[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

GRE Chemistry 受験報告 –試験当日·結果発表編–

[スポンサーリンク]

前回、米国の大学院の出願の際に必要になるテストである GRE Chemistry の試験前の対策方法について、お話ししました。本記事では、実際のテスト会場の雰囲気や、テストの結果について報告します。

試験当日の雰囲気

私は、4 月に福岡で開催されたテストに参加しました。受験時に最低限の持ち物は、身分証明書としてパスポート、受験番号などの情報を印刷した紙、そして筆記用具です。テスト開始時間の 30 分前に来るように、と通知されるのですが、心配性な私は、テスト開始の 50 分くらい前に到着しました。会場の教室を覗いてみると、試験監督である陽気な外国人さんがいらっしゃったので、簡単な英語で身分の確認などをやりとりして受付を済ませました。そのあとは、受験番号などを解答用紙に記入し、「試験問題を口外しません」という誓約書を書きます。それらは 10 分もあれば済む用事で、後は試験開始時間になるまで待つのみでした。つまり早い会場入りは完全な勇み足でした。

会場では Chemistry のテストだけでなく、他の GRE のSubject test のテスト(Physics や Biology など) についても同じ教室で行われました。教室は大きくなく、受験者全員で 20 人弱、そのうち半分以上が中国人や韓国人だったのではないかと思います。そして Chemistry のテストを受けていたのは、私も含めて 3 人のみで、受験者の少なさには驚きました。ひょっとすると 4 月受験は穴場だったのかもしれません (あるいは、この記事を必要としている人は、その程度の数しかいないということか…)。

テスト中のアドバイスとしては、「模擬試験通り解きましょう」としか言えないです。実際に、模擬試験と同レベルの問題が出題されました。分からない問題があれば潔く飛ばして、時間内に全問に取り組めるように心がけましょう。前回少しお話ししましたが、私の場合は 5 択の選択肢の中から 2 択まで絞り込めたら思い切って解答する、という作戦で試験に臨みました。が、結果的には全問題に解答するという強気な解答用紙となりました。練習の甲斐もあって、答案の見直しをするほどの時間の余裕もありました。

結果発表

受験から 3 週間ほどでネット上からテスト結果を知ることができます。テストの主催者からメールでお知らせが来るため、それの到着次第、自分のアカウントページから確認します。

さて、前回の記事で偉そうにテストの対策法をお話ししましたが、どれくらいの点数をとれたのでしょうか。具体的なテストの点数をここで晒すのは、とても気がひけるのですが、受験予定である読者にとっては、どれくらい勉強した人がどれくらいの点数を取れるのかということは知りたい部分だと思います (少なくとも私が読者なら、絶対にツッコみます)。よし。覚悟を決めて、ざっくりとした点数を発表しますと、晴れて、990 点満点中で 900 点を超える高得点を取得することができました。

では、次に気になるのは、実際にどのくらいのスコアの人が、特定の大学院に出願し、合格しているか、ということです。この点については、私はまだ出願すらしていないので何も言えませんが、こちらのサイトに詳しく載っています。メニューから Results Research の項目へ行き、希望する大学名を検索すると、その大学に出願した人がテストスコアや研究経験を公開しており、それらの人がどのような結果だったのかを知ることができます。

ふむふむ。例えば University of California, Berkeley の Department of Chemistry の受験者は、800 点代半ばの人が多いという印象です (正確に平均を取ったわけではないです)。しかし、700 点代で合格している人もいれば、900 点以上で不合格な人もいます。そこで、700 点代で合格した人のコメントをよく見てみると、5 publications とかナンとか書いており、研究実績も合否を分ける重要なファクターであることがわかります。つまり、このテスト 1 つで合否が決まるというわけではないのです。

受験後の振り返り

GRE Chemistry の試験は、個々の問題の難易度は高くありませんが、テスト範囲が広いため高得点を望むにはじっくりと対策をする必要があると思います。そして高得点を獲得するには、過去問を徹底的にこなすことが近道であったように感じました。比較的時間にゆとりがあった私は、 3 ヶ月くらい前から模擬試験で練習を始めましたが、集中して取り組めば 1 ヶ月程度でも十分な得点が取れたのではないかと振り返っています。

