[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ここまでできる!?「DNA折り紙」の最先端 ③ ~立体を作ろう! 編~

[スポンサーリンク]

 

前回の記事では複数のDNAタイルを組み合わせたり、ハイブリッド化することで様々な平面(2D)構造を作りあげた研究をご紹介しました。

近年ではこれを更に発展させる流れで、より難度の高い立体(3D)構造も作られるまでになっています。

方法としては大きく分けて2種類が知られています。

一つは、糊に相当するDNA(staple strand)を介した分子内特異的相互作用を適切に配置する手法です。これによって各サブユニットが適切に折りたたまれ、柱状・層状の3D構造が組み上がります(A)。

緻密な設計を施すことで、らせん状の構造体(B)や、湾曲パーツを組み合わせた歯車状構造(C)を作ることも可能です。

DNAorigami_3_1
より複雑な形状としては、壺状構造体や球状構造体、はたまた”ナノ活字”とも呼びうる立体アイコン群までもが作られています。

DNAorigami_3_2

もう一つは、DNA折り紙で立体の展開図をつくって、それを折り畳ませるアプローチです。上記のアプローチとは異なり中空構造が作れるので、いろいろなものを中に詰め込むこともできます。

DNAorigami_3_4

この方法でスイッチ機能を持った直方体が作られています。蓋が閉まった箱に、のり付け配列(青・橙の部分)と競合的にくっつくDNA鎖を加えてやると、のり付けをほどくことができます。つまり、特定のDNA鎖を”鍵”として、箱を開けることができるのです!

DNAorigami_3_3

いかがでしたか?
これまで紹介したように、DNA折り紙で複雑な構造体をつくる研究はたゆまぬ進歩を続けています。ここで聡い読者の皆さんなら、きっとこう思ったのではないでしょうか。

面白い構造を作れるのは分かったけど、これって一体何に使えるの?

これはもっともな疑問です。実にいろいろなアイデアに基づく応用が検討されていますので、次回以降にご紹介しましょう!

(※図は論文[1]より引用)

 

関連文献

[1] (a) “DNA origami technology for biomaterials applications” Endo, M.; Yang, Y.; Sugiyama, H. Biomater. Sci. 2012, 1, 347. DOI: 10.1039/c2bm00154c (b) “Structural DNA Nanotechnology: State of the Art and Future Perspective” Zhang, F.; Nangreave, J.; Liu, Y.; Yan, H. J. Am. Chem. Soc. 2014, doi:10.1021/ja505101a

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4062574721″ locale=”JP” title=”DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)”][amazonjs asin=”4062165341″ locale=”JP” title=”生物化するコンピュータ”][amazonjs asin=”B095P61D8L” locale=”JP” title=”DNA origami入門 ―基礎から学ぶDNAナノ構造体の設計技法―”]

 

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 博士号で世界へ GO!-ー日本化学会「化学と工業:論説」より
  2. 企業の研究開発のつらさ
  3. 細孔内単分子ポリシラン鎖の特性解明
  4. 【第14回Vシンポ特別企画】講師紹介:酒田 陽子 先生
  5. フォトメカニカル有機結晶を紫外線照射、世界最速で剥離
  6. 公募開始!2020 CAS Future Leaders プログ…
  7. 科学ボランティアは縁の下の力持ち
  8. アルメニア初の化学系国際学会に行ってきた!②

注目情報

ピックアップ記事

  1. 可視光エネルギーを使って単純アルケンを有用分子に変換するハイブリッド触媒系の開発
  2. ビシュラー・メーラウ インドール合成 Bischler-Mohlau Indole Synthesis
  3. 高活性、高耐久性を兼ね備えた世界初の固体鉄触媒の開発
  4. リベロマイシンA /Reveromycin A
  5. メソポーラスシリカ(3)
  6. ミトコンドリア内タンパク質を分解する標的タンパク質分解技術「mitoTPD」の開発
  7. 化学反応を自動サンプリング! EasySampler 1210
  8. 機械的力で Cu(I) 錯体の発光強度を制御する
  9. リッチー・サーポン Richmond Sarpong
  10. リーベスカインド・スローグル クロスカップリング Liebeskind-Srogl Cross Coupling

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年8月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP