化学情報協会(JAICI)が新たな辞書ツールJAICI Science Dictionaryの提供を始めました。ケムステでは、さっそく使い勝手をレビューしてみました。
JAICI Science Dictionaryとは
STNやSciFinderなどを日本で提供しているJAICIが新たに提供を始めた英和・和英辞書です。いろいろな文献に関する業務を取り扱うJAICIが,国内外の論⽂および特許情報から⻑年収集した⽤語を収録しています。SciFinder, STN, CAS 関連製品のユーザーは無償で利⽤することができます。
特徴は、
- 科学技術⽤語が豊富に載っている
約84万語が掲載されてそのうち80%は、科学系の専門用語です。化学系では、なかなか一般の辞書には載っていない化合物も検索することができます。 - 病名・学名などライフサイエンス分野が充実
医療系ドラマで出てくるような難しい医学用語や動植物の学名もちゃんと掲載されています。 - ⽇本語シソーラスを利⽤できる
シソーラスとは類義語辞典のことで、類似・関連する言葉を同時に調べることができます。
使い方
使用開始には個別の利用登録が必要で、登録が完了するとURLが記載されているメールが送られてきます。
使い方は至ってシンプルで、調べたい言葉(日本語・英語)を検索窓に入力するだけです。検索すると結果がリストアップされ、左端のノートのアイコンをクリックすると個々の単語のページに移動します。検索スピードは非常に速く、論文の読み書きをしているときなど、素早く結果を知りたいときにはとても便利だと思います。
個々のページでは、日本語/英語訳、同義語、関連語などが表示されます。同義語・関連語がある場合に、言葉をクリックすると別のタブが開いてその言葉のページに移動します。タブが増えるタイプなので戻るボタンで迷うこともありません。英語では英語複数形が記載されていて論文作成時に複数形で迷うことがないと思います。
検索結果の比較
JAICI Science Dictionaryがどれくらい有用なのかを確認するためにいくつかの検索ツールと比較してみました。比較対象は、
- Google翻訳:ITの巨人です。翻訳分野では、年々精度が向上し学術論文でも実用に近いレベルまで到達しています。
- Weblio英和辞典・和英辞典:研究社『新英和中辞典』『新和英中辞典』を中心に509万語の英語と522万語の日本語、合計約1031万語を一度に検索できる、国内最大級のオンライン英語辞書(サイト引用)です。「”単語”+英語」とGoogleで検索するとトップに結果が表示されます。
- 英辞郎 on the Web:「何でも載っている辞書を作りたい」と願う人たちで構成されるEDP(Electronic Dictionary Project)がアップデートし続けているデータベースで、Web版はアルクが運営しているサイトで使用することができ、PCインストール版もあります。
まず全体の傾向ですが、Googleは、最初の文字を大文字で、英辞郎の英語は、リンク付きでそれぞれ表示するため、文中にコピペする際には修正が必要になってきます。次に各単語ですが、1ぐらいの単語であれば、どの辞書でも同じ結果が表示されます。ただし、専門的な単語になるとWebilioと英辞郎は、結果が出ないことがありました。Googleは、3のような場合、外資っぽくカタカナで返してくる場合がありました。JAICI Science Dictionaryの真価を発揮したのは、6と7のような場合で、6は読み方を入力しただけで用語の英語と日本が表示されました。7は商品名で、JAICI Science Dictionaryのみ正しい英語名が表示されました。ただ、9のように他の辞書に掲載されていてもJAICI Science Dictionaryには載っていない場合もあり、今後の語彙の増加に期待したいと思います。
今後の展開
JAICI Science Dictionary では,ユーザーからのFeedback をベースに年2回程度のコンテンツ強化を実施する予定です。さっそく9月25日に下記のような内容の更新がなされました。
- 語彙や同義語・関係後・対訳の追加
- 教科書的な化合物の分類(アルカン・アルキル基など)に対する具体例(メタン・メチル基など)の下位階層追加
- 薬剤名と化合物名での相互参照
感想
他の辞書サイトとは異なり広告が一切表示されないのですっきりとしています。筆者は今までは、英訳したい場合には「”単語”+英語」とググっていましたが、JAICI Science Dictionaryを小さく開いておけばノートパソコンでも作業の邪魔にならずに使えるので便利なツールだと思います。また、一部の単語には備考に分野の記載がありリストの段階でどの専門分野の用語なのかがわかるようになっています。一方で個別のページの情報は少ないので単語の意味や発音などといった個別のページの充実に今後期待したいと思います。
関連リンク
- JAICI Science Dictionary:化学情報協会による JAICI Science Dictionary の紹介と登録ページ
- STNユーザーミーティング資料:JAICI Science Dictionaryの紹介資料