2017年4月に、米国の大学院の出願の際に必要になるテストである GRE Chemistry を受験しました。今後留学を希望する方々のために、テストの対策法や受験について報告します。
はじめに
留学のために必要なテストである TOEFL iBT や GRE General テストについては、理系に限らず受験するテストであるため、様々なサイトが情報を提供しています。しかし、専門的な知識について問われる、Subject のテストとなると、日本語で得られる情報はほとんどありません。この記事では、その隙間市場を狙って、「これでもか」というくらい詳細な情報を提供します。テストの事務的な情報については、こちらに別記事があるので、ここではやや主観的な感想や自己流の対策方法などを主にお話しします。
準備
受験を思い立ったら (受験の必要があるとわかったら)、テストの受付を済ませましょう。テストが受けられるのは年 3 回のみなので、予約を後回しにしているといつの間にか席は埋まっています。
実際、私は去年の 8月ごろに、その年の 10月のテストの予約をしようとしたところ、既に満席でした。仕方なく、その次の年 (今年) の 4月のテストを予約しました。私の場合は、かなりスケジュールに余裕があったため、延期という策をとりましたが、もっと切羽詰まっている場合は、お隣の韓国の会場などを当たってみる必要があるでしょう。慣れない地でテストに臨むというのは、精神的な疲労も大きいと思うので、日本国内で受験できるように、何よりも先にテストの予約することをおすすめします。
試験対策
テストの予約ができれば対策を始めていきましょう。はじめに敵を知る意味を込めて、模擬試験を受けることが、賢明だと思います。模擬試験は、テスト主催者である ETS から出版されている公式問題集にも収録されていますが、ネットを探せば 3 回分くらいを入手可能です。小手調べの目的であれば、それらのうちのどれか 1 つを利用すれば十分です。ちなみに、私は何の対策もしていない状況で、模擬試験を受けた結果、 990 点満点中の 600 点代だったと記憶しています (採点した直後に解答用紙をゴミ箱に葬りさったので、具体的な数字を忘れてしまいました)。
では、その後の対策方法について、テストまでの期間に応じて、2 通りの方法を紹介します。一応、今回紹介するスケジュールは、研究や講義の隙間時間を利用して勉強に取り組んだもので、勉強時間は平日は 1日に 1 時間未満、週末に計 3 時間程度です。
長期戦 – 3 ヶ月以上ある人向け-
時間的に余裕がある時期は、テストの小手先の対策にとらわれずに、各分野の教科書を通読するという、なんの変哲も無い勉強法を行いました。模擬試験を受けたときに、自分の苦手な分野に気づくことができると思うので、その分野を重点的に対策すると良いでしょう。
出題内容は浅いですが、広いです、そのため、自分の専門としている分野の問題であれば、即答できることが多いのですが、そうでない場合には「知るかっ!」と投げ出したくなる問題もあります。とはいえ、ひらめきを要するような奇想天外な問題は出題されないため、勉強すれば勉強するほどスコアを上げることができるはずです。そして、後でお話ししますが、実際の試験ではうろ覚えの知識すらも頼りになることがあります。なので、細部まで熟読する必要はなく、後で復習した時に思い出せる程度で良いと思います。もちろん、テストとは関係なく、今後の研究のためにそれぞれの分野の基礎を定着させるつもりで取り組む方が、身にもなりますし、結果的に長続きします。
使用する参考書は、日本語でも英語でも良いと思います。もちろん、出題は全て英語なので英語に慣れる意味で原著を購入しても良いのですが、結局、私の場合は物理化学だけ英語版を購入し、他は訳書を利用しました。というのも、やっぱり日本語で読む方が、圧倒的に処理速度が速く、理解のレベルも高かったからです (という言い訳。留学したいと言ってる学生が、英語から逃げるのはいかがなものか…。)
短期戦 -3 ヶ月前になったら
ここからが本番です。3 ヶ月前になったら、模擬試験を繰り返し解いて、テストに慣れるための練習を行いました。先ほどもお話ししましたが、インターネットからでも 3 回分くらいの過去問が無料で手に入るので、それら全てを丁寧に取り組みました。過去問以外にも、例えばこちらのサイトにも練習問題が掲載されていますので、必要に応じて利用すると良いと思います。
さきに種明かしをすると、それらの模擬試験は実際の試験と同レベルです。そして、それらの模擬試験同士にも、非常に類似した問題が出題されていることに気づきます。例えば、緩衝液の pH を求める問題や、抽出の分配係数から抽出効率を求める問題などです 。特に分析化学の分野は、問題のバリエーションが少なかったような印象です。そのような頻出問題をきちんと押さえて、そこで確実に点数を取りましょう。
一通り問題を解き終わったら、知識の定着と時間配分の練習の意味を込めて、徹底的に繰り返し解きました。加えて、テストの採点方法を理解した上で、答えにどれくらいの自信がある場合に解答するべきかは知っておかなければなりません。なぜなら、すべての問題は 5 者択一問題ですが、間違えると 0.25 点減点されてしまうのです。完全な当てずっぽうで 5 問答えた場合に、単純な確率論を考えて 1 問正解、 4 問不正解だとすると、得点はプラスマイナスゼロとなります。
一方、もし消去法により選択肢を 2 つまで絞り込めた問題が 5 問あり、思い切ってそれらに解答したとします。低めに見積もって、そのうち 2 問正解できたとすると、0.75 点の減点 (実際には四捨五入して 1 点減点) は喰らいますが、何も答えない場合よりも点数を稼ぐことができます。
*2017 年 9 月に受験した読者の方から、問題用紙の表紙に「間違えても減点はないのでできるだけ全て解答するように」と書かれていたという情報を提供していただきました。ETS のホームページを確認しましたが、これがそのときだけのシステム変更か、これ以降も継続されるのかは、現状断定できません。今後テストを受ける方は、問題用紙をよく読んでからテストに臨まれることを推奨します。また、テストを受験された方がいましたら、情報提供してくだされば幸いです。(2017 年 10 月 1 日加筆)
消去法が役に立つ問題
本試験において、消去法は非常に有効な戦略だと思います。例えば次のような問題があったとします (もちろん実際には英語で書かれています)。
以下の中で、光合成の明反応と関係が深い金属の組み合わせはどれか
生化学が出るなんて聞いてねぇよ、とか思いつつ、おそるおそる選択肢を眺めてみると、水銀とか鉛とか明らかに生体に悪そうな金属を含んだ選択肢があるわけです。なので、一見、手が出ない問題であっても、諦めずに選択肢に目を通し、知っている知識で答えを推測するようにします (しかし、上のような例はあまりにも極端)。
ちなみに、ETS (テストの主催者) の公式ページで公開されているテスト範囲を見ると、無機化学の分野に、発展的な内容として「生物無機化学」が出題されることは明記されているため、この種の問題は受験者を不意打ちするための問題ではありません(こちらの記事も参照)。出題範囲をきちんと確認しておくことも重要です。
書き始めると長くなってしまったので、今回はこのあたりにします。次回は、実際のテスト会場の雰囲気や、テストの結果について報告します。
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外部リンク
- GRE Chemistry Subject Test (ETS 公式ページ)
- GRE Chemistry Test Practice Book (ETS 公式模擬試験)