[スポンサーリンク]

一般的な話題

NMR解析ソフト。まとめてみた。①

[スポンサーリンク]

合成に関連する研究分野の方々にとって、NMR測定とはもはやルーティーンワークでしょう。反応を仕掛けて、サンプリングして、それのNMR測って、反応を停止させて、粗生成物のNMRを測って、できていること確認して、精製してNMR測って確認して…一回の実験でも結構な測定回数があります。さて、測定したら解析です。この時に使用するのが解析ソフト。皆様は何を使っていますか。

ネット上を検索してみると、無料から有料のものまでたくさんあります。今回はネット上に散逸するNMR解析ソフトをまとめて見ました。研究室に導入する際の参考にしてください。

NMR解析ソフト一覧

  • 完全有償版

有償ですが、それだけあって良いものが揃っています。中でもALICE2とMestRe NOVAはダントツで人気が高く、かつ使い勝手が良いです。インターフェイスがキレイで、直感的操作が洗練されている点が良いですね。ACD/Spectrus Processorsは、ChemSketchで有名なACD/Labsが開発したプログラムです。以前は無料で使えたのですが、現在は有償です。ACD/Spectrus ProcessorsはNMRのみならず、MS、吸収・発光、クロマトグラムなど様々なスペクトル処理をおこなえます。その点では価値が高いです。iNMRとNUTsに関しては、使用感の情報に乏しいです。使った事あるという方はぜひ教えてください。

 

  • 条件付き無償版

3つの内、前2つはNMRで一度は見たことがある機種、JEOLとBRUKERによるソフト。アカデミック研究機関は登録だけで無償で使えます。ただし、BRUKERのものはNMR実機に印字されている8桁のコードが必要。NMR本体は買ってね、ということですね。当たり前ですがJEOL機はJEOLソフト、BRUKER機はBRUKERソフトと相性がいいです。2つを比較するとDelta/NMRは誰でも使えるという点で軍配が上がります。TopSpinはコマンド操作に対応しており、それらが得意な人はこちらの方がいいでしょう。2つとも重ね書きやその色付け、スペクトル処理のマクロ設定などできることは多く、無償版にもかかわらず申し分ない性能を持っています。NMRnotebookも大学研究機関ならば登録すれば無料で使えます。対応するページにいってみるとわかりますが、通常の1次元および2次元NMRの解析に加えて、DOSY専用の解析ソフトがあります。超分子や生体分子関連の方は重宝するのでは無いでしょうか。

 

  • 初期投資のみ

本記事著者はTopSpinとこれをずっと使っておりました。おすすめです。機能がシンプルで、使いやすいです。既存のソフトウェアはできることが多く、それゆえに混乱することが多いです。しかし、RAMOはルーティーンワークで使う機能を抽出して画面上のアイコンにおいています。一方で、NMRの重ね表示や色付けなども十分にこなせる機能が整っており、痒いところに手が届きます。インターフェイスが日本語であるという点も良いですね。唯一の欠点としてはインストールCD付きの書籍を購入する必要があることです。お値段最低2万円なり。ただし、インストール台数制限やライセンス更新の必要がなく、初期投資だけで一生使えます。十分に元を取り返せます。

 

  • 完全無償版

(以下は2次元NMR解析に特化した使用のソフトウェアになります)

その他無償版のソフト。調べてみると結構あります。無料とは言え、出来が良いものもたくさんあります。ただし、更新がストップしているものや安定しないものもいくらかあります。しかしながら、無料は最大の魅力。導入の検討をするだけならタダ!

 

解析ソフトのシェア

本記事著者の周りの方とケムステスタッフに協力を仰ぎ、使用NMR解析ソフトの使用シェアを調べてみました。以下がその結果となります。あくまで著者の周りのみであることと、NMR本体のシェアとは関係ないことはご留意ください。

図1. NMR解析ソフトウェアのシェア(本記事著者のまわりとケムステスタッフらの統計)

トップはJEOL Delta/NMRでした。やはり無料かつNMRを作る会社が出した純正ソフトであるという点で圧倒的ですね。次点でALICE2。有料ながらにこのシェアです。次にMestRe Novaが来ます。MeatRe Novaは海外組からの人気が圧倒的でした。無料かつNMRを作る会社が出した純正ソフトという点ではTopSpinも同じなのですが、やや低いシェアですね。その次にRAMO、その他と続きます。なかなかフリーウェアを常用している方はいませんでした。もしフリーソフトウェアを使用している方がおりましたらお知らせください。

各ソフトウェアの使用方法や使用感に関しては、また別記事でまとめたいと思います。これらのソフトで使用したことのあるソフトがあり、使用感に関してのご意見をお持ちの方がいましたら、コメントをお願いします。これ以外のソフトに関するコメントも大歓迎です。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4759811931″ locale=”JP” title=”有機化学のためのスペクトル解析法-UV、IR、NMR、MSの解説と演習”] [amazonjs asin=”480790633X” locale=”JP” title=”有機化合物のスペクトルによる同定法―MS,IR,NMRの併用”] [amazonjs asin=”4782705972″ locale=”JP” title=”パソコンによるFT‐NMRのデータ処理”]

 

Avatar photo

Trogery12

投稿者の記事一覧

博士(工学)。九州でポスドク中。専門は有機金属化学、超分子合成、反応開発。趣味は散策。興味は散漫。つれづれなるままにつらつらと書いていきます。よろしくお願いします。

関連記事

  1. C-H活性化触媒を用いる(+)-リゾスペルミン酸の収束的合成
  2. アルキルアミンをボロン酸エステルに変換する
  3. クリスマス化学史 元素記号Hの発見
  4. キシリトールのはなし
  5. 大量合成も可能なシビれる1,2-ジアミン合成法
  6. アステラス病態代謝研究会 2018年度助成募集
  7. メールのスマートな送り方
  8. 1,2-還元と1,4-還元

注目情報

ピックアップ記事

  1. ノーマン・アリンジャー Norman A. Allinger
  2. 合同資源上瀑工場
  3. マイヤー・シュスター転位/ループ転位 Meyer-Schuster/Rupe Rearrangement
  4. 情報の最小単位がついに原子?超次世代型メモリー誕生!
  5. 論文執筆&出版を学ぶポータルサイト
  6. 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR; reverse transcription PCR)
  7. 水素化反応を効率化する物質を自動化フロー反応装置で一気に探索
  8. MALDI-ToF MSを使用してCOVID-19ウイルスの鼻咽頭拭い液からの検出に成功
  9. ベンジル保護基 Benzyl (Bn) Protective Group
  10. 小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年9月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー