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化学者のつぶやき

UCリアクター「UCR-150N」:冷媒いらずで-100℃!

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皆様毎日化学研究に勤しんでいると思います。このたびあったらいいな!を実現する化学メーカーさんにイチオシの製品を紹介してもらうコーナー(カテゴリ)「製品情報」をつくりました。

とはいってもランダムによくわからない製品を紹介されても困りますので、化学者による化学者のためのサイト「ケムステ」としては以下のことを考慮したいと思います。

 

1. 記事はケムステで作成:現役化学者の意見

2. ケムステスタッフができる限り触って使った製品を紹介:良さそう面白そうではなくて良いもの面白いものを

3. 正直な意見を:長所があれば必ず欠点もあります

 

もし紹介した製品をみたらケムステでみました!といってくれればさらに交渉は進めやすくなるかもしれません。では、記念すべきこのカテゴリの第一回目は…

 

毎回ユニークな製品を生み出すテクノシグマさんの極低温反応装置UCリアクター「UCR-150N」 に焦点を当ててみました。

極低温の反応を簡便に

UCR-150N

-78℃いやそれ以上の極低温反応を行う際には皆様どのように反応をかけていますか?-78℃ならアセトン/ドライアイス、それ以下ならばメタノールorエタノール/液体窒素でデュアーバスを用いて反応をかけるのが主流だと思います。長時間かけたいならば低温恒温水槽。個人的に使いすく場所をとらないのは東京理化のマグネチックスターラー付低温恒温水槽(ローテンプペアスターラー) PSL型などがオススメです。ただ夏の湿気の多い時期。すぐに冷媒が水を吸って凍って撹拌できなくなってしまう…あんまり使ってないので立ち上げが遅いなどいくつか問題もあります。筆者の研究室も最近はもっぱら高温反応がメインで低温で行う恒温槽はあまりスイッチが入っていません。

 

それらの問題を解決してくれるのがUCリアクター。通常のオススメポイントは以下のとおり。

 

1. 立ち上げがはやい!30分で-80度まで到達します。

2. アルミブロックを冷やすので、冷媒がいりません。(ブロックの代わりにデュアーバスを設置することもできます)

3. 大きさも小さい東京理化の低温恒温水槽の約半分 。卓上で実験が行えます。(重さ16Kg 幅19cm 奥行き38cm)

4. -100℃から50℃までの温度制御が可能(±0.2℃)

 

それではもう少し詳しく見てみましょう。

 

UCリアクター UCR-150N 解剖!

反応を行っている際の様子を以下に示します。基本的にスターラーは別で、アルミブロックの下に挿入する形になります。アルミブロック自体はいろいろと特注可能ですので、大きなものでも小さなシュレンクでもぴったりはまるようにつくってくれます。中央に外部温度センサー(別売)がありそれを使うとより高度に温度制御することができます。

ucreactor2.png

液槽バスでの冷却反応では、外部温度センサーで液槽中の冷媒温度でUCRを制御する方法をお勧めします。理由は、下図のように制御用温度センサー位置(赤矢印)は冷凍機に近く、素早く冷えるため、液槽中の冷媒温度と制御用温度センサー位置とで、温度に差が生じます。すなわち、作動初期に温度差が生じることを意味しています。スターラーでの冷媒攪拌と青矢印のところに外部温度センサーを設置してUCRの温度制御をすると温度管理が適切に行えます。

 

UCreactor3.png

室温の約5℃以下ぐらいまでは、昇温降温プログラムも組めるので、例えば-80℃から徐々に昇温するなんてことも可能です。冷却方式はヘリウムサイクル冷凍機を使ったもので、低温恒温水槽(コンプレッサー方式)と全く異なるため消費電力も小さく、エアコンでいえばクーラーと室外機が同じ所についている低温恒温水槽によくある、「つけていると暑い!」なんてことはありません。温度のブレ幅もセンサーをつけているとほとんどなく、0℃以上の温度でもしっかりキープしてくれます。冷媒を使わないので、グローブボックス内で冷却!っということも可能だと思います。

と、簡単に説明しましたが、テクノシグマさんのよいところは、こんな感じにしたいんだけど!というと要望に簡単に答えてくれるところです。例えば、通常はスターラー挿入の高さは120mmとなっていますが、研究室にあるスターラーの高さに合わせて調整してくれます。そもそもUCリアクターの初号機から研究者の意見を取り入れて変わっていき、ひとまず落ち着いた現在の形になっています。

 

よくある質問集!

