[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

徒然なるままにセンター試験を解いてみた

[スポンサーリンク]

今月はセンター試験がありましたね。大雪の影響などを受けた受験生もいるかもしれません。

実は筆者、学部生時代は予備校で採点のアルバイトをしていたので、受験化学には比較的自信がありました。受験生時代にはセンター問題であれば大体10分くらいでほぼ満点、という余裕もありました。修士時代は「センター試験=学校の立ち入りに申請が必要」な程度の印象たるイベントでした。

今に至るまで久しく問題を解いていませんでしたが、過去記事(その1その2その3)に触発され、今年久しぶりにセンター化学を解いてみました。せっかくなので今回は、問題の感想を含めながら筆者の専門である有機化学にフォーカスした内容を記したいと思います。

問題の印象

まず第一印象ですが・・・

問題形式が変わっている・・・だと!?

驚いたのは選択問題なるものが出現していたことです。筆者が受験したのは2010年(実に7年も前)でしたが、どうやら2015年に新課程になっていたようです。
こんな問題あったな~なんて思い出しながら解きましたが、しばらく解いていない間に解くスピードが遅くなっている自分にもまたびっくり・・・。
各論の感想としては、最初の大問での分子結晶、イオン結晶などの問題はいつも通りだなという印象。
無機化学に関しての問題は、今年はイオンの析出系問題ではないのか、計算多いし時間かかるな面倒くさいなと感じました。
さあいよいよ有機化学です。あれ、有機だよね?矢印考えなくない?計算あるし、、、
久しぶりに解いてみたら高校までに勉強してきた”受験”有機化学は、知識と呼ぶにはほど遠い情報だったのだな・・・と感じました。

センター問題って実は難しい?

(東進解答速報のページより転載)

久しぶりに解いて、基礎的受験問題の見え方が筆者の中で変わってきたので、ご紹介させていただきます。

センター試験では反応の巻矢印を解答に書くことはありませんが、みなさんは反応機構を正しく書けますでしょうか?
実際、ひとつひとつは大学院入試にも出題されうる基礎問題となっていて、意外に侮れません(解答するだけならば即答かもしれませんが)。
機構忘れてしまった、補足情報なども合わせて知りたいって方は、どこで学べば良いでしょうか。
安心して下さい、ケムステ記事にありますよ(ネタが古いのはご愛敬w)。
まず、化合物Aですが、ベンゼンのスルホン化です。芳香族求電子置換機構(SEAr)で反応が進行します。それがアルカリ融解により化合物B、ナトリウムフェノキシドとなります。また、濃硝酸と濃硫酸との混酸をベンゼンに作用させるとベンゼンがニトロ化されます。こちらは芳香族化合物のニトロ化をご覧下さい。
芳香族ニトロ化合物からアミンへと還元するのは芳香族アミンを合成する古くからの手段であり、ベシャンプ還元といいます。今回は鉄ではなく、スズを用いていますね。
アミンをジアゾ化合物へと変換し塩化ベンゼンジアゾニウムを得た後、ジアゾカップリング反応によりp-ヒドロキシアゾベンゼンの合成が完了します。
いかがでしょう。センター化学というと高校化学というイメージがありますが、実は有機化学には大学で学習する反応も多く含まれております(他にはコルベ-シュミット反応なども挙げられます)。高校を卒業してからしばらく経ってから見直すと、意外なものが見えてくるかもしれません。

最後に

以上、久しぶりにセンター化学を解いてみて、少し偉そうな解説混じりの内容を書かせていただきました。
えっ、じゃあお前の点数何点なんだって?
すみません、72点でした・・・・。ゆ、ゆうきかがくはできたのです。そもそも塩水なんて電気分解しないし?クロロ化されたブタンの何個クロロ化されたかなんてMSとNMRとるでしょ普通、しかもそれを燃焼させるとか破壊分析じゃん今の時代非破壊ぶn・・・(すみません、文句多いですね)
・・・はい、筆者も勉強中の身。これからも精進して参りたいと思います。

関連書籍

[amazonjs asin=”4325206515″ locale=”JP” title=”センター試験過去問研究 化学 (2017年版センター赤本シリーズ)”][amazonjs asin=”4807906577″ locale=”JP” title=”有機化学演習―基本から大学院入試まで”][amazonjs asin=”4759810455″ locale=”JP” title=”演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで”]

関連リンク

gladsaxe

投稿者の記事一覧

コアスタッフで有りながらケムステのファンの一人。薬理化合物の合成・天然物の全合成・反応開発・計算化学を扱っているしがない助教です。学生だったのがもう教員も数年目になってしまいました。時間は早い。。。

関連記事

  1. 再生医療関連技術ーChemical Times特集より
  2. 【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START you…
  3. 地方の光る化学商社~長瀬産業殿~
  4. 最近の有機化学論文2
  5. それは夢から始まったーベンゼンの構造提唱から150年
  6. 女性化学賞と私の歩み【世界化学年 女性化学賞受賞 特別イベント】…
  7. 表裏二面性をもつ「ヤヌス型分子」の合成
  8. 化学者と不妊治療

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【速報】2015年ノーベル化学賞は「DNA修復機構の解明」に!
  2. マテリアルズインフォマティクスでリチウムイオン電池の有機電極材料を探索する
  3. 奈良坂・プラサード還元 Narasaka-Prasad Reduction
  4. ポンコツ博士の海外奮闘録⑤ 〜博士,アメ飯を食す。バーガー編〜
  5. 進撃のタイプウェル
  6. インタビューリンクー住化廣瀬社長、旭化成藤原社長
  7. 「イカ」 と合成高分子の複合により耐破壊性ハイドロゲルを開発!
  8. 「引っ張って」光学分割
  9. 湾曲したパラフェニレンで繋がれたジラジカルの挙動  〜湾曲効果による電子スピン状態の変化と特異性〜
  10. カリコ― カタリン Karikó Katalin

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年1月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP