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相撲と化学の意外な関係(?)

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さあいよいよ迫ってきた大相撲3月場所。今場所は長らく出ていなかった日本出身横綱を迎える場所ということで、好角家の間では注目の場所となっています。

その新横綱 稀勢の里 寛関をきっかけに、相撲と化学の関係について調べてみました。

 

が、ちょっと突拍子の無い話すぎて流石に無理があり、せいぜい関係がありそうなのは土俵にまく塩くらい。いくらなんでも話しを広げられないので、思いついたのが、元素名をもった力士の四股名でした。

新横綱の四股名は稀な勢いで出世するというものですが、その読みから一部のファン(?)からはキセノンと呼ばれています。横綱がかつて空気を読まない取り組みをする力士などという誹謗中傷を受けていて、それを茶化したものかもしれません。いずれにしても、本人の預かり知らないところで横綱と化学が繋がっていたんですね。

SUMO(Small Ubiquitin-like Modifier)タンパク質は関係ないですしね・・

さて、本題の調査結果に行きましょう。以前、元素名を苗字にお持ちの方について調べてみました。そこでは様々な元素が登場したのですが、やはり今回も始めはからいきましょう。

四股名 読み 最高位 主な時代 備考
金剛 正裕 こんごう 関脇 昭和 年寄二所ノ関
金乃花 武夫 かねのはな 小結 昭和
金開山 龍 きんかいやま 前頭6 平成 年寄関ノ戸 金の海の四股名もあり
金親 和憲 かねちか 十両2 平成 年寄宮城野
玉金剛 拓磨 たまこんごう 幕下 現役
金碇 (かないかり), 金梃(かなてこ) , 金槌(かなづち), 金引(かねひき), 金鱗(かなうろこ), 金湊(かねみなと)など

記憶に新しいところでは、関脇も勤めた昭和の力士、金剛(以下敬称略)や、平成にも金開山といったある意味渋い力士がいます。また、問題を起こしましたが元宮城野親方としてもしられる金親もご記憶の方は多いのではないかと思います。少し古い時代でしたら小結も勤めた金乃花、逆に現役力士では玉金剛が関取目指しての地位ですね。金ノ花の四股名は何人かが使っています。江戸くらいまで遡ると金は大豊作で、バラエティに富んだ四股名の力士が多数いました。書き切れないのでまとめてあります。ご了承下さい。

どストレートにという力士がいましたが、これは初の韓国人関取である後の春日王の本名です。このように本名に金が入る苗字で、そのまま四股名になっている力士は、金崎(元大関五ツ島)、金島(元大関前の山)、金城(元関脇栃光)、金谷(元関脇栃赤城)、金尾(元小結三杉里)などたくさんいました。

さて、金鉱脈はなかなかでしたが、ここからが苦難の道。お次のはたった一人、現在三段目の銀星山のみでした。希少なので是非出世して欲しいですね!

お次のもまた難儀しまして、江戸まで遡る必要がありました。大阪相撲の小分銅と、京都の幕下荒分銅、後に若藤と改める分銅がいました。由来は不明ですが、きっと重さを計るあの分銅からなんでしょうね。

四股名 読み 最高位 主な時代 備考
銀星山 峰大 ぎんせいざん 三段目75 現役
小分銅 金左衛門 こぶんどう 前頭4 江戸 大阪
分銅 松五郎 ふんどう 三段目 江戸 後の若藤恒右衛門
荒分銅 又五郎 あらふんどう 幕下 江戸 京都

金銀銅ときたら、次は。こちらは強いイメージがあるためか、特に古い時代にたくさんいました。最高位は大関の鉄石。しかしこちらはいわゆる看板大関で、初土俵が大関で実績はほとんどありません。名力士としては後の大鳴戸親方、高鉄山。この四股名は大鳴戸親方の弟子で元小結板井が一時名乗っていたことがあります(ただし高鐵山)。

