バルセロナ大学・Fernando Albericioらは、パラジウム触媒によるLate-Stage C(sp3)-H活性化法をペプチド基質に用いることで、ステープルペプチドライブラリーを簡便に構築する手法を開発した。論文中ではアミノ酸適合性、サイズ、ステープル長の影響などが調べられ、簡単な固相合成へも応用されている。Late-Stage C(sp3)-H変換によってペプチド大環状化を達成した世界初の例である。
“Stapled peptides by Late-Stage C(sp3)-H Activation”
Noisier, A. F. M.*; Garcia, J.; Ionut, I. A.; Albericio, F.* Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 314. DOI: 10.1002/anie.201608648
問題設定と解決した点
ステープルペプチドは、医薬開発の観点で注目を集める化合物群である。しかしながら、側鎖ステープル化を実現する手法はごく限られており、利用可能なステープルモチーフの構造的多様性には未だ制限が大きい。Late-Stage C-H変換によってペプチドを標的とした変換が行えれば有用だが、大環状構造を与える先例のほとんどは、フェニルアラニン側鎖やトリプトファン側鎖を標的とするC(sp2)-H結合変換[1]に依拠していた。
今回著者らは、N末端アラニンの側鎖メチル基と数残基先のヨードフェニルアラニン側鎖を結合させ、ステープルペプチドを合成する方法論の開発に成功した。
技術と手法のキモ
Yuらによって開発されたパラジウム触媒を用いるペプチドN末端C(sp3)-Hアリール化反応[2]を架橋環化反応へと応用した扱いとなる。主張の有効性検証
①基質一般性
汎用されるアミノ酸の保護基(Boc、Trt、Pbfなど)は軒並み反応条件に耐える。N末端のアラニンが反応するが、収率は隣接アミノ酸の種類に大きく依存する。例えバリン、ロイシンは基質の溶解性に難があるため変換されない。プロリン、Trt-システインもno reaction。Trt-ヒスチジンはmessy reaction。
N末端アミノ酸は、Ala、Aibのみ適用がある。ヨードフェニルアラニン側は基本的にメタ置換体のみ適用がある。
②固相合成
収率は低いものの、固相合成にも使用することができる。Phth基を除去した後、ペプチド鎖をさらに伸長させることができる。N末端での反応だが実質N末以外でのステープル化にも使うことができる。
次に読むべき論文は?
- C(sp2)-H結合変換によってステープル化を行っている先行論文[1]
- 環状ペプチド医薬についてまとめた総説[3]
参考文献
- (a) Mendive-Tapia, L.; Preciado, S.; Garcia, J.; Ramon, R.; Kielland, n.; Albericio, F.; Lavilla, R. Nat. Commun. 2015, 6, 7160. doi:10.1038/ncomms8160 (b) Ruiz-Rodriguez, J.; Albericio, F.; Rodolfo, L. Chem. Eur. J. 2010, 16, 1124. DOI: 10.1002/chem.200902676
- Gong, W.; Zhang, G.; Liu, T.; Giri, R.; Yu, J.-Q. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 16940. DOI: 10.1021/ja510233h
- Santos, G. B.; Ganesan, A.; Emery, F. S. ChemMedChem 2016, 11, 2245. DOI: 10.1002/cmdc.201600288