前回の記事では複数のDNAタイルを組み合わせたり、ハイブリッド化することで様々な平面(2D)構造を作りあげた研究をご紹介しました。
近年ではこれを更に発展させる流れで、より難度の高い立体(3D)構造も作られるまでになっています。
方法としては大きく分けて2種類が知られています。
一つは、糊に相当するDNA(staple strand)を介した分子内特異的相互作用を適切に配置する手法です。これによって各サブユニットが適切に折りたたまれ、柱状・層状の3D構造が組み上がります(A)。
緻密な設計を施すことで、らせん状の構造体(B)や、湾曲パーツを組み合わせた歯車状構造(C)を作ることも可能です。
より複雑な形状としては、壺状構造体や球状構造体、はたまた”ナノ活字”とも呼びうる立体アイコン群までもが作られています。
もう一つは、DNA折り紙で立体の展開図をつくって、それを折り畳ませるアプローチです。上記のアプローチとは異なり中空構造が作れるので、いろいろなものを中に詰め込むこともできます。
この方法でスイッチ機能を持った直方体が作られています。蓋が閉まった箱に、のり付け配列(青・橙の部分)と競合的にくっつくDNA鎖を加えてやると、のり付けをほどくことができます。つまり、特定のDNA鎖を”鍵”として、箱を開けることができるのです!
いかがでしたか?
これまで紹介したように、DNA折り紙で複雑な構造体をつくる研究はたゆまぬ進歩を続けています。ここで聡い読者の皆さんなら、きっとこう思ったのではないでしょうか。
面白い構造を作れるのは分かったけど、これって一体何に使えるの?
これはもっともな疑問です。実にいろいろなアイデアに基づく応用が検討されていますので、次回以降にご紹介しましょう!
(※図は論文[1]より引用)
関連文献
[1] (a) “DNA origami technology for biomaterials applications” Endo, M.; Yang, Y.; Sugiyama, H. Biomater. Sci. 2012, 1, 347. DOI: 10.1039/c2bm00154c (b) “Structural DNA Nanotechnology: State of the Art and Future Perspective” Zhang, F.; Nangreave, J.; Liu, Y.; Yan, H. J. Am. Chem. Soc. 2014, doi:10.1021/ja505101a
関連書籍
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外部リンク
- 「DNA折り紙ってなんだ?」若き東大のイケメン助教が教えてくれた(アレ待チろまん)
- 未来を担う技術「DNA折り紙」についてのまとめ
- DNA折り紙の作り方(気ままに有機化学)