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化学者のつぶやき

音声入力でケムステ記事を書いてみた

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仕事の効率を上げないといよいよ(体調的にも精神的にも)追い付かなくなりつつあるcosineです。皆さんこんにちは。

以前よりケムステでは、化学研究お役立ち情報処理術・「化学研究ライフハック」 シリーズを提供してきています(まとめはこちら)。このような工夫を徹底する中で情報取得/処理速度は確かに上がるのですが、文章執筆速度(アウトプット効率)の向上には限界があると感じてました。

例えばブログ記事を書くのであれば、当然タッチタイピングを使います。考えるよりも書き出す方に時間がかかるので、ブログ記事執筆の生産性上限は、タイピング速度でかなりの部分が規定されます(画像作成や文献調査などは除く)。

これを文章執筆一般に当てはまる原則ととらえ、高速タッチタイピングを身につけることが、研究者としての生産性向上に直結するとの主旨で記事(初級編中級編上級編)を書いたこともありました

しかしさらに試行錯誤をすすめることで、全く異なる角度から革命を起こせる可能性を見出せました。それが、Google音声入力の活用です!

実際にケムステ記事を書いてみた

やることは簡単で、Google Chrome上で Googleドキュメントを開き、音声入力するだけです。詳しい使用法はこちらの記事によくまとまっているので参照ください。

Googleドキュメント+音声入力でケムステ記事を下書き中

分かりやすい比較例として、こちらのケムステ記事を抜粋入力してみました(115字)。手打ち入力と音声で速度比較した結果を示します。ご覧の通り、赤字箇所(誤字・句読点欠如)以外は、ほとんど完璧に出力されます

タッチタイピング(手打ち):37秒

マツタケオールはその他のキノコにも多く含まれ、マツタケオールのみが松茸の香りの要素ではない。松茸の香りを特徴付けるものは桂皮酸メチルであることも明らかとなっており、桂皮酸メチルは松茸の香気成分の中で二番目に多く存在する成分である。

Google音声入力:25秒

マツタケオールはその他のキノコにも多く含まマツタケオールのみが松茸の代わりの要素ではな松茸の香りを特徴づけるものは桂皮酸メチルであることも明らかとなってお桂皮酸メチルは松茸の香気成分の中で2番目に多く存在する成分であ

ご自身で一度試して頂ければ分かると思いますが、この文を「日本語変換込み・37秒」で手打ちするには、そこそこハイレベルなタイピングスキルが必要です(e-typingの腕試しを筆者がやったら424点と出ました)。加えて、日本語変換ソフトが化学文書に最適化されている必要もあるでしょう(筆者はATOKで化学文書を常に打っています)。これと同じパフォーマンスを常時保ちつつ手入力すること自体、大抵の方にとっては相当ハードルが高いのではないでしょうか。

しかし音声入力を使えば、最適化済みタイパーと比べても遥かに短時間で文章が打ててしまうのです。

もちろん細々した修正は仕様上どうしても必要になり、勘定すると手打ちより長くかかってしまうケースもあります。とはいえ打ち直しや推敲による時間ロスは手打ちにも付随しますから、やはり音声入力のメリットは大きいと思われます。

Google音声入力のメリット

こういった観点も含め、Google音声入力には数々のメリットを見いだせます。以下に羅列してみました。

システムが全て無料(ヘッドセットは別途必要)

この辺りはさすが Google 様としか言えませんね。Macであれば標準搭載のエンジンもなかなか使えるようです。Windows搭載のエンジンはあまりスマートではなく、変換精度も良くないので実用的とは言い難いです。

ヘッドセットは別途購入が必要です。筆者は評判の良い下記製品を一つ買いました。Skypeや電話などにも使えますので、持ってて困るものでもありません。

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高速タイピング訓練が必要ない

マイクに向かって喋るだけなので、誰でもほぼ同じ速度で入力できます。これは実に馬鹿にならないメリットで、タイピングの苦手な人でも、文章を楽に書ける仕組みが整いつつあるのです。ブログ記事の下書きは勿論、ある程度まとまった分量を要請する寄稿文・学会要旨・学位論文の作成などにも適しているのではないでしょうか。

漢字かな交じり文、特に長文入力が快適

Google 音声入力は、おそらく皆さんが想像しているよりずっと正確です。一発でほぼ完成品の文章が出てくる様子には感動すら覚えます。精度が低い日本語入力ソフトを使って一喜一憂するぐらいなら、音声入力品をコピペして片付けてしまう方が遥かにスマートです。

口頭入力と手入力に負担を分散できるため、疲れにくい

隠れたメリットですが地味に効きます。特に長文入力作業が多い方ほど価値があるでしょう。腱鞘炎持ちの方には特におすすめです。

フリーハンドで入力できる

これも地味ながら大きなメリットです。キーボード・マウスメインの実務作業を邪魔しないからです。ですのでスタンドマイクではなく、ヘッドセットでの入力がやはりお薦めです。

今回ついでに、Google音声検索ができるChromeプラグイン(GooNowも導入しました。ショートカットキー(Ctrl+M)で音声検索を呼び出し、そのまま口頭でGoogle検索できるため、何かと楽ちんです。

デメリット・要改善点

当然ながらこの画期的ツールも万能ではなく、今のところ制限があります。目だった点は以下の通り。

Chrome+Google ドキュメント限定品

これがWin環境における一番のデメリットでしょう。ソフトを選ばず使えるGoogle日本語音声入力の出現を待ち望むばかりです。 他ソフトでの文章執筆に使いたい場合、専用の有料音声入力ソフトが必要になります。

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とはいえ、フォーマットを問わない文章でよければ、 Google ドキュメントは十分すぎるほど便利に使えます。少なくともケムステ記事の下書き用途には文句の付けようがありません(落ちない、クラウド、自動保存されるなどの点も嬉しいです)。

句読点や括弧は音声入力できない

この縛りのため、タイピングとの併用が必須となります。しかしそれでも、長文全てを手打ちすることに比べて、作業効率は上がると思います。ただこれは英語版では実装済みなので、近く日本語版にも実装されることでしょう。

日本語と英語が混ざった文章は面倒

音声入力できるのは日本語もしくは英語のどちらかになります。予め言語を選択しておかないと正しく認識できないからです。 ですので日英混合文を入力したいのであれば、英文タイピングと併用する必要があります。化学研究絡みの文なんかだとよくありそうなので、うまく役割分担する必要がありそうです。

おわりに

以上、Google音声入力を実際やってみた結果と感想を書いて見ました。特に長文タイピングに抵抗のある方におすすめのやり方だと思います。

実に今回の記事も、ほとんどを音声入力で下書きし、細かなところを手打ち修正する方式で書きあげました。これほどの長文ですが、いつもより全然疲れがないのは素直に凄いことだ感じます。是非皆さんも一度、凄さを体験してみてください。

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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