[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

卒論・修論にむけて〜わかりやすく伝わる文章を書こう!〜

[スポンサーリンク]

レオです。最近は期末報告会やら、海外の学会で発表やらでなかなか記事を書く機会がありませんでした。発表?もちろんダメダメでした(汗)

そんなこんなでついに卒論や修論の時期ですね。特に学部生にとって卒論は大学4年間の集大成であり非常に大きなイベントです。そしてこの卒論作製が一番苦しい時期でもあります。毎日wordを開き、パソコンとにらめっこしながら文章を書く。そして完成し自信満々で先生や先輩に見せたら、

「何を言っているかわからない。論文ではなく、ただの小説。もう一度やり直し」

って冷たく返され、またパソコンとにらめっこ…おそらくそういう日々を送ると思います。

そこで今回の記事ではそろそろ卒論、修論を書き始める、またはもう書き始めている方々向けにどうやってわかりやすく、そして論理が伝わる文章をかくのか。それについて私が卒論を書くときに参考とした本を二冊簡単ですが紹介したいと思います!

 

一冊目: 論理が伝わる世界標準の「書く技術」~「パラグラフ・ライティング」入門~

51W0lXzSL7L

[amazonjs asin=”4062577933″ locale=”JP” title=”論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)”]

 

はじめに紹介する本はこちら、論理が伝わる世界標準の「書く技術」です。

この本の著者倉島保美さんは日本語や英語のライティングや論理的思考法、ディベート、プレゼンテーションなどを指導しており、相手に自分の考えている論理をどうやって伝えるのかを知り尽くした方です。

さて、この本の副題にある「パラグラフ」とは「1つのトピックを説明した文の集まりのことであり、原則として1つの要約文とフクスの補助情報つまり詳しく説明した文で構成します。

 

このパラグラフを使って文章を書くと伝わりやすく論理的な文章になると著者の倉島さんは言います。

本来この「パラグラフ・ライティング」は学習して初めて習得できるもので欧米では一年以上にわたって勉強するものです。一方日本ではこのようなパラグラフ・ライティングを勉強しないので、このような論理的で伝わる文章は書くことが難しいとのこと。

 

このパラグラフ・ライティングで報告書やレポートを書かないことで伝えるべき重要なことが伝わらず大事故があった例もあります。

本書によると、「1986年のスペースシャトル・チャレンジャーの爆発事故でこの事故の前にNASAでは技術上の欠陥を指摘したレポートがエンジニアから提出されていました。しかしそのエンジニアの上司がそのレポートを無視したため事故が起こりました。そのエンジニアの上司は裁判で訴えられましたが、『レポートの書き方が悪かったので、事態の深刻さが把握できなかった』と主張しそれが認められ無罪になりました。レポートの書き方でこのような大きな事故はなかった」と記してあります。

 

このように報告書やレポートはその文章の書き方次第で重要な出来事を伝えたいが伝わらないといった事態になるのです。

この本については詳しく書いた記事がありますので、興味があるかたはこちらも御覧ください!

 

二冊目知的文章とプレゼンテーション

41JppgLA5NL

[amazonjs asin=”B00LMB2S38″ locale=”JP” title=”知的文章とプレゼンテーション 日本語の場合、英語の場合 (中公新書)”]

続いてはこちら、知的文章とプレゼンテーションです。プレゼン資料や論文はもちろん、申請書や企画書を説得力と魅力のあるものに仕上げるとして東大や京大、早稲田大、慶応大の多くの学生に読まれている本です。

この本の著者黒木登志夫さんは40年間にわたって論文執筆と審査に携わってきたがん研究者です。

 

黒木さんによると、知的文章を書くためには、「簡潔・明解・論理的」といった「知的三原則」に従う必要があるとのこと。

この原則は日本語の文章でも英語の文章でも知的文章を書くためには重要な原則と黒木さんは言います。

 

また卒論や修論やその要旨といった書類(ドキュメント)のに説得力を持たせるために、「目的とメッセージを明らかにする」「プログラムの目的を知る」「タイトルと要約(アブストラクト)を大事にする」などといった基本的な部分について丁寧に書かれています。

 

加えてこの本は黒木さんが40年間にわたって携わった審査をする心構えについて、また人を惹きつけるプレゼンテーションのやり方や英語でどのように知的文章を書くのかについてもそれぞれ1章分あり、この一冊で文章の書き方はもちろんプレゼンテーションの方法や審査をする心構えについても学べる一冊です。

 

おわりに

今回は宣伝(?)記事のようになりました。この時期は卒論や修論に力を注ぐ時です。

おそらくここまで自分の書いた要旨や論文といった文章にケチを付けられ修正される機会はなかなかないと思います。(私も何度も修正しました)

それだけ文章の書き方を学べるまたとないチャンスです。

卒論を書く皆さん、また修論を書く皆さん、もちろんその他の皆さんも是非研究室の先生や後輩のために論理が伝わる文章を書くために、今回紹介した本を読んでみてはいかがでしょうか?

この技術はビジネスでの報告書でも応用できますので是非この本 を見つけたら読んでみてください。

 

今回紹介した本はこちら

[amazonjs asin=”4062577933″ locale=”JP” title=”論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)”][amazonjs asin=”B00LMB2S38″ locale=”JP” title=”知的文章とプレゼンテーション 日本語の場合、英語の場合 (中公新書)”]

 

Avatar photo

レオ

投稿者の記事一覧

Ph.D取得を目指す大学院生。有機太陽電池の高効率を目指して日々研究中。趣味は一人で目的もなく電車に乗って旅行をすること。最近は研究以外の分野にも興味を持ち日々勉強中。

関連記事

  1. 2012年ケムステ人気記事ランキング
  2. 混合原子価による芳香族性
  3. アメリカで Ph. D. を取る –研究室に訪問するの巻–
  4. 研究開発DXとマテリアルズ・インフォマティクスを繋ぐmiHub
  5. フラーレンが水素化触媒に???
  6. 「細胞専用の非水溶媒」という概念を構築
  7. 条件最適化向けマテリアルズ・インフォマティクスSaaS : mi…
  8. 常温常圧アンモニア合成~20年かけて性能が約10000倍に!!!…

注目情報

ピックアップ記事

  1. シュプリンガー・ネイチャー・グループが学問の継続のために経済的な支援を必要とする日本の大学生・大学院生を対象にチャリティー資金を提供
  2. PACIFICHEM2010に参加してきました!①
  3. 【速報】2015年ノーベル化学賞は「DNA修復機構の解明」に!
  4. 化学連合シンポ&化学コミュニケーション賞授賞式に行ってきました
  5. 反応化学の活躍できる場を広げたい!【ケムステ×Hey!Labo 糖化学ノックインインタビュー②】
  6. 位置選択的C-H酸化による1,3-ジオールの合成
  7. プロセス化学ー合成化学の限界に挑戦するー
  8. H・ブラウン氏死去/米のノーベル化学賞受賞者
  9. 有機合成にさようなら!“混ぜるだけ”蛍光プローブ3秒間クッキング
  10. 有機合成化学協会誌2023年1月号:[1,3]-アルコキシ転位・クロロシラン・インシリコ技術・マイトトキシン・MOF

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー