はじめましてフェロセンと申します。5月初旬に思い切ってケムステスタッフとして活動すべく応募いたしまして、はれてケムステスタッフとなりました。今後ともどうぞよろしくお願いします。
さて先日、2011年に「準結晶の発見」の功績によりノーベル化学賞を受賞されたダン・シェヒトマン博士の講演を聞く機会がありました。5月に来日され、様々な場所で講演を行っていたようです。今回はその内容について少しだけ紹介したいと思います。
ノーベル化学賞受賞者の講演ともあって、会場が多くの教員・大学院生で埋め尽くされているのを想像していていました。しかし、なんと学部生だけでなく多くの高校生も参加していました。
準結晶ネクタイを締めて登壇された博士。ちなみに準結晶ネクタイとはこんなのです。
参加者に若い人が多かったことからか、博士は「準結晶とは何?」というところから実際の博士の研究までわかりやすい英語でゆっくりと話してくださいました。
講演の最後には、こんな疑問を投げかけていました。
Why QCs (quasicrystals) were never discovered before 1982?
Are they
-very rare? →× they are hundreds of them.
-not stable? →×
-difficult to make →×
-made of rare elements? →× Not at all. They are cheap!
つまり、準結晶は数百個存在して、熱力学的に安定にである多く、作成も難しくなく、比較的安価につくれると。では、疑問である「どうして1982年より前に準結晶が発見されなかったのか」のでしょうか。博士は以下の事項がその理由だといっていました。
・TEM
・PROFESSIONALISM
・TENACITY
・BELIEVING IN YOURSELF
・RESILIENCE
つまり、発見にはTEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)がなくてはならないものであったこと、続いて、そういった測定器械類の操作だけでなく、昔は機械修理も全て自分で行なった、という話をされていました。それから、粘り強さ、自分を信じること、立ち直る力が鍵となったと言っていました。
また、10Fold??? と記された、ダン・シェヒトマン博士が準結晶を発見した際のノートを示して、(会場に高校生が多くいたこともあり)、実験ノートがいかに重要かということや何を記してあるか、時間をかけて詳しくお話しされていたことが印象的でした。
なかなかノーベル化学賞受賞者の講演を無料で聞けるものではないと思いますので大変参考になりました。それにしても、そんなに年が離れている訳ではないのですが、会場にいた高校生の若さに圧倒された講演会でした。