テクノシグマさんからよくある質問集をいただいたので一部を公開します。

Q1. もう少し、小さくならないの?

A2. これいじょうは小さくなりません。

Q2. グローブボックス内は、ものが多く、スペースがない。省スペース化できますか?

A2. GB内に棚が設置されている場合が多いです。その棚とGB床面の高さが230mm以上あれば棚の下に収納することができます。その高さはスターラー込みの高さです。(スターラーの高さが80mmのもの)その他の手段として、縦型も可能です。この場合は容器が限定されますのでご相談ください。過去の実績としてφ23mm、長さ243mmのシュレンク管やφ27mm、長さ60mmのバイアル瓶に対応した経験があります。

Q3. アルミブロックの冷却部と接触している部分と先端の部分で温度差はないですか?

A3. 冷却開始から設定温度に到達した直後は、温度差がありますが、設定温度到着後30分程度で、その差はなくなります

Q4. どの部分で温度管理しているのですか?

A4. 標準は、アルミブロックを取り付ける付近にセンサーがあり、そこの温度で制御しています。液槽バスの場合は、本体冷却部分と液槽バス内の冷媒温度には当然差が生じます。液槽バスの場合は、バス内に回転子を入れて必ず攪拌してください。さらに、外部温度センサーをバス内につけることをお勧めします。

Q5. 反応容器内の液温で管理したい。できますか?

A5. 可能です。テフロン被覆した外部温度センサーをお使いください。

Q6. 反応中に発生する発熱に追随するのですか?

A6. 十分、追随して冷却します。(急激な発熱以外)

A7. 500mLや1Lのサイズには対応できませんか?

Q7. 条件付きで対応できます。条件とは、ドライアイスや液体窒素を併用していただくことです。ドライアイスや液体窒素で補助的に冷却していただけると、その後、温度は保持いたします。

 

本当によいの?欠点は?

前述したように欠点がないものはありません。今回のUCリアクターに関しては、基本的にアルミブロックの仕様がスタイリッシュなので同時にいろいろなサイズの反応をかけたり、反応容器を様々なものに変えたい場合は恒温槽のほうが良いと思います。また、値段が若干高め(交渉してください)で特にアルミブロックは1つ10万円くらいします。本体60万ちょいぐらい(センサー込み)です(交渉して下さい)。高めと言っても恒温水槽は結構するのでそれを考えたら悪くない値段かと思います。ちなみに、競合製品はないかと思っていましたが、最近東京理化が同じようなものを出しはじめたんですね。[マグネチックスターラー付低温槽 PSL-2500A・B型]といって、業者がカタログをもってきましたが、ほとんど同じでした。こっちはスターラー付きです。この件どうなのかわかりませんが、面白いものがでてくると類似製品が一挙にでてくるのはどの業界も一緒ですね。それにしても同じだ…。

 

ただ個人的にはこのテクノシグマさんが結構面白い会社で好きなんですね。元研究者や技術屋で構成された会社なので、研究者のかゆいところに手が届く商品を提供しています。たまに(いや結構)おもいっきり外してる商品もみられますが、そこがまた愛嬌。全然関係ない他社で購入した製品の修理も格安で請け負ってくれます(これはいっちゃってもいいのかな?)。

 

最後に

今回はテクノシグマさんのUCリアクターを紹介させていただきました。資料をご供与くださったテクノシグマさんにこの場を借りて御礼申し上げます。また、この製品に関してはレビューを行っているだけで、なんの関係もありませんので質問等はすべてテクノシグマさんによろしくお願いいたします。こんな感じでこれから定期的に研究に役立つ物品、装置を紹介していきたいと思いますのでお楽しみに!

 

お問い合わせ先:株式会社 テクノシグマ

〒701-2141 岡山市北区牟佐874-5

TEL 086-229-9521

FAX 086-229-9522

http://www.techno-sigma.co.jp/

E-mail info@techno-sigma.co.jp

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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