珍しいところでは明治の幕内力士に鉄甲南蛮鉄がいました。その他にも江戸時代を中心に多くの鉄を含有した四股名の力士がいました。

四股名 読み 最高位 主な時代 備考
鉄石 城五郎 てついし 大関 江戸 看板大関
高鉄山 豊也 こうてつやま 関脇 昭和 年寄大鳴門
鉄ヶ嶋 儀右エ門 てつがしま 関脇 江戸
鉄甲 宗五郎 てつかぶと 前頭15 明治 大阪
南蛮鉄 友吉 なんばんてつ 前頭 明治 大阪
鉄ヶ濱 三之助 てつがはま 前頭14 大正
鉄ヶ嶽 (てつがたけ), 鉄山(てつやま) , 霧鉄(むてつ), 若高鉄(わかこうてつ)など

他の金属元素は残念ながら発見できませんでした。唯一、平成の三段目力士、和歌天佑 文錫 (わかてんゆう ぶんせき)の名にの字が!どういう経緯でお名前を付けたのか気になる力士ですね。鉛なんていそうな気がしたのですが、昭和初期の幕内力士、常ノ山(つねのやま)が、新弟子検査に通るために、まわしに鉛を仕込んで体重を誤魔化したというエピソードが見つかるだけでした。元小結舞の海が身長を誤魔化すために頭にシリコンを埋め込んだエピソードに通じるものがありますね。

元素名からは外れてしまいますが、三段目優勝経験もある、(はがね)の他、八鋼山(はっこうやま)や、江戸時代の小結(あらがね)といった、シリーズ(?)の力士がいました。

非金属元素を調べたところがヒット。平成には三段目に若念燐がいました。

四股名 読み 最高位 主な時代 備考
若念燐 英治 じゃくねんりん 三段目51 平成
次亜燐 金藏 じありん 十両 明治 真偽を確認できず
次亜燐 神太郎 じありん 序二段 明治 真偽を確認できず

また、詳細は調べられませんでしたので、真偽が確認できないのですが、明治には次亜燐がいたという記述を見つけることができました。思いっきり化合物名みたいな四股名ですが、実際そうでして、大阪の調剤師である小西久兵衛が、販売を始めた次亜リン酸カルシウムを成分に含む、滋養強壮剤として販売されていた次亜燐を元にしている可能性があります。ちなみにこの小西久兵衛は後に小西薬剤学校を設立するなどしています(現在のあべの翔学高等学校の系譜です)。この次亜燐の広告にはしっかりと力士が使われていました。

次亜燐の広告(昭和2年4月12日小樽新聞紙面より)

元素の漢字そのものを含む四股名は以上で打ち止めでして、残る可能性は元素名から「素」を除いたものになります。は有名どころでは元関脇水戸泉をはじめそれこそ沢山書ききれないほどいましたので省略させていただきます。流石に臭とか沃は見つかりませんでしたが、は何人かいました。昨年初土俵を踏んだばかりの朝塩本は本名の塩本から。江戸時代には塩風や、大関塩見山がいました。朝潮は有名ですが字が違いますね。

他には、硼、炭、窒、酸、弗、珪、砒があろうかと思いますが、探し出すことはできませんでした。もしご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントをお願いいたします。

最後に一人面白い四股名を。化学に欠かすことができない機器名である、天秤 梅五郎(てんびん)が江戸時代の関脇(大山として)にいたようです。

思ったより面白いネタが見つからず申し訳ございません。マニアックなネタに最後までお付き合いいただきありがとうございました。こんな視点でも大相撲観戦を益々お楽しみいただければ幸いです。これにて千秋楽にござります。

 

参考文献および参考サイト

京須利敏, 水野尚文編著, 平成25年版大相撲力士名鑑, 共同通信社

飯田昭一編, 史料集成江戸時代相撲名鑑, 日外アソシエーツ

相撲レファレンス

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有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

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