日本電子株式会社が、昨年末から無料公開している天然有機化合物のNMRスペクトルデータベース「 CH-NMR-NP」をご存知でしょうか。今回は知らない方のためにこのデータベースの内容を簡単に紹介したいと思います。
天然物のデータベースCH-NMR-NPとは?
提供している日本電子株式会社はNMRとESRを扱っている子会社です。2014年12月から提供をはじめたこのデータベースは、日本語と英語のインターフェイスを備えており、無料のユーザー登録をするだけで全機能を使用する事ができます。
無料で提供されているスペクトルデータベースとは、独立行政法人産業技術総合研究所の「有機化合物のスペクトルデータベースSDBS」が有名です。
今回紹介する、CH-NMR-NPは天然有機化合物が主体のデータベースであるため、市販試薬を主体とするSDBSよりも複雑な構造を網羅しています。CH-NMR-NPは、SDBS構築の中心人物であった早水紀久子先生が作成されたデータベースで、約3万件の天然有機化合物を収録しているため、天然有機化合物の基本骨格をカバーしています。これはすなわち、ほとんどの有機化合物の13C-NMR化学シフトに関して、参考情報が得られる事を意味します。天然物のみならず、有機化学の様々な現場で活用出来る事が期待できます。
データベースの利用方法
データベース検索に利用出来る情報は、化合物名、CHNOの各原子数、分子式、分子量、化学シフト、部分構造などで、部分構造の化学シフトを調べたり、特定の化学シフトを与える部分構造を調べたりと、様々な使い方が考えられます。
また、JEOLが無償公開しているNMRデータ処理ソフトウェア「Delta」との親和性が高く、Deltaソフトウェアの利用者にとって非常に使いやすい機能を備えています。
例えば、検索結果から得られたスペクトルはDeltaソフトウェアで開くことができるため、実測のスペクトルとの比較が容易です。また実測スペクトルのピーク情報を、検索クエリーに直接読み込ませる事もできます。つまり、実際にNMR測定した化合物のスペクトルを使う事で、類似した化学シフトを与える部分構造を検索する事が出来るわけです。
有機化学ではNMRによる構造解析を必用とする機会は少なからずありますが、是非このようなツールを日々の研究に役立ててみてはいかがでしょうか。
関連文献
- 天然有機化合物のNMRデータベース “CH-NMR-NP、早水 紀久子、化学と生物、2011, 49, 250. DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.49.250
関連書籍
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