サイエンスアゴラでケムステブースにお立ち寄りいただきました皆様誠にありがとうございました。
いつも見てますとお声がけいただき、大変励みになりました。今後ともよろしくお願いいたします。
さて、今回のポストではアゴラの総括はとりあえず置いておきまして、私が気になった出展について少しだけ紹介させていただければと思います。
その名もNEBULA
実は出展者とは言え我々スタッフもアゴラを楽しんできました。
ケムステブースの周辺は化学セクタで固められていたようで、馴染み深い出展内容の方々がいらっしゃいました。そんな中でお向かいには日本コンピュータ化学会が様々なものを用意されておりました。ご自作されたという3Dプリンターで分子模型を印刷したりなどは、実際に手に取ってみると意外なほどよくできており学生に受けそうだなという印象でした。
思いっきり向かいに展示があったからというわけではありませんが、電子の軌道の三次元ガラス彫刻模型が大変美しかったです。というわけでweb検索などをしてみますと、こちらの電子雲三次元ガラス彫刻模型はNEBULAのサイトに行き着きました。
このNEBULAは埼玉大学の時田澄男先生、時田那珂子先生らが開発されたもので、webサイトでは様々な軌道の彫刻模型を見ることができます。
画像は全てNEBULAのサイトより引用
[blockquote style=”1″]宇宙から観察する地球の姿は、たとえようもなく美しいということです。「原子」というミクロの世界も、拡大して 見ると実はとても美しいのです。 [/blockquote]
軌道を3次元で表現する意味
原子は、中心部分に原子核があり、周りに電子があるというのはよくご存じでしょう。高校の教科書ではあたかも電子が原子核の周りをぐるぐる回っているような、いわゆる太陽系のようなモデルが書いてありますが、原子の本当の姿を表わしていません。難しいところは省きますが、原子の電子は写真を撮ってその姿をとらえるといったことはできないため、電子がどこにいるかを示す「確率密度」で表わします。これが雲のように見えることから、電子雲とも呼ばれており、雲が濃いところは、電子がいる確率が高いということを表します。
しかしここで問題が生じます。原子のなかの平面的に分布しているわけではなく、空に浮かぶ雲のように3次元的に広がっています。そこでコンピュータなどでシミュレーションして立体的な図を書く必要があるわけですが、教科書にその図を載せてもなんだか実感が湧きません。そこで時田先生らは、レーザー彫刻技術を使って、ガラスの塊のなかにこの「雲」を表現することの挑戦したとのことです。
買えるのだ!
出来映えは本当に素晴らしくて、そうか電子の軌道ってのはこういうふうに説明できれば楽なのになあと感心しきりでした。
小さい物は972円から購入できるそうなので、オブジェとして飾るだけでもいいですね。ぜひ!
参考文献
[1] Tokita, N.; Tokita, S.; Nagao, T. J. Comput. Chem. Jpn. 2006, 5, 153. DOI:10.2477/jccj.5.153
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