前回の記事では「DNA折り紙とはなんぞや?」について解説しました[1]。
報告当初[2]から込み入った構造が作れるとして話題を呼びましたが、技術がさらに進んだ現在、どこまで複雑なものが作れるようになっているのでしょうか?
DNA折り紙のサイズ(~100 nm)は、使える長鎖DNAの長さ(~7000塩基)でほぼ規定されます。菌に作らせる事情ゆえ、どうしても上限があるのです(もちろんこの上限を克服しようとする研究もあるようです)。
そこで現在では、複数のDNA折り紙タイルを整列させる方法によって、より巨大な構造体へとアプローチする研究が進んでいます。
たとえば相補的な凹凸構造を有するDNAタイルをデザインしてやると、複数のタイルがジグソーパズルのように寄せ集まり、かなり大きな構造体(~300nmサイズ)が得られます。
また鋳型となるフレームとDNA折り紙タイルを組み合わせることで、さらに複雑な構造パターンも作りあげることができます。
別のアプローチとしては、折り紙タイルに「住所」を持たせうる性質を利用してDNA以外の化合物を結合させる、「ハイブリッド素材化」も試みられています。
たとえばトライアングル状のDNA折り紙に金ナノロッド/粒子や量子ドットを配列させたり、格子構造の交点にタンパク質(ストレプトアビジン)を寄せ集めたり・・・といった研究が既に報告されています。
一つ遊び心あふれる研究例をご紹介しましょう。さながら“DNA福笑い”とでも呼びましょうか(笑)
個々のタンパク質を見分ける”タグ”を目鼻の位置にセットアップしておき、望みの位置に好きなタンパク質を担持出来るというデモです。タイルの表・裏を区別して結合させることも出来るようです[3]。
以上の例は全て平面(2D)の構造体ですが、近年ではより難度の高い立体(3D)構造へもアプローチが進んでいます。これは次回にでも紹介してみたいと思います。
(※図は論文[1],[3]より引用)
関連文献
[1] (a) “DNA origami technology for biomaterials applications” Endo, M.; Yang, Y.; Sugiyama, H. Biomater. Sci. 2012, 1, 347. DOI: 10.1039/c2bm00154c (b) “Structural DNA Nanotechnology: State of the Art and Future Perspective” Zhang, F.; Nangreave, J.; Liu, Y.; Yan, H. J. Am. Chem. Soc. 2014, doi:10.1021/ja505101a[2] “Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns” Rothemund, P. W. K. Nature 2006, 440, 297. doi:10.1038/nature04586
[3] “Orthogonal Protein Decoration of DNA Origami” Niemeyer, C. M. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 9378. DOI: 10.1002/anie.201005931
関連書籍
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外部リンク
- 「DNA折り紙ってなんだ?」若き東大のイケメン助教が教えてくれた(アレ待チろまん)
- 未来を担う技術「DNA折り紙」についてのまとめ
- DNA折り紙の作り方(気ままに有機化学)