最近、こんなサイトを発見しました。
どういうサイトかというと…
ブラウザの上で構造式を描いて、さまざまな情報にアクセスできる!
これはすごい! というわけで、いくつかの機能をここでご紹介します! すべて Google Chrome ならサクサク動きますので、ぜひ使いながら読んでみてください。
1. Wikipedia の化学物質を構造式から検索
Wikipedia structure search というエンジンでは、構造式をブラウザ上で描画し、検索することができます。
左側の構造式エディタで構造式を編集すると、その都度リアルタイムに右側の窓で検索結果が表示されます。すごいのが、左下の Search mode で Substructure や Similarity から検索できること。描画した構造を部分構造に持つ構造式や、類似する構造式(異性体や置換体など)が列挙されます。Wikipedia からの情報取得は自動で随時行われているため、最新情報を常に検索可能です!
2. 構造式を 2D から 3D に変換
2D to 3D というページでは、構造式をブラウザ上で 2D 描画すると、3D に変換して表示してくれます。
先日の「分子構造を 3D で観察しよう (3)」という記事の末尾で少しだけ紹介した JSmol が表示してくれます。手軽にブラウザ上で分子の三次元構造を観察したい場合に便利ですね。
3. NMR スペクトルの予測
1H NMR spectra prediction や 13C NMR spectra prediction では、構造式を描くと 1H NMR や 13C NMR スペクトルの予測値を表示してくれます。
こちらも手軽に検索できるので、研究に役立つこと間違い無しです。
4. Protein Data Bank からのタンパク質 3D 表示
PDB Viewer では、Protein Data Bank に登録されているタンパク質の 3D 構造を、PDB ID で検索した結果から JSmol で表示してくれます。
表示に時間がかかることがありますが、右側のメニューから表示方法を変更することができます。
どうやって実現したのか? – JavaScript の発展
こんなことがどうやってブラウザでできるのかというと、JavaScript というブラウザ上で動くプログラミング言語が背後で動いているのです。最近はケモインフォマティクスの分野が発展し、JavaScript を活用してブラウザ上で化学情報にアクセスしようと試みが盛んになっています。今回取り上げた中の 1 つめ「Wikipedia からの構造式検索」の成果は、2015 年 3 月 22 日に Journal of Cheminformatics 誌に掲載されています (Open Access) 。この論文についての解説は、例えばこちらが参考になるでしょう。SMILES 表記法という「原子と原子のつながりを一次元のテキストで表す方法」が活躍していることがわかります。
ブラウザから化学情報にアクセスする手段も次々と生み出されつつあります。今後も JavaScript の動向から目が離せませんね。
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