皆様あけましておめでとうございます。今年も化学三昧のケムステで皆様に話題を提供していきたいと思います。昨年より忙しさにかまけて記事をなかなかお届けできずにおりますが、ご支援のほどよろしくお願いいたします。
さて、今年2017年は化学の世界で何が起こるんでしょうか。予想もできませんが、一年の最初に過去を振り返ってみるのもいいのではないかと思います。50年前、100年前と遡って調べてみたのですが、なかなかしっくりくるアニバーサリーはないように思えました。第一次世界大戦が世界に暗い影を落としているような時期ですので仕方ないんですかね。ノーベル化学賞も100年前の1917年は該当無しでした。ちなみに1916年も該当無しで、二年連続でした。
しかし一方で、100年前の1917年は後のノーベル化学賞受賞者が比較的多数生まれている大豊作の年です。受賞年で並べてみますと以下のようになります。
化学者 | 受賞年 | 受賞対象 |
ジョン・ケンドリュー (John Cowdery Kendrew) 1917年3月24日 – 1997年8月23日 | 1962年 | 球状タンパク質の構造研究 |
ロバート・ウッドワード (Robert Burns Woodward) 1917年4月10日 – 1979年7月8日 | 1965年 | 有機合成化学に対する顕著な貢献 |
イリヤ・プリゴジン (Ilya Prigogine) 1917年1月12日 – 2003年5月28日 | 1977年 | 非平衡熱力学、特に散逸構造の研究 |
ハーバート・ハウプトマン (Herbert Aaron Hauptman) 1917年2月14日 – 2011年10月23日 | 1985年 | 結晶構造を直接決定する方法の確立 |
ウィリアム・ノールズ (William Standish Knowles) 1917年6月1日 – 2012年6月13日 | 2001年 | 不斉触媒による水素化反応の研究 |
ジョン・フェン (John Bennett Fenn) 1917年6月15日 – 2010年12月10日 | 2002年 | 生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発(生体高分子の質量分析法のための穏和な脱離イオン化法の開発) |
最年少はジョン・ケンドリューでなんと45才での受賞です。ちなみに筆者は今年45才なのですが、まあストックホルムから電話がかかってくる気はしないです・・・
最年長はジョン・フェンで85才での受賞。長生きはするもんなんですねえ。ちなみに受賞理由になった論文は彼の若いときの仕事ではなく、70才を超えた時代のものだというのはかなりの驚きですね。衰えず生涯科学に情熱を注ぐ姿勢は見習いたいと思います。
筆者としてはロバート・ウッドワードと関連する分野に身を置いていますので、感慨深いものがあります。全ての方が故人となって100才は皆さん迎えていらっしゃいませんが、偉大な化学者たちの生誕100年ということを胸に、今年も化学の発展に尽くしていきたいと思います。
ボストンを訪れる機会がありましたら、ウッドワードのお墓参りはいかがでしょうか?ご無沙汰の化学者墓マイラーシリーズの前回はこちら
マップ
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