[スポンサーリンク]

一般的な話題

オーストラリア国境警備で大活躍の”あの”機器

[スポンサーリンク]

シドニー国際空港では税関職員が一人の怪しい男に目を付けた。(中略)彼の持ち物の付着物からなんとコカインの反応が! ピロ ピロ ピロ(;゚Д゚) 今回は、とある番組で大活躍の”あの”機器について紹介します。

Border Security:Australia’s Front Line

とある番組は、オーストラリアの番組、Border Security:Australia’s Front Lineを日本向けに編集・翻訳したものです。舞台は税関のチェックが厳しいオーストラリアの国際空港で、怪しい旅行者にスポットを当てて荷物をチェックしたり身体検査をしたりし、最終的に白か黒までの結論を出すところまでが番組の流れです。荷物や服をチェックする際に、粉を集めてとある機器にセットすると、薬物が含まれているか簡単にチェックでき薬物反応があるとアラームが鳴ります。私はこの番組がとても好きなのでこの分析機器が気になって調べてみました。

Streetlab

2004_in_street-lab_l-sliced_0

機器の写真

 

一台目は、「Streetlab」家電から飛行機のエンジンまで製造しているGE社製の分析機器です。番組では白い粉が出てきたら、袋に入れてこのセットし、同定を行っています。商品サイトによるとラマンスペクトルを測定して、内部のデータベースと照合し爆発物や薬物かどうか判定しているようです。

袋に入った粉体でも液体でも測定でき、クリアなスペクトルが得られています。参考価格は、350万円と比較的安価な部類のラマン分光計だと考えられます。GE他、日本メーカーではハンディタイプのラマン分光計も多数販売していて、様々な場所で活躍できるようです。

 

IONSCAN 500DT

4

2台目は「IONSCAN 500DT」化学・生物兵器などの検出機器を製造しているSmiths detection社の製品です。専用のプローブを怪しいところにこすりつけた後、機器にセットすると分析され、薬物が検出されるとアラームが鳴ります。

5

プローブ

6

アラーム画面

測定原理は、イオン移動度分光法と呼ばれるもので、高温でガス化されたサンプルがイオン化されます。その後、MS部に導入されるとイオンが移動しますが、その移動速度は分子によって異なるため分子を同定することができるようです。イオン化には、ニッケル63のベータ線を利用し、ソフトなイオン化を行っています。爆発物(主にニトロ化合物や過酸化物)の探索にはアニオンを、薬物の探索にはカチオンを検出するため、二つの検出器がこの機器には装備されています。爆発物はピコグラムレベルで、薬物はサブナノグラムレベルで検出できるため、非常に少量でも見逃しません。

7

測定原理図

テレビ番組では面白おかしくなっていますが、薬物に関わってはいけません。上記のような最新の機器があなたを待ち構えています。

関連リンク

関連書籍

[amazonjs asin=”4887189125″ locale=”JP” title=”乱用薬物密造の化学 完全版”] [amazonjs asin=”4061569015″ locale=”JP” title=”ラマン分光法 (分光法シリーズ)”]

 

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. SFTSのはなし ~マダニとその最新情報 後編~
  2. 1と2の中間のハナシ
  3. 低分子の3次元構造が簡単にわかる!MicroEDによる結晶構造解…
  4. 酵素触媒によるアルケンのアンチマルコフニコフ酸化
  5. ミツバチに付くダニに効く化学物質の研究開発のはなし
  6. 有機合成化学協会誌2023年8月号:フェノール-カルベン不斉配位…
  7. エチレンをつかまえて
  8. サイエンスアゴラ2015総括

注目情報

ピックアップ記事

  1. 多孔質ガス貯蔵のジレンマを打ち破った MOF –質量でもよし、体積でもよし–
  2. 火力発電所排気ガスや空気から尿素誘導体の直接合成に成功
  3. A-Phosパラジウム錯体
  4. 「化学五輪」準備組織が発足、委員長に野依氏
  5. 熱活性化遅延蛍光 Thermally Activated Delayed Fluorescence (TADF)
  6. ガラス工房にお邪魔してみたー匠の技から試験管制作体験までー
  7. 研究助成金&海外留学補助金募集:公益財団法人アステラス病態代謝研究会
  8. 免疫(第6版): からだを護る不思議なしくみ
  9. アメリカ大学院留学:卒業まであと一歩!プロポーザル試験
  10. 化学研究ライフハック :RSSリーダーで新着情報をチェック!2015年版

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP