[スポンサーリンク]

一般的な話題

「Natureダイジェスト」で化学の見識を広めよう!

[スポンサーリンク]

 

学際的研究の重要性が叫ばれている昨今、新分野をつくることに目を向けて、開拓していくことはその分野の第一人者ともなる近道であるともいえます。基礎化学研究はもちろん重要ですが、自分の持っている知識をバックグラウンドに他の分野の研究を覗いてみると、意外に解決法や面白いアイデアがでてくることはよくあることです。ただなかなか時間もかけれないですし、そもそも最新研究は英語で配信されているため、専門分野ならまだしも、日本語でも困難な他分野の研究を読み取るのは一苦労。

さてそんな、化学研究を行っている研究者やその卵たちに今回オススメしたいのが「Natureダイジェスト」。今回はこれについて紹介したいと思います。

 

Nature ダイジェストとは?

最高峰の科学ジャーナルであるNature(ネイチャー)を出版しているネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の出版している日本語の科学まとめ雑誌です。最近、発行が始まったわけではなく、発行開始は2004年と11年前。業界で話題の研究結果はもちろん科学のニュースや社会情勢、科学政策など、科学を取り巻く世界のさまざまな情報をNature独自の切り口で、すべて日本語で配信しており、分野外でも非常に読みやすいものとなっています。

 

Nature ダイジェスト

Nature ダイジェスト

 

ではなぜいまさら紹介するのかといえば、これまで冊子体を中心にして発行されていたものが、今月10月より個人購読向けの冊子体の発行を停止しオンライン雑誌として生まれ変わったからです。どのような記事が掲載されているのか?まず記事の構成からみてみましょう。

 

どのような構成?

Nature ダイジェストの構成(http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/journal-information/)

Nature ダイジェストの構成(http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/journal-information/)

 

これだけではよくわからない、中身をみてみたいという方は、Natureダイジェストのウェブサイトを訪れてみてください。掲載されている記事のなかで2つほど無料公開しています。次に今月号(10月号)の中身を少しみてみましょう。

 

どんな内容が掲載されている?

今月号はNews記事が10本。特に注目する記事として、「臓器を体外で作る」という衝撃的なタイトルで、オルガノイド(臓器に似た構造体)についての翻訳記事がありました「オルガノイドの興隆」。当時、分子生物学研究所(オーストリア・ウィーン)の博士研究員Madeline Lancaster(現:英国MRC分子生物学研究所グループリーダー)が偶然にも”脳”をES細胞からつくってしまった話から始まります。

2015-10-02_02-05-08

Madeline Lancaster(出典:IMBA)

もちろん、オルガノイド研究の第一人者である故・笹井芳樹氏も登場し、物語スタイルでオルガノイドをつくる研究について紹介しています。日本語で読むと大変わかりやすいのですが、これはちょっと英語で読み込むのはきつい内容でした。

もう一つ紹介すると、News and Viewsにあった記事「スマホのカメラが分光計に?」というものです。1857年イギリスの偉大な科学者ファラデーが発表した「光と物質の相互作用」に関する研究。そのなかで、「金の微粒子が液体中に分散すると鮮やかな色を挺するのに対して、大きな粒子ではこうした色がみられないこと」が示されています。現在では、コロイド量子ドット(CQD)として知られる微粒子懸濁液なのですが、このCQDの光学特性と、スマホのカメラを合わせたら、なんと手持式小型光学分光計ができてしまった!というお話(Nature, 2015, 523, 67. DOI: 10.1038/nature14576)。面白い研究ではあるものの、どうしてこれがNatureに掲載されるのか、その位置付けはわからずじまいでしたが、用語を調べながら楽しく読めました。

様々なサイズの量子ドット(引用:Wikipedia)

様々なサイズのCQD(引用:Wikipedia)

学際的研究のアイデアのお供に

そういうわけで、今回はNatureダイジェストを紹介したわけですが、前述したように読者のバックグラウンドにより、科学の捉え方は変わります。私は、チープなアイデアかもしれないですが、いくつか自分の化学と融合できるようなアイデアを思いつきました。現在ではインターネットの普及により、デスクですぐに自分の興味のある事柄を深く掘り下げることができます。興味のある事柄のキーワード集めとして、読んでみてはいかがでしょうか。まあ、そんな深いこと考えなくとも、専門分野に凝り固まった頭を少しでも柔らかくするにはよいツールだと思いますよ。

ちなみに、PDFだけでなく、スマホやタブレットでも読むことが可能です(Natureダイジェストアプリ。こちらの方が安いのでオススメ)。しばらく購読することにしたので、今後も少しづつですが、Natureダイジェストの内容について紹介していくつもりです。

 

外部リンク

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 第四回ケムステVシンポ「持続可能社会をつくるバイオプラスチック」…
  2. 有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号
  3. フローシステムでペプチド合成を超高速化・自動化
  4. Cell Pressが化学のジャーナルを出版
  5. 有機合成化学協会誌2022年10月号:トリフルオロメチル基・気体…
  6. 二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とす…
  7. 第3のフラッシュ自動精製装置がアップグレード:分取クロマトグラフ…
  8. 日本化学会 第103春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン P…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 東京大学理学部 化学教室
  2. 企業研究者のためのMI入門③:避けて通れぬ大学数学!MIの道具として数学を使いこなすための参考書をご紹介 mi3
  3. ゴールドエクスペリエンスが最長のラダーフェニレンを産み出す
  4. 分⼦のわずかな⾮対称性の偏りが増幅される現象を発⾒
  5. 日常臨床検査で測定する 血清酵素の欠損症ーChemical Times 特集より
  6. カーン グリコシド化反応 Kahne Glycosidation
  7. 化学連合シンポ&化学コミュニケーション賞授賞式に行ってきました
  8. 美しきガラス器具製作の世界
  9. はてブ週間ランキング第一位を獲得
  10. 高分子材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用:高分子シミュレーションの応用

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

2024年の化学企業グローバル・トップ50

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表…

早稲田大学各務記念材料技術研究所「材研オープンセミナー」

早稲田大学各務記念材料技術研究所(以下材研)では、12月13日(金)に材研オープンセミナーを実施しま…

カーボンナノベルトを結晶溶媒で一直線に整列! – 超分子2層カーボンナノチューブの新しいボトムアップ合成へ –

第633回のスポットライトリサーチは、名古屋大学理学研究科有機化学グループで行われた成果で、井本 大…

第67回「1分子レベルの酵素活性を網羅的に解析し,疾患と関わる異常を見つける」小松徹 准教授

第67回目の研究者インタビューです! 今回は第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化す…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP