[スポンサーリンク]

一般的な話題

ACSで無料公開できるかも?論文をオープンにしよう

[スポンサーリンク]

科学のオープン化推進の試みが各国で進められており、日本でも研究成果を基本的に全面公開しようとする動きが出てきているようです。

またジャーナル購読料の高騰にともない、最近は無断アップロードサーバーがなにかと話題になっています。先日はそういったサーバーであるSci-Hubが裁判で負けたり、ACSから「ResearchGateでの無断公開許さない」旨のメールが届くなど、違法な論文公開・交換手段に対する攻防が活発化している印象です。

化学系研究者にとって論文にまとめてテーマを供養することはもっとも重要な仕事のひとつだと思いますが、誰にも読まれない無縁仏になっては費やしたリソースが報われません。埋没対策としても論文のオープン化は有効だと思われます。しかし何十万も払ってオープンアクセス誌に出すのは予算的になかなか厳しい!というわけで今回は論文の無料オープン化について書きたいと思います。

原稿の無料公開

submit時点やaccept時の論文を一定条件下で公開可能としているジャーナルが多くあります。例えばRSCのジャーナルでは掲載から12ヶ月経過したaccepted manuscriptを自身のホームページ等で公開することが基本的に認められています(Green open access)。

昨今、金儲け主義だとよく批判されているエルゼビアであってもさまざまな著者の権利を認めています。その他の出版社でも同様のルールがあり、情報は論文掲載前に提出するCopyright Permission Request Form(のような名前のもの)に書いてあります。読み飛ばさずチェックしましょう。

プレプリントサーバーの利用

物理分野では研究成果をプレプリントとしてarXivに投げる習慣ができあがっているようで、数年前に共著で出した際には驚いた記憶があります。

生物学分野でも2013年からはBioRxivが公開され、近年は所謂CNSといったトップジャーナルに後々掲載される論文原稿が出てきているようです。

化学では数ヶ月前にプレプリントサーバーのChemRxivが一般開放されて話題になりました。出版社内でも条件が統一されていないなどの問題があるのは残念ですが、材料系では概ねsubmit前の版の掲載が認められています。他分野を参考に将来性を考えるとプレプリントには慣れておく方が吉でしょう。しかしChemRxivで”Japan”で検索してみると、日本からは私ともう1つのグループしか結果に出てこず、ほとんど誰も出していないのが現状のようです(11月8日現在)。全体としても2ヶ月半で100報を超えたところで、まだこれからという感じです。

ACSの論文が無料でOAになるかも?(2017年末まで)

無料オープンアクセス誌はスパムメールで投稿を薦めるなどいかがわしいものが横行しており、かといってまともなジャーナルで掲載版論文をオープンアクセスにすると高額になってしまいます。

自身のケースでは、学会に薦められてElsevierの某無料オープンアクセス誌に投稿したところ、Web of Science Core Collectionにインデックスされていない(Web of Knowledgeで検索しても出てこないしジャーナルにImpact Factorがつかない)という事実に掲載後に気付いてしまう、残念な結果に終わったこともあります。

費用や信頼性の問題からちょっと面倒な掲載版論文のオープンアクセス化ですが、まともなジャーナルに掲載された論文を無料でオープンにできるなら避ける理由がありません。

2014年にACSから論文を出版した場合、1報につき750×2=1500ドル分のACS Author Rewardsなるものが付与されていたことをご存じでしょうか?「ACS全雑誌を購読している機関に所属するACS非会員が掲載12ヶ月以降にオープンアクセスにする料金」がちょうど1500ドルであるため、これを使えば2016年以前に出版した論文はどれでも1報ずつ無料でオープンにできようになります(所属機関や会員かによって条件は変わります)。クーポンの有無はACS ChemWorxからチェックできるので、試してみてはいかがでしょうか。キャンペーン期限は今年の年末までです。

参考

Avatar photo

GEN

投稿者の記事一覧

大学JK->国研研究者。材料作ったり卓上CNCミリングマシンで器具作ったり装置カスタマイズしたり共働ロボットで遊んだりしています。ピース写真付インタビューが化学の高校教科書に掲載されました。

関連記事

  1. 新奇蛍光分子トリアザペンタレンの極小蛍光標識基への展開
  2. 有機合成化学協会誌2022年4月号:硫黄置換基・デヒドロアミノ酸…
  3. プロドラッグの活性化をジグリシンが助ける
  4. 分子集合の力でマイクロスケールの器をつくる
  5. アイルランドに行ってきた②
  6. 使っては・合成してはイケナイ化合物 |第3回「有機合成実験テクニ…
  7. アルメニア初の化学系国際学会に行ってきた!②
  8. 原子一個の電気陰性度を測った! ―化学結合の本質に迫る―

注目情報

ピックアップ記事

  1. ローゼンムント・フォンブラウン反応 Rosenmund-von Braun Reaction
  2. 第3回慶應有機合成化学若手シンポジウム
  3. 不斉アリルホウ素化 Asymmetric Allylboration
  4. DIC岡里帆の新作CMが公開
  5. オルガネラ選択的な薬物送達法:②小胞体・ゴルジ体・エンドソーム・リソソームへの送達
  6. エーザイ 抗がん剤「ハラヴェンR」日米欧で承認取得 
  7. 新人化学者の失敗ランキング
  8. Reaxys Prize 2010発表!
  9. アレクサンダー・リッチ Alexander Rich
  10. マテリアルズ・インフォマティクスにおける従来の実験計画法とベイズ最適化の比較

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年11月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP