現代社会はインターネット全盛。個人が世界とつながり、やりとりする機会もごく普通のことになりました。まさに“一億総情報発信時代”と呼ぶにふさわしい様相です。
Web上の化学情報も、以前に比べて質・量ともに格段の発展を見せました。電子ジャーナルも一般化し、情報源たるブログやWikiも充実し続けています。Web化学情報の増加はいまだ留まるところを知りません。
その一方で、
「必要な情報だけを低コストでより分けるには、どうすればよいのか?」
「得た情報を上手に活用するには、どうすればよいのか?」
・・・この悩みがつきまとうのは日常生活でも研究でも同じであり、時間に追われる現代人ならば尚更です。情報を取捨選択し活用する技術は、現代人にとって必要不可欠なスキルです。
優れたツールを使いこなし、情報を効率よく集めて処理する「デキるオトナの仕事術」――これはライフハック(LifeHack)というカッコ良い言葉で形容され、昨今注目を集める概念となっています。
ケムステでは、Web全盛時代に化学情報を処理する術を、「化学研究ライフハック」と呼称して多数解説してきています。
本記事では、かつてその第一弾記事として公開されていたRSSリーダーを活用した新着情報チェック法(2008年)を、現代事情をふまえたうえでアップデートして紹介したいと思います。
RSSって何?
ネットを巡回していて、上図のような音波画像を見かけたことは無いでしょうか?これは「サイトがRSSに対応しています」という表示です。
「RSS?・・・聞いたことあるけど良く分からないなぁ」・・・そんな方も多くいらっしゃることでしょう。かいつまんで言うなら、「ニュース・ブログなどの最新見出しを記述したコード」のことです。更新状況に応じて最新の状態に保たれる「リアルタイム性のあるブックマーク」とも取れます。沢山の新聞の見出しだけをまとめて読めるような仕組みと考えれば、利便性がイメージしやすいと思います。
最近ではほとんどのニュースサイト・ブログにRSSコード生成機能が実装されています。皆さんが良く訪れるサイトを隅まで見てみてください。きっとこのマークが表示されているはずです。
たとえば、ケムステの各種コンテンツもRSSに対応しています。上部メニューにある「Chem-Stationについて」から取得可能です。
定番RSSリーダー「Feedly」を使ってみる
RSSを読むためには、RSSリーダーと呼ばれるソフトが必要になります。いろいろなソフトが開発・公開されていますが、筆者のように毎回の起動が面倒に感じるものぐさタイプなら、ブラウザ対応のRSSリーダーがオススメです。
かつて隆盛を極めていた定番はGoogle Readerでしたが、残念ながら2013年にサービス中止となってしまいました。その後釜として定番視されているのがFeedlyです。
導入方法については既にほうぼうで解説記事がありますので、そちらを参照いただくのが良いでしょう。たとえばGigazineのインストラクションでは導入からRSSの追加に至るまでが、丁寧に解説されています。また、各OS・端末に対応したアプリも発行されていますので、必要に応じてインストールください。一旦アカウントを登録してしまえば、どの端末からも同じデータを使えます。
各種新着記事をチェックしてみよう
RSSリーダーの準備が整い、いよいよ具体的に使い始める段になりました。果たしてどういうものに使うのが賢いやり方といえるのでしょうか。
ここではとりわけ化学研究に役立つ方法を紹介しておきます。
①新着論文のチェック
競争の激しい分野に取り組む研究者には、毎日の新着論文チェックは欠かせません。 NPGジャーナルのAdvance Online Publications, ACSジャーナルのASAP/Just Accepted、WileyのEarly View・・・などなど、校正を経て雑誌形式になる(ページ番号が付く)前段階から論文が公開されることも、昨今では一般化しています。現状もっとも情報が早いメディアは疑いなくWebです。
しかし一つや二つならともかく、十や二十ものWebジャーナルを定期チェックするのは大変です。そういう時に、RSSリーダーが大きな助けになります。
興味のあるジャーナルのRSSを上記解説の要領で登録します。すると、ジャーナルによってはGraphical Abstract付きの見出しが表示されます(下図)。 未チェックの記事数も表記されるため、見落としも少なくなります。
②化学系ニュースとブログのチェック
既に述べたとおり、ニュースサイト・ブログの更新情報はRSSを使えばカンタンに取得できます。 うまく使って巡回時間を節約しましょう。
以下に日本語で読める代表的な化学系情報サイトを記載しておきます。ほとんどの場合、Feedlyの検索窓にサイト名を入力するだけで検索・登録できます。Science Blog AntennaやChemPortにもまとまっていますので、そちらから適宜ピックアップしても良いでしょう。もちろん登録すべきは化学情報に限りませんので、お好みでどうぞ。
化学系ブログ | 化学ニュースサイト |
---|---|
化学者のつぶやき | ケムステニュース |
有機化学美術館・分館 | ガジェット速報-Technity- |
気ままに有機化学 | 化学工業日報 |
気ままに創薬化学 | 薬事日報 |
こども省 | マイナビニュース|テクノロジー |
大学1年生の化学 | グラフェンWiki & News |
ワイリー・サイエンスカフェ | 化学業界の話題 |
たゆたえども沈まず | 日刊薬業 |
③TwitterのつぶやきをRSSで追う
近年ライトな情報発信媒体として台頭しているTwitterですが、タイムラインはどんどん流れていってしまうため、「つぶやきを見逃してしまった!!!」と嘆くことも多々あるものと思います。
そういう場合に備え、チェックしたいユーザのツイートをRSSリーダーで取得しておくと良いでしょう。昔は公式がRSS配信していたのですが、最近廃止されたため一工夫必要になっています。
いくつかやり方があるようですが、ここではQueryFeedと呼ばれるウェブサービスを使う方法をご紹介します。やり方は以下の通り。化学系Twitterもいろいろ登場しています(参考:有機化学系Twitter bot)ので、適宜探して登録しておくと良いでしょう。
①QueryFeedのサイトを訪れ、フォームに「from:アカウント名」と打ち込みEnter。
②出てきたページのURLをコピーし、Feedlyの検索窓にペーストすれば、TwitterのRSSが登録できます。
④Googleアラートで特定のキーワードを追う
「化学」「有機化学」など、特定キーワードに絡むニュースや注目記事を広く引っかけたい場合には、Googleアラートが便利です。操作は直感的に行なえ、説明不要だと思います。出てきたRSSフィードをFeedlyに登録すればOK。
おわりに
「化学研究ライフハック」 RSSリーダー編はこれにて終了です。
化学者はIT技術に疎いためか、便利なWebサービスを使いこなせる人は多くないようです。しかし、うまく使えば大変便利なものばかりなので、本記事を参考に是非チャレンジしてみてください。
(2008.6.29. cosine 執筆)
(2015.1.24 加筆修正・つぶやきに移行)
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関連リンク
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- RSSリーダー「Feedly」で覚えておくと便利な機能&使い方 15個まとめ (二十歳街道まっしぐら)