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尿はハチ刺されに効くか 学研シリーズの回顧

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Tshozoです。先日、そっち系の趣味は無いんですが尿の成分がふと気になって気になって仕方なくなってきましたので調べてみることにしました。お付き合いください。いや、やっぱり付き合わなくていい気もしてきました。

尿 概要

幸い、筆者のような好事家に対し素晴らしいプレゼンがWeb上に落ちていたのでそれら(これも)(こっちも)を参考にすることにしました。

英語版Wikipedia “Urine”より引用

当たり前ですが尿は英語でUrine、日本語で別名小水などとも言います。中国語でも尿(ニャオ)と発音はよく似ており、ドイツ語ではHarn(ハルン・男性名詞)。大鵬薬品殿のハルンケアはこの単語から名前取ってるんでしょうね。もちろん人体からの排出物で、その大半は水分ですが意外にもその量は一般に95w%程度。5wt%というと結構な量ですが、その内容は下表のような成分の模様(上記の素晴らしいプレゼンより引用)。

尿内の有機物の分子構造 一例

 

こう見てみると意外と水分以外の量が多い。有機物のメインはその名の通り尿素で、それが2wt%も入っているのは驚きです。あと尿の味は塩い(しおい)ということはよく聞きますが、NaClが入っていることを考えるとまぁうなずけるかと。

若干脱線しますが、難病である糖尿病が悪化すると本当に糖分(グルコース)が尿に含まれてしまうため「糖尿病患者の尿を舐めると甘い」というような話をそのスジから聞きます。筆者は社会的な立場上舐めるわけにもいかないのですが、17世紀に有史上ではじめてこの甘さを確認したイギリス人医師トーマス・ウィリスは糖尿という症状(現象)を世に知らしめた変態冒険者でもありました。文献では「砂糖やハチミツのような素晴らしい甘みがする」(参考:”Pharmaceutice rationalis, 1681.” こちら)と記述があったようですからおそらく間違いなく舐めたんでしょう。同氏が変態かどうかはともかく、尿は体内の異常を早期に発見するのに重要なメディアであることに今も昔も変わりはないということですね。

尿に関する用途(注:一部民間療法レベル)

あたりまえですが、筆者が好きな窒素原子が含まれた材料が溶けているので肥料の原料として使われてきたのが主な用途でした。また、面白いところでは平野耕太氏が描かれている「ドリフターズ」で織田信長が銃の火薬(硝酸塩+硫黄+炭)をエルフたちに混ぜさせて合成させていたように、原始的な火薬の原料として使われたことが挙げられると思います。尿素が何らかの作用で分解されアンモニアが出来るのに加え、この世には「硝酸菌」なるものがおり、酸化により硝安を作ってしまうわけです。事実肥溜めなどには場所によっては結晶化したアンモニウム塩が出来ていたこともあるようで。

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鬼才 平野耕太氏による現在連載作品「ドリフターズ」
ドイツ濃度が非常に高いため嬉しい

次の漂流者はルドルフ・ディーゼルを希望

このほか、筆者がたしか青年時代のあたりで「飲尿療法」という健康療法が巷に出回ったことがあります。当時「この****が」としか言いようがなかったのですが、一応インドをはじめとするアジアの一部の地域では民間療法の一例として認識されているケースもある模様。特にインドでは4代目の首相が「医療を十分に受けられない人々の『完璧な』治療法(?)である」と言ってしまった(こちら)もんだから、結構いろんなところでまだ使用されてるもようで”India” “Urine Therapy”で調べると結構.inのドメインで結構な数のサイトがひっかかります。

ただし科学的に立証されてないという点でEM**、ホメオパシー**とか某水素水と同レベルの怪しさ爆裂案件であり、主観のみで申し上げますが科学的云々以前に生理的に受け付けない時点で終了でしょう(ただ筆者は科学的な効果よりもプラセボ効果で快方に向かう人の方が多く居たならどうしよう、とも思ってしまう優柔不断さを持ち合わせております)。

ちなみに尿繋がりでトピックを挙げると、イスラム圏では昔から民間療法として人の尿ではなくラクダの尿を薬として使用する伝統が一部にあったようです。実際現代でもラクダの尿にin vitroで抗がん作用があると主張する論文(こちら真偽調査中)とか、ラクダの尿中のナノ粒子ががん細胞に選択的な効果を発揮する(こちら真偽調査中)だとかするエセもとい調査結果、はてはラクダの尿に関する一見科学的なレビュー(こちら)もあるため、ここまでいくともしかしたら何か本当に効果があるんでは、と思ってしまうのは人の性(さが)でしょうか。

ラクダの放尿の様子とそれを受け止める人の様子
Youtube動画から飲尿(こちら) 1:30あたりからは見ない方がいいかも
あとGoogleなどで”Camel Urine”などで画像・動画検索するのも決してお勧めできません

これを読まれている方々も、各々の性に従ってラクダの尿を飲まれるとか塗るとかいうなら別に止めませんが、CDCの旅行者向けの感染症説明ホームーページではMERS(中東呼吸器症候群)感染の原因になりうるとも書かれていますので十分にご注意のうえお飲みください。

やっぱりやめといたほうがいいです。

というか一番最初にこのラクダの尿に効果があると考えた人間はおそらく筆者と同レベルの変態相当の変わり者だったのではないかと思いますがそこらへんどうなんでしょうかね。どう考えてもその端緒がいわゆる変態行為の一環であったとしか考えられないたまたま見つけたにしては理解に苦しむことが多いのが本件に関する複雑な感情の原因と思われます。

