Eineです。化学を学ぶ人間が最初に直面する課題、それは元素周期表の暗記です。高校化学過程では第1元素の水素から第20元素のカルシウムあたりまで、名前と周期表での場所を覚えさせられますよね。丸暗記するのは大変ですが、語呂合わせなども数多く開発されているので、そこまで苦労することでもないと思います。
(ちなみに、ケムステでは名前の由来や性質などについて、各元素ごとに『元素の基本と仕組み』のシリーズで纏められていますので、興味のある方はご一読ください。)
本題
さて、今回は元素名と中国語のお話です。中国語は、漢字だけで構成される言語です。例えば、「私の友達の成績は良い」を中国語にすると、「我的朋友的成绩很好」になります。日本人なら、読むこと自体はなんとなく出来てしまいますよね?読み書きに関してならば、日本人にとってハードルの低い言語だと思います。(今回は台湾や香港で用いられている繁体字を使わず、大陸中国で用いられている簡体字で表記します。)
実際、義務教育を終えた日本人であれば、現代中国語の6割程度は読めると思います。なぜならば、「友達」と「朋友」や、「成績」と「成绩」のように、単語がほとんど同じ漢字で表されるからです。中華圏で中国語が話せなくて困った時は、とりあえず筆談をしましょう。「学校」も「学校」ですし、「化学」も「化学」、「人間」も「人间」です。特別なアルファベットを準備する必要はありません。漢字を使えば同じ意味で通じるのです。発音は全く異なるため注意が必要なのですが。(ちなみに、1つの漢字に1つの音が割り当てられています。)
では元素名はどうでしょうか。当然ながら元素名は日本語や英語など、それぞれの言語で異なる名前を持っています。例えば、Hは日本語では「水素」ですが、英語では「Hydrogen」ですね。同様に、中国語ではどうなるのでしょうか。
実は、中国語では「氢(qing1)」となります。あれ?「水素」と書けば伝わるのでは?と思いませんでしたか?(私も初めはそう思っていました。)
この調子で、Heは「氦(hai4)」Oは「氧(yang3)」、Naは「钠(na4)」です。中国語は元素記号について、日本語とは全く異なる漢字を用いているんです。
中国語版の元素周期表がこちらです。
すごいですね。1つの元素は1つの漢字で表しています。加えて、常温で気体のものは「气」の旁(つくり)を持っていたり、一般的に金属のものは金偏の旁をもっていたりしており、統一感があります。表語文字としての漢字らしさが出ていますね。(漢字を忘れてしまってテストで困った時は、とりあえず旁だけしっかり書いて、細かい所はグチャグチャにして書くことで、採点者の目を欺いたりできます!)
とはいえ、やっぱりたくさんの漢字を覚えるのって大変です。読み方さえ覚えていればいくらでも誤魔化せるという意味で、日本語の方が便利な面も多いですよね。ああでも、「鉄」や「ヘリウム」みたいに、元素としてのFeやHeと、単体としての鉄やヘリウムと区別がし辛かったりする面もあって困ったりするし、やっぱり日本語での元素の表現方法ってあんまりうまい方法とはいえないような気もするような。でも中国語だと1漢字1音声で、結局発音だけ聞いてもそれが同じ発音の別のものを指していたりしてややこしいんだよなあ。これが実際に中国で化学を学んでいる筆者の最近の悩みです。
結論
元素記号とIUPAC名で話そう。
補足
多くの漢字を覚えるのは大変で、読み方さえ覚えていればいくらでも誤魔化せるという意味で、日本語の方が便利な面も多いというのは事実であり、識字率や就学率を上げるために中国政府が考えている大きな問題であったりもします。その方策の1つが簡体字であったりします。
日本語と中国語で同じ漢字を用いたりする単語などには、日本と中国の関係の歴史的な事情が絡んでいたりして面白いのですが、割愛しました。実は、現代日本語の中に中国語の古い単語が混ざって(というより元々それを軸にして構成された)いるように、現代中国語の中に明治時代の頃などの日本語が多く混入していたりします。興味のある方は調べてみてください。