機合成のブレークスルー』合成反応の選択性制御によるブレークスルー
  5. Nature Chemistryデビュー間近!
  6. ケミカル・ライトの作り方
  7. 多価不飽和脂肪酸による光合成の不活性化メカニズムの解明:脂肪酸を活用した光合成活性の制御技術開発の可能性
  8. 海藻成長の誘導物質発見 バイオ研
  9. 重水素標識反応 Deuterium Labeling Reaction
  10. パオロ・メルキオーレ Paolo Melchiorre

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年11月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー