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Reaxys Prize 2013ファイナリスト45名発表!

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さて、今年もこの季節がやってきました。Reaxys Ph D Prize ファイナリストの発表です。博士課程の学生もしくは博士取得後1年以内の方に与えられる、主に有機化学分野での国際賞。今回、で4回目になりますが、これまでもケムステではReaxys Prizeを応援してきました(これまでの記事は関連記事参照)。なぜなら世界中の腕に覚えある超若手化学者が応募する賞であるからです。数十年後の世界の化学を牽引する化学者がいるかもしれません。そう思うとドキドキしますね。今回は前回(350人)をはるかに超える580人が応募し最後の3人に選ばれる45人が決定しました。日本人を中心に紹介してみたいと思います。

 

日本人のファイナリスト!

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(写真は勝手に掲載させていただいています。問題の有る方はご連絡いただければ対処いたします。)

日本人(日本の大学もしくは海外の大学で博士号を取得予定もしくは取得した学生)のファイナリストは7人!前回に引き続き多くの方がファイナリストへと選出されました。

石田洋平さん(首都大学東京)の高木研究室出身。同研究室で博士取得後、現在は日本学術振興会特別博士研究員(PD)として同研究室に所属しているようです。多くの研究結果を上げており(ホームページの論文情報から検索すると14件)主に、カチオン性フタロシアニン誘導体を合成し、無機ナノシート上での光エネルギー移動反応を行なっています。2012年には日本化学会春季年会の学生講演賞も受賞しています。

 

“Artificial Light-Harvesting Model in a Self-Assembly Composed of Cationic Dyes and Inorganic Nanosheet”

Ishida, Y.; Shimada, T.; Takagi, S.

J. Phys. Chem. C. 2013, 117, 9154. DOI: 10.1021/jp4022757

 

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大石俊輔さん(名古屋大学)は名古屋大学野依特別研究室出身。博士取得後ドイツ、ベルリンのPeter H. Seeberger研で博士研究員を行い、現在は同大学のトランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)のJef Bode研究室のCo-PI(特任助教)として働いています。選考対象となった研究は独自に開発したアミノ有機ホウ素錯体(AOB)を触媒として行った合成反応。下記の文献では官能基選択的な加水分解反応やオキサゾリンなどの温和な加水分解反応を達成しています。筆者も同じ名古屋大学理学部所属ですので学生の頃ころからよく知っていますが、とても優秀な研究者です。現在スイスETHのBode研究室で半年ほど研究の方向性を決めている所で秋から同じ研究所で働くこととなります。

 

“Double Molecular Recognition with Aminoorganoboron Complexes: Selective Alcoholysis of β-Dicarbonyl Derivatives”

Oishi, S.; Saito, S.

Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 18, 5395. DOI: 10.1002/anie.201200304

 

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白水美佳さん(米カリフォルニア大学バークレー校)はToste研(Dean Toste)の博士課程学生。東大小林研(小林修教授)のところで学士をとってから米国に渡っています。バイオマス由来の原料合成法としてオキソレニウム錯体を用いたシュガーの触媒的な脱酸素脱水反応の研究を行なっています。Toste研究室からは毎年多くのファイナリストが選ばれています。今後の進路はわかりませんが、海外留学組の女性ということで今後も目立つ存在になることは間違いないでしょう。

追記:残念ながら(?)アメリカで企業に就職が決まっているようです。

 

“Deoxygenation of Biomass-Derived Feedstocks:Oxorhenium-Catalyzed Deoxygenation of Sugars and Sugar Alcohols”

Shiramizu, M.; Toste, F. D.

Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 8082. DOI:10.1002/anie.201203877

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竹内勝彦さん(筑波大学)は関口研究室出身。現在はカナダトロント大学のDoug Stephan研究室で博士研究員として働いています。ジシリンとアゾベンゼンを反応させてSi2N2四員環ビラジカロイド化合物を合成したり、新しいタイプのジシリンを合成するといった研究を行なっています。非常に精力的に研究を行なっており、その結果、筑波大学大学院数理物質科学研究科優秀論文表彰(修士、博士課程)、ISMS2009ポスター賞、第14ケイ素化学協会シンポジウム優秀ポスター賞、第22回基礎有機化学討論会 ポスター賞など多くの賞を受賞しています。