しかし、留学に必要な準備は、このテストだけではなく、全エネルギーをこのテストに集中させることはできません。例えば TOEFL iBTや、奨学金の申請、エッセイの作成などなど、やるべきことはきりがありません (詳しい情報は、こちらのまとめ記事からご覧ください)。また、大学によっては、研究業績を重視するということをホームページ上に明記されており、どの項目に力を注ぐか、ということは個人個人の作戦になると思います。「研究業績をアピールするぜ」という人は、このテストの対策に時間を割かなくても良いと思います。しかしながら、学部卒業後から留学を希望する方は、どうしても研究面が弱くなりがちです。なので、「研究経験に不安があるが、スケジュールには余裕がある」という方は前回の記事で紹介した方法で、丁寧に対策に取り組む価値はあると思います。

おまけの一言

他のケムステ記事にも、大学院留学に関する情報は掲載されていて、今回このような受験報告を作成するかどうかは迷いました。私自身も、これまでのケムステ記事を何度も読み返しながら留学準備を進めていますが、それらの記事はすべての出願プロセスが終わってから投稿されたものなので、いい意味でダイジェスト的に綺麗にまとめられてしまっています。本記事は合格者が語っているわけではないため、留学希望者にとって十分な内容を提供できていないかもしれません。しかし、当事者の緊張感もリアルタイムで実況するには、今の時期に記録を残した方がよいと思ったので、今回、このような受験報告をいたしました。この記事が、今後留学を希望される方の、道しるべの 1 つになれば幸いです。需要があれば、他の出願準備の近況についても報告しようと思います。

関連記事

外部リンク

[amazonjs asin=”0375764895″ locale=”JP” title=”Cracking the GRE Chemistry Subject Test, 3rd Edition (Graduate School Test Preparation)”] [amazonjs asin=”4757418566″ locale=”JP” title=”理系大学院留学―アメリカで実現する研究者への道 (留学応援シリーズ)”] [amazonjs asin=”4759811516″ locale=”JP” title=”アメリカ大学院で成功を勝ち取る超★理系留学術”]
Avatar photo

やぶ

投稿者の記事一覧

PhD候補生として固体材料を研究しています。学部レベルの基礎知識の解説から、最先端の論文の解説まで幅広く頑張ります。高専出身。

関連記事

  1. 分子形状初期化法「T・レックス」の実現~いつでもどこでも誰でも狙…
  2. 有機合成化学協会誌2019年12月号:サルコフィトノライド・アミ…
  3. 博士号とは何だったのか - 早稲田ディプロマミル事件?
  4. 二窒素の配位モードと反応性の関係を調べる: Nature Rev…
  5. 化学研究ライフハック:情報収集の機会損失を減らす「Read It…
  6. 触媒的不斉交差ピナコールカップリングの開発
  7. 化学系人材の、より良い将来選択のために
  8. 荷電処理が一切不要な振動発電素子を創る~有機EL材料の新しい展開…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 実験教育に最適!:鈴木ー宮浦クロスカップリング反応体験キット
  2. アルツハイマー病に対する抗体医薬が米国FDAで承認
  3. アメリカの大学院生だってパーティするっつーの! 【アメリカで Ph.D. を取る –Qualification Exam の巻 後編】
  4. C–S結合を切って芳香族を非芳香族へ
  5. 電子デバイス製造技術 ーChemical Times特集より
  6. エナゴ「学術英語アカデミー」と記事の利用許諾契約を結びました
  7. ローゼンムント還元 Rosenmund Reduction
  8. TPAP(レイ・グリフィス)酸化 TPAP (Ley-Griffith)Oxidation
  9. 分子があつまる力を利用したオリゴマーのプログラム合成法
  10. ボロン酸MIDAエステル MIDA boronate

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年7月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー