鬼はーそと!福はーうち!
ということで節分でしたね。
化学と節分をテーマにしても面白いかもしれませんが、我が国では受験シーズン真っ只中ということもありますので、ここらで大学とは一体なんなのかを少しだけ考えて(愚痴って)みたいと思います。
今回のポストはNature Chemistry誌よりTulane大学のBruce C. Gibb教授によるthesisをもとにしていますが、米国と我が国ではかなり実情が異なりますので内容は少し違いますことをご了承ください。前回はこちら
The bean counters are coming!
Gibb, B. C. Nature Chem. 6, 83-84 (2014). Doi: 0.1038/nchem.1847
大学というとその組織は誰が仕切っているのでしょうか?恐らくトップは総長、学長という肩書きの方でしょう。通常日本の大学では学部というくくりがあり、その中に学科、もしくは専攻という細分化された組織があります。
学部には学部長がおり、学科には学科長がいるので、大学というものはそれ位の単位で管理運営されてるんだろうなと思いますか?それとも大学には教授会という意思決定機関があるので教授会が運営していると思いますか?
いいえいずれも違います。大学を牛耳っているのは事務方です。私立大学で言えば理事(administrator)です。
教務職員はいずれも学科もしくは専攻に在籍しています。中には大学院に教員が所属しているパターンもあります。教務職員(faculty)では主として教授が研究室を主催し、その中に准教授や助教という職階のスタッフがおり数人で研究室を運営することが多いです。ということで大学における組織として最小の単位は研究室という事になり、研究室ごとに研究費を獲得してきて研究を進めていきます。
一方で大学の運営に欠かせないのが学生、もしくはその親御さんから納入していただくいわゆる授業料です。私立大学は高く、国公立は低いとされれいますが近年では徐々にその差が縮んできているようです。その他に税金や補助金が配分されます。
でもそれらを教務職員が自由にできるわけではありません。自分で獲得した研究費でも何割かは大学に持って行かれるのが普通です。科研費でも最近は直接経費、間接経費と分かれて配分され、そのうち間接経費は大学に吸い上げられるところが多いのではないでしょうか?このような言わば大学に納める税金のようなものをオーバーヘッドなどと言いますが、米国では結構な割合で取られるようです。日本では約1割といったところでしょうか。
本文とは全く関係ありません
さてようやく配分された研究費であっても、その使用においては様々な手続きが必要です。どんぶり勘定なんてもっての他ですし、ひどい場合は鉛筆一本購入するために見積書をもらって書類を提出して許可がおりないと購入できません。納品されたら納品書、請求書を持って検収を受けないと支払いをしてくれません。支払いにおいても、どの資金のどんな配分品目で支出するのか書類を作成しなければなりません。
さてこれは研究費の使い方に関する一例ですが、その他にも毎日毎日様々な書類の作成に忙殺されます。その大量に作成した書類を最終的には誰かが事務処理するわけです。当然、一人の職員で処理しきれるわけがありませんし、決済のためには何人ものハンコが必要です。
なんで鉛筆一本買うのにこんな手間がかかるようになったのかと言えば、研究費の不正利用などが相次いだためでありますので、研究者の自業自得といえます。しかし、研究費の執行だけでなく、例えば深夜に実験するとか、団体で飲酒するとか、自転車で入構するとか、まあ次から次へと書類、書類のオンパレードです。しょっちゅう書式が変わっただ提出締め切りがなんだとか、本質とは関係ないところでも頭を悩ませてきます。
?図は文献より引用
大変失礼な言い方かもしれませんが、このような豆を数えるような作業(bean counterとは英語で経理屋という意味です)のために大学はどれくらい事務職員を抱えることになるのでしょうか。
米国における調査によると、1993年には学生100人あたりフルタイムの教員が6.0人に対して管理職は6.8人でした。それが2007年には学生100人あたり、教員が7.0人に対して管理職は9.4人になっています。我が国のデータが見つからなかったのですが、傾向としては同じようなものでしょう(パートタイムの職員が増えているかもしれません)。
限られた大学の収入の中で必要な経費を捻出していかなければならないわけですが、人件費というのの占める割合はかなりのものと思われます。一説によると人件費は総支出の半分を占める大学もあるようです。増大する一方の人件費を削減するためか非正規の任期付ポジションも増えています。そのうえ国公立の職員の給与は一律カットです。
大学ってなんなんでしょうね。こんな研究したい、こんな教育したいというのが少なくとも全ての教務職員にはあると思いますが、事務方から求められるのは学生に対する過度とも言えるサービスと、受験生集めのためのキャッチーな話題提供ばかりです。その辺の必要性もある程度は認めますが、なんか大学という組織の方向性が正しいのかどうかわからなくなってきます。
ぐちぐち言っても仕方ありませんね。きっと何処かに鬼が潜んでいるに違いありません。今日は盛大に豆でも撒いて大学から鬼をたたきだそうではありませんか!
化学系の研究室に撒くときはピーナッツがお勧めですよ。皮を捨てれば後で食べれますからね。ビールにもあいますし。
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