“A New Disilene with π-Accepting Groups from the Reaction of Disilyne RSi≡SiR (R = SiiPr[CH(SiMe3)2]) with Isocyanides”
Takeuchi, K.; Ichinohe, M.; Sekiguchi, A.
J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 2954. DOI:10.1021/ja212065a

 

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千葉浩亮さん(京都大学)は京都大学藤井研究室出身。現在はToste研究室で博士を博士研究員として働いています。主に生物活性分子の合成を目的とした反応開発およびその全合成を行なっており、最近では金触媒を用いた位置選択的分子内ヒドロアミノ化反応を鍵反応としたキノカルシンの全合成を達成しています。

 

“Total Synthesis of (-)-Quinocarcin by Gold(I)-Catalyzed Regioselective Hydroamination”

Chiba, H.; Oishi, S.; Fujii, N.; Ohno, H. 

Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 9169. DOI: 10.1002/anie.20120510

 

 

 

 

 

平井健二さん(京都大学)は京都大学北川研究室(北川進教授)出身。多孔配位性高分子を利用した結晶化に関する研究を行なっていたようです。今年の4月からミシガン大学のKotov研で博士研究員をしています。

 

“Porous Coordination Polymer Hybrid Device with Quartz Oscillator: Effect of Crystal Size on Sorption Kinetics”

Uehara, H.; Diring, S.; Furukawa, S.; Kalay, Z.; Tsotsalas, M.; Nakahama, M.; Hirai, K.; Kondo, M.; Sakata, O.; Kitagawa, S.

J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 11932. DOI; 10.1021/ja205082p

 

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藤田大士さん(東京大学)は東大藤田研究室藤田誠教授)出身。クラウンエーテルがカリウムを包接するように多孔配位性高分子を使ってタンパク質を包接するという大きなテーマの研究を行なっていました。同研究室で博士取得後、現在は韓国POSTECのFujita研で助教として働いています。この化学者のつぶやきにも、「大津会議体験レポート」を寄稿いただいています。この間飲みまして、韓国での苦労話等をききました。明朗活発でよくできるので、いい研究者になると思います。

 

“Protein encapsulation within synthetic molecular hosts”

Fujita, D.;  Suzuki, K.;  Sato, S.;  Yagi-Utsumi, M.;  Yamaguchi, Y.; Mizuno, N.;  Kumasaka, T.;  Takata, M.;  Noda, M. Uchiyama, S;   Kato, K.  Fujita M.

Nature Commun. 2012, 3, 1093. DOI: 10.1038/ncomms2093

Unknown

 

その他注目のファイナリスト

 

実は圧倒的に多いのが中国人学生。およそ日本人の2倍、3分の1を中国人学生が占めています。これは欧米からの申込割合が減っていることも一因としてあると思いますが、ここ数年の圧倒的なレベル上昇が原因でしょう。Chuan Heさんは中国では独自のスタイルで合成反応開発、反応機構解明研究を行なうAiwen Lei研より、 Shaoguang ZhangさんはZhenfeng Xi研究室で19報も論文を出している強者。Da-Gang Yuさん(Zhang-Jie Shi研究室)も15報以上。現在はドイツミュンスター大のFrank Glorius教授のところで博士研究員をしているようです。論文は数では測れませんが、学生のプロダクティビティはみえます。日本にこれだけのプロダクティビティのある学生はいまいるでしょうか。

また、Ke Gao はシンガポール南洋工科大学の吉戒研究室出身です。若い日本人のPIの研究室からというのがよいですね。一方で、米国の有名研究室も負けてはいません。Daniel RobbinsさんはHartwig研で合成ロボットをもちいたハイスループット反応開発法を開発しScienceに報告しています。[1]また、Bill MorandiさんはCarreira研究室でジアゾメタンを鉄触媒でin situで発生させシクロプロパン化反応を実現し同じくScienceに報告しています。[2 ]両者ともアイデア勝負で出処がいまいちわからないので学生の能力は図れませんが、注目ですね。

 

 Robbins, D. W.; Hartwig, J. F. Science, 2011333, 1423. DOI: 10.1126/science.1207922

Morandi, B.; Carreira, E.M. Science 2012, 335, 1471. DOI:10.1126/science.1218781

 

ここから3名最終受賞者として選ばれます。どなたが580名の博士課程学生の頂点に至るでしょうか?注目です。

 

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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