ただ冷静に考えてみると、植物由来で有効とされ医療または医薬原料に用いられているような成分、たとえば有機化学美術館での話題に挙がったイチイの葉に大量に含まれるバッカチンのような「医薬原料」や漢方薬に含まれるような「有効成分」も、もしかしたら植物の体内では排泄物に近い材料であるのかも(妄想)。そう考えると上記のような動物の尿内の材料に実は薬効を持つおどろくべき成分が含まれていないとも限らないのかもしれません。むしろ、見方によっては西洋科学がないがしろにしてしまっているフロンティアであるかもしれないのです。筆者は断固として遠慮しておきますが・・・

本件の動機

最近齢を重ねたせいか昔に見た変な漫画とか変な広告とかをよく思い出し、その絵が頭に浮かんで消えなくなることが極めて多いです。そのうち、寝ても覚めてもここんとこ毎朝浮かんでくるのが下記の漫画の中に描かれたシーンでした。

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聖武天皇。小学校のころ貪るように読んだ学研の漫画シリーズのうちの1冊で、トラウマ漫画家「ムロタニツネ象」氏が書いたトラウマ漫画でした。”とあるページ”を見たときは本当に恐ろしくて気持ち悪くて食欲を無くし、親に心配されるほど食事量が減った覚えがあります。今じゃそんな細かい気遣いも無用な年齢なのですが、色々と心へ相当のインパクトがありました。

で、本記事のタイトルに挙げたシーンとは、高僧 行基が小さい頃の聖武天皇と面識を持ったとするシーンでのこと。聖武天皇に迫っていた暴れ馬をうまく取り押さえた行基が馬の脚のハチに刺された部分に尿をかけて治してやる、というものだったはずです。それを見て以来ウン十年、「尿は本当にハチ刺されに効くのか」という疑問は常に頭の中にあったわけです。

今回調べた結果はいわゆる「民間療法」の域を出ず、今回調べたように有効成分となりそうな物質が少ないことからも、科学的な効果が乏しいということのようです。ただ尿自体が「(尿道がどうにかなってななければ)雑菌が入ってない水」なので、まぁ傷口が化膿しにくくなる可能性があることを考えると洗浄水としては有効なのではという印象を受けました。ただ昔はともかく、今は良好な水が手に入りますからよほど変態困った場合でないかぎり正直オススメ出来ない民間療法、という結論になると思います。

なお蛇足になりますが、どこかの文献で(忘れました・・・)「ハチの毒には酸性の物質が多いことを考えるとアンモニアが効くんじゃないか」と書いている人もいましたが細胞の中に打ち込まれた成分に中和作用がはたらくかどうか微妙ですし、だいいち上記で見た通り尿のpHは酸性気味ですしその類いの話はほとんど信用しない方がよさそうですね。

おわりに

考えてみれば昭和の後半はだいぶ色々とおおらかな時代でした。トルマリンだの惚れ薬だの忍術虎の巻などが漫画雑誌の最後に飛び交い、明らかに効かねえだろう栄養剤(薬?!)という怪しさバクハツの広告が恥ずかしげもなく載ってたのを思い出します。水素水のような雰囲気商売が蔓延してしまう現状と大して変わんねーとも思いますけど。結局、上に述べたハチ刺されに尿が効くというのもこうした(似非科学とまでは言いませんが)事実と伝聞がごっちゃになってしまい、そのインパクトから色々な人に信じられてしまった事項なのでしょう。

なお、最近で明らかになった尿にまつわる科学系の不思議な話としては(注:若干真偽不明なのですが)線虫の一種に尿内のガンに関連する物質を嗅ぎ分ける(九州大学理学研究院 広津研究室の研究内容概要:こちら)(プレスリリース:こちら)ことができるものがいて、また日立グループがその診断技術を利用した技術を開発していくとのプレスリリース(こちら)を出したことから色々と話題を呼びました。

癌に罹患している患者を尿の成分(?)により嗅ぎ分けることが
出来ると主張されている線虫”Caenorhabditis elegans”  英語版Wikipediaより引用

ただ、雰囲気商売の代表的存在のSTAP細胞について早くから正しい見解を示されていた難波先生がおっしゃられているように、この技術については線虫が嗅ぎ分けられる「その物質」が謎のままであることから若干不安を覚える状況です。なのですが、生命は上記で述べたように解明されていない事項の多い分野であると思います。本件で取り扱う「尿」にもまだ見極められていない物質が存在するのか、はたまた既存物質の「微妙な組み合わせ」を線虫が本当に嗅ぎ分けているのか、そうした確たる証拠を提示できるよう、引き続き関係諸氏のご活躍と科学的な分析結果を期待したいところであります。

最後になんでこんなに筆者が窒素系材料に傾倒するのかよく考えてみたのですが、最近その原体験ではないかと思うのが保育園児のとき、永井君(本名)に滑り台の上から小便を引っかけられ泣いて家に帰ったこと。それが未だに尿やアンモニアに固執する理由なのかなと感じており、筆者が窒素に拘る性癖奇妙な特質もなんとなくご理解いただけるのではないかと思い、なにとぞご容赦のうえ水に流して頂きたい所存でございます。尿だけに。

それでは今回はこんなところで。

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Tshozo

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メーカ開発経験者(電気)。56歳。コンピュータを電算機と呼ぶ程度の老人。クラウジウスの論文から化学の世界に入る。ショーペンハウアーが嫌い。

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