[スポンサーリンク]

一般的な話題

標準物質ーChemical Times特集より

[スポンサーリンク]

標準物質(RM: Reference Material)といったら何を思い浮かべるでしょうか?私は、NMRで定量を行う際の内標(内標準物質)を思い浮かべました。

標準物質とは「1つ以上の規定特性について、十分均質、かつ、安定であり、測定プロセスでの使用を目的に適するように作製された物質」(引用:ISOGuide 35)

とされています。分析機器の校正や測定に欠かせないものです。最近の一般的にも知られる分析関係の話題としては豊洲市場の移転をめぐる環境測定の結果があります。汚染の濃度が問題があるかないかについてはここでは述べないものとして、それらの測定にも使われるのが標準物質。近年の分析機器の発達によって、その精度は格段にあがっています。しかし、標準物質がいまいちであるといくら分析機器がよくても安定した結果を与えてくれません。そのため高純度の標準物質をつかった基準が必要となります。

今回、関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」の特集「標準物質」(2016年No.4)に掲載された4つの記事を紹介したいと思います。

新たな標準物質の整備と利用促進に関する取組みについて

数値的なデータを測定するときは、「ものさし」となる計量標準が必要となります。化学では上述したように標準物質。記事では、新しい標準物質がどのように生まれてくるのか?また、標樹物質関連の情報を入手する方法について紹介しています。内容は規定に関するものが多く、化学研究の目からみれば難解であり、正直言ってあまり気にしないところですが、実はあまり知られていない標準物質計画策定フロー(下図)や様々な標準物質情報を掲載しているデータベースの情報を得ることができます。

2016-10-07_18-21-42

標準物質整備計画策定フロー(出典:朝海敏昭、Chemical Timesより)

IAJapanが運営する標準物質に関する認定制度について

記事は標準物質を認定している機関である「IA Japan」の認定センターで働いている人たちの寄稿です。認定精度は以下の2種類。

  1. JASS (Japan Calibration Service System): 計量法に基づく登録・認定プログラム
  2. ASNITE (Accreditation System of National Institute of Technology and Evaluation): 国内法に基づく他の認定プログラムでは対応できない分野を補完するためにIA Japanが運営する認定プログラム
2016-10-10_17-54-53

JASSとASNITEの認定シンボル(出典:堀田麻子・高澤解人、Chemical Timesより)

この記事ではこの2つの詳細について紹介しています。うーんこれはマニアックだ!

JCSS標準物質とCERIの取り組み

トレーサビリティ(追跡可能性)は一部ではカタカナ英語になっていますが、物質を扱う企業からいえば、その物質がどこで生産され、排出・廃棄まで追跡できる環境を整えるといったことがそれに当てはまります。トレーサビリティの向上には計量が必須であり、それには標準物質が必要となてきます。記事は、標準物質製造装置を用いて特定標準物質を製造し、維持・管理を行っている、一般財団法人化学物質評価研究機構(CERI)の取り組みについて述べています。

定量NMR法の測定精度と共同測定の結果に対する考察

この記事が一番化学者にはしっくりくるかも。NMRスペクトルを用いた定量分析(qNMR)の際の標準物質や精度の向上について述べています。定性分析ならば超微量でも検出できる質量分析などがよいですが、定量分析となるとそうはいきません。そこで最近活躍しているのが、qNMR法。当たり前ですが、1H NMRで定量するため、プロトン数、分子量、試料の計量値から目的物質の含量を知ることが可能です。標準物質の選定や測定条件の最適化、問題点についても述べています。

2016-10-10_18-11-10

qNMRによるトレーサビリティ(出典:山﨑太一、Chemical Timesより)

以上、今回の内容は、正直言って、化学を学んでいる人や化学者には全く実用性のない情報ばかりでした。しかし、ホットトピックであることは確かです。興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

過去のケミカルタイムズ解説記事

外部リンク

関連書籍

[amazonjs asin=”4621081047″ locale=”JP” title=”化学分析・試験に役立つ 標準物質活用ガイド”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 【日産化学 24卒/Zoomウェビナー配信!】START you…
  2. #おうち時間を充実させるオンライン講義紹介 ーナノテクー
  3. Angewandte Chemieの新RSSフィード
  4. 有機合成化学協会誌2017年9月号:キラルケイ素・触媒反応・生体…
  5. 面接官の心に刺さる志望動機、刺さらない志望動機
  6. 3.11 14:46 ③ 復興へ、震災を教訓として
  7. 優れた研究者は優れた指導者
  8. 有機反応を俯瞰する ーエノラートの発生と反応

注目情報

ピックアップ記事

  1. ジョン・ハートウィグ John F. Hartwig
  2. マイクロ波合成装置の最先端!
  3. 第65回「化学と機械を柔らかく融合する」渡邉 智 助教
  4. 第33回 新たな手法をもとに複雑化合物の合成に切り込む―Steve Marsden教授
  5. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎
  6. 単純なアリルアミンから複雑なアリルアミンをつくる
  7. 重水素標識反応 Deuterium Labeling Reaction
  8. ケミストリー通り
  9. 【Spiber】新卒・中途採用情報
  10. 沈 建仁 Jian-Ren Shen

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

モータータンパク質に匹敵する性能の人工分子モーターをつくる

第640回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所・総合研究大学院大学(飯野グループ)原島崇徳さん…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー