[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

科学ボランティアは縁の下の力持ち

[スポンサーリンク]

 

科学技術をわかりやすく市民に伝えることの重要性がとかれている今日この頃です。
研究者も科研費を申請する際にはそのような活動について記入しなければなりません。古くはファラデーが一般市民向けに講座を開いていてろうそくの科学というクリスマスの講座は書物としても残っているくらいです。

研究者がそのようなアウトリーチ活動をすることは重要なことですが、草の根的に主に大学生、もしくは大学院生が主体として活動しているグループがたくさんあることは意外と知られていないのかしれません。

今回のポストでは先日行われたサイエンスアゴラにて筆者がお話しをうかがうことができたいくつかの団体、特に学生が運営の主体となっている団体について勝手に紹介したいと思います。当方の身分を明かさずに根掘り葉掘りたずねるという無礼者にもかかわらず、丁寧にご対応いただきました関係者各位にこの場を借りてお礼申し上げます。

volunteer_1.jpgさて、最初にご紹介するのは、首都大学東京のサークルTMU-SFC さんです。お隣さんの出展者でした。主に子ども世代を対象として化学実験を体験させるという内容で、ペーパークロマトグラフィーの体験などをおこなっていました。水と油と界面活性剤実験は非常によく工夫されていて素晴らしかったです。(tweet参照
子どもたちがひっきりなしにブースに訪れており垂涎の眼差しで見ておりました。
普段は学園祭での活動や、「体験!化学実験」(2013年のHP)というイベントを開催し、八王子市などで小学生を対象とした実験教室を行っているそうです。活動資金は子どもゆめ基金の助成を受けているようです。エネルギッシュな学生さんばかりでして彼らのこれからの活躍が楽しみです。

volunteer_2.gif次に紹介しますのは学生ボランティア集団ちもんずさんです。科学技術館で市民向けに科学ライブショー「ユニバース」を定期的におこなっている団体で、学生が運営して、アカデミアのスタッフがショーの公演をしたり、講師を呼んで公演したりしているそうです。
対象は特に定めておらず、とにかく先端科学技術をなんか面白いと思ってもらうようにしているとの事で、大人でも十分に楽しめそうな内容だなと感じました。
出展は私が覗いた際は分子の運動を紹介していましたが、天文学分野に強いようですね。
科学博物館における活動とのことで、運営資金は科学博物館に出資している団体(あえて具体名は伏せます)から出ているとのことです。学生さんは博物館実習などを通じて参加している方が多いようです。

volunteer_3.jpgお次は青空理科実験教室 農かがくさんです。脳科学というのはどこかで聞いたことがありますが、とはこれいかに。実は埼玉県にあるファーム・インさぎ山にて農業、農家さんの知恵を通じて科学に親しんでもらおうという活動をされております。確かに農家さんの技術は物理とか化学に関するネタの宝庫でして、科学が発展する前から伝統の知恵で驚くべき効率的な工夫が数多く実用化されています。そんな農家さんの知恵は若年層に身近なところからアプローチして大きな影響を与えることができる素晴らしい活動だと思いました。
世話人としてアカデミアの方がいるそうですが、代表者は学部学生の方でして、代替わりしていくそうなのでインカレのサークル活動に近いものがあるのかなと思いました。よって資金は具体的にはどこからも出ておらず、実験教室に参加された方からの謝礼などで運営されているとのことでした(教室への参加は無料です)。

いずれのグループもこのような素晴らしい活動をなされているとのことには頭が下がります。科学技術創造立国はなにも最先端のサイエンスのみで成立するはずがありません。こういった草の根的な活動による地道な普及活動によっても支えられているのではないでしょうか。資金や運営の問題もたくさんあると思いますが、ぜひとも継続していただければと思います。

尚、サイエンスアゴラでは素晴らしい活動をされている団体がここで紹介しきれないくらい多数ありました。全ての方々を紹介できなかったことお詫び申し上げます。(寄稿をお待ちしております!)

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4309616623″ locale=”JP” title=”幸せを届けるボランティア、不幸を招くボランティア (14歳の世渡り術)”][amazonjs asin=”4777517063″ locale=”JP” title=”高校教師が教える化学実験室―高校大学の授業にプラスアルファ!ユニークな実験集 (I・O BOOKS)”][amazonjs asin=”4092172176″ locale=”JP” title=”科学の実験~あそび・工作・手品~ (小学館の図鑑NEO)”][amazonjs asin=”B00G3KY92Q” locale=”JP” title=”科学と文化”]
Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. ケムステV年末ライブ2022を開催します!
  2. 大学入試のあれこれ ①
  3. 炭素繊維は鉄とアルミに勝るか? 2
  4. 薬剤師国家試験にチャレンジ!【有機化学編その2】
  5. 水入りフラーレンの合成
  6. 分子研 大学院説明会・体験入学説明会 参加登録受付中!
  7. リチウムイオン電池の課題のはなし-1
  8. 2018年1月20日:ケムステ主催「化学業界 企業研究セミナー」…

注目情報

ピックアップ記事

  1. シリカゲルの小ネタを集めてみた
  2. エステル、アミド、ニトリルの金属水素化物による部分還元 Partial Reduction of Esters, Amides nad Nitriles with Metal Hydride
  3. マルコ・ラム脱酸素化 Marko-Lam Deoxygenation
  4. フラーレンの中には核反応を早くする不思議空間がある
  5. 植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~
  6. UCLA研究員死亡事故・その後
  7. クリック反応を用いて、機能性分子を持つイナミド類を自在合成!
  8. ケムステイブニングミキサー2016へ参加しよう!
  9. 理論的手法を用いた結晶内における三重項エネルギーの流れの観測
  10. 学振申請書の書き方とコツ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー