[スポンサーリンク]

一般的な話題

電子デバイス製造技術 ーChemical Times特集より

[スポンサーリンク]

関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」。この情報誌の紹介も完全にシリーズ化し、今回で7回目。毎度のことながらケミカルタイムズという雑誌名を超えた、幅広い分野が扱われています。

今回はタイトルにあるように、特集として「電子デバイス製造技術」にスポットをあてた4つの記事について紹介したいと思います(記事はそれぞれのタイトルをクリックしていただければ全文無料で閲覧可能です。PDFファイル)。

省資源・省エネ・超低設備コストを実現した超小型デバイス製造システム-ミニマルファブ

近年の快適生活にはなくてならない電子デバイス。これらをつくる電子デバイス工場(メガファブ)は需要加速により拡大に拡大を重ね、いまでは1ライン当たり1兆円規模の投資が必要となるそうです。ただそれだけの投資を回収できるほどの受注を得られているのはごくわずか。単一デバイスではほとんどありません。現状では1万個以下の受注が多く、そのオーダーに適した「小さな工場」が求められています。

本記事では多品種少量生産に特化した超小型製造システム「ミニマルファブ」についての概要を述べています。

電子デバイス超小型製造システム「ミニマルファブ」

 

すべてのデバイスに対応できるわけではなく一長一短ありそうですが、投資額と電力消費をメガファブの1/1000とすることを目指しています。上記の写真にあるようにすでにデバイス製造システムとして具現化、試作されており、実際の電子デバイス製造として実用化される日も近いようです。

半導体製造CMP工程後の洗浄技術

ウェーハ表面を研磨により平坦化する技術を化学機械平坦化(CMP: Chemical Mechanical Planarization)といいます。

半導体製造工程の1つであるCMP技術も埋め込み→平坦化を目的とした基本的な工程は代わりませんが、最近、半導体チップの微細化・高集積化にともなう材料の変化により、平坦性や欠陥のさらなる厳しい管理が求められています。

CMPのイメージ

 

本記事ではCMP装置の変遷からはじまり、主にCMP後の洗浄(砥粒、研磨屑、有機残渣、金属不純物などの残留物を除く)方法について述べています。

CMP後の洗浄の流れと薬液と装置の位置づけ

 

半導体CMPプロセスにおける 金属腐食の電気化学解析

上述したCMPには様々なものがありますが、その中でも銅やコバルトのような金属のCMPを行う場合腐食を抑制することが重要な課題であり、そのためには電気化学解析が最も有効な手法としてもちいられます。記事では通常のpH-酸化還元電位図に腐食電流を加えた三次元図(著者らが開発・提案)を実験的に作成した例を紹介しています。

上図の深い溝になっている部分が腐食でにであり、それよりも右下(低電位側)の不活態領域では水素が発生する還元反応が起こっており、電流密度が高くても腐食は起こらない。腐食電位の左上(高電位側)の酸性側に低電流密度領域が存在し(白い領域)、実験にもちいたCMPスラリー(pH3)の腐食電流は非常に低いことがわかります。

*スラリー:CMPに使用される研磨液のこと

 有機残渣除去性を改善した新規なアルカリ性Cu-CMP後洗浄液

一番化学っぽい記事。現在Cu-CMP後洗浄プロセスで最も大きな課題である

「CMP後にウェーハ表面に残留する有機残渣除去性の改善」

を目的として、アルカリ性水溶液中での各種錯化剤の効果を調査に基づいた結果として報告しています。有機残渣にはCu防食剤として含まれている1,2,3-ベンゾトリアゾール(BTA)のようなヘテロ環がCuと作用して錯体となって安定化しているものが多いとのこと。これらに錯化剤(含窒素五員環化合物)を作用させてはがすことにより、有機残渣を除去するといったわけです。

Cu-BTA錯体除去の推定反応メカニズム

 

著者は関東化学の室長であり、関東化学でも同CMP後洗浄溶液を販売しています。関連商品を御覧ください。

関連製品

過去のケミカルタイムズ解説記事

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 抗ガン天然物インゲノールの超短工程全合成
  2. 有機フォトレドックス触媒による酸化還元電位を巧みに制御した[2+…
  3. 真空ポンプはなぜ壊れる?
  4. 有機合成化学協会誌2024年8月号:連続フロー合成・AI創薬・環…
  5. 大学入試のあれこれ ②
  6. ジンチョウゲ科アオガンピ属植物からの抗HIV活性ジテルペノイドの…
  7. ReadCubeを使い倒す(3)~SmartCiteでラクラク引…
  8. 炭素原子のまわりにベンゼン環をはためかせる

注目情報

ピックアップ記事

  1. バートン トリフルオロメチル化 Burton Trifluoromethylation
  2. 高分子界の準結晶
  3. ゴールドバーグ アミノ化反応 Goldberg Amination
  4. 宮浦・石山ホウ素化反応 Miyaura-Ishiyama Borylation
  5. 【2/28・29開催ウェビナー】粒子分散がわかる2DAYS(三洋貿易株式会社)
  6. 武田 新規ARB薬「アジルバR錠」発売
  7. 第3回ITbM国際シンポジウム(ISTbM-3)、第11回平田アワード、第1回岡崎アワード
  8. 第15回光学活性シンポジウム
  9. ウイルスーChemical Times 特集より
  10. セリ科植物に含まれる生理活性成分

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年7月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー