水溶液中のカチオンやアニオンの濃度を測定することができるイオンクロマトグラフィー。
先月スイスの分析機器メーカー、メトロームより新しいイオンクロマトグラフ 「Eco IC」Cが新発売されました。本記事ではこの製品について簡単に紹介したいと思います。
イオンクロマトグラフィー(IC)とは
一言で言うなら、HPLCの無機物バージョンです。HPLCは、溶媒に溶けた有機物をシリカゲルなどが詰まったカラムに通して分離し、UV検出器などによってデータとして出力し定量します。イオンクロマトグラフィーも同じで、イオン交換樹脂などのカラムを通してイオンを分離しイオン伝導度によってデータとして出力し定量します。
どのような場面でICが役に立つかというと、例えば水溶液中のカチオンとアニオンの定量に使えます、特に元素を調べるICP発光分析とは異なりイオンの定量を行う機器なので硝酸や硝酸イオンなども定量できます。
イオンクロマトグラフ Eco ICの特徴
ソフトウェア、サプレッサ、検出器が装備されて210万円
なんといってもお手頃な価格が一つの特徴だと思います。、スタンダードなICの価格の半額から三分の一程度です。筆者は、高校生の時に光触媒に関する研究を行っていましたが、分析がとても大変だった記憶があり、その時にこのような機器があったら楽だったと思います。この程度の価格なら予算が少ない研究組織でも購入は不可能ではないと思います。「すべての人にイオンクロマトグラフを」というキャッチコピーをあげているだけありますね。
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素までのハロゲン元素の分析にICP発光分析を使用または、委託している場合があるかもしれませんが、ICPは装置が高価で、たくさんのアルゴンガスを使いランニングコストも高いため、用途によっては、このICを購入したほうが安くつくかもしれません。数十ppbオーダーの検出限界なのでたいていの微量分析には十分なレベルだと思います。
低価格な機器には、機器の故障から予防する安全装置が甘い場合がありますが、この装置には、流量チェックと背圧(バックプレッシャー)チェック機能で流路の閉塞や異常を監視し、機器やカラムへのダメージのリスクを低減できます。
ソフトウェアは16言語に対応
英語、ドイツ語、中国語、韓国語、スペイン語、フランス語、日本語、ロシア語などに制御ソフトウェアが対応しているため、学部生の学生でも留学生でもすぐに使いこなせるようになると思います。またソフトウウェアのインターフェイスは、機器メーカーによってはこだわりが強く慣れるまでに時間がかかるものもありますが、このソフトのインターフェイスはわかりやすいほうだと思います。もうひとつのキャッチコピー「誰もが使えるイオンクロマトグラフィー」のとおりです。
オートサンプラー付きでも320万円
32検体を同時に測定できるオートサンプラーをつけても320万円と非常に安価です。
サイズがコンパクト
サイズがW/H/D=26/47/36 cmとノートを広げたほどの場所しかとりません。オートサンプラーのサイズも、W/H/D=26/47/43 cmと非常にコンパクトです。
このように、イオンクロマトグラフィーのエントリーモデルとして新発売したイオンクロマトグラフ Eco ICは、とても有用な機器であると思います。
関連リンク
- ECO IC: メトロームジャパンの紹介サイト
- パンフレット: Eco IC – 全ての人のためのイオンクロマトグラフィー (PDFファイル)