突然ですが,みなさんはリサーチ・アドミニストレーター (URA) という仕事をご存じですか?ちなみに筆者は,つい先月公募を見て初めて知りました.何だこの職種は??と思って,Wikipediaで調べてみると…
『リサーチ・アドミニストレーター(Research Administrator)とは、企業や大学、研究所などの高等教育研究機関において、研究面から経営・運営に直接的に関与する上級管理職、役員級職のことである。トップダウンの支配命令型リーダーではなく、調整管理型リーダーであるサーバント・リーダーとしての役割を担う役職である。株式会社などの企業で言えば執行役員級の管理職であり、上級(シニア)職は取締役級の職位(例えば、最高技術責任者(CTO))である。』
お話を聞かせてくれたURAさん
今回お話を伺ったのは,東京農工大でURAをしておられる丸山さんと阿部さんです.
(ちなみに,リサーチ・アドミニストレーターの略称がRAではなくURAなのは,大学におけるRA: Research Assistantとかぶらないようにするためだそうです!UはUniversityの略です)
URAが導入されたいきさつは?
URAが日本で導入されたいきさつには,まず国立大学が法人化したことが背景にあります.国立大学時代では,大学は文部科学省から特別会計のお金を受けて運営していました.しかし,2004年度の法人化により一般会計からの運営費交付金となり,人件費もすべて含めて1年1%の削減が決まったため,競争的資金を獲得するための提案や成果を出すことが求められるようになりました.そのため教員は,研究成果をより明確に求められ,研究成果が挙げられる研究が推進されるようになり,職員はこれまでの事務や企画能力に加え,組織改革や研究支援と言った能力も必要とされるようになりました.しかし,それにともなって様々な問題が生じます.教員は従来の教育・研究に加え,社会のニーズを察知して,研究の成果をアピールして,国の資金制度を調べて応募して….一方職員も,資金を獲得しなきゃ大学の収入が減ってしまう!でも研究分野もよくわからない,どこまで立ち入っていいかも分からない,どうすれば??…ようするに,みんないっぱいいっぱいになってしまったのです.そして若手研究者が減少している!とNatureに書かれたり,論文の数・質ともに減少してしまったり…(なんて,これらの直接の原因が法人化とは言い切れませんね).この事態を解決するため,文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室が,『研究開発内容について一定の理解を有しつつ,研究資金の調達・管理,知財の管理・活用等をマネジメントする人材』(=URA)を養成する仕組みを策定しました.その結果,平成23年度に5校,平成24年度に追加で10校の採択が決まったのです.
URAの実際の仕事は?
農工大URAの現在の活動状況は,以下の三つに大別されます.■次世代研究政略こちらには,主に次世代に向けての研究戦略をすることで,大学のブランド価値を高める取り組みが含まれます.具体的には,農工大次世代研究戦略に係るプロジェクトの企画・推進や農工大発新産業創出の組織的な加速戦略の立案・推進が行われているそうです.また,次世代若手研究者の科研費計画調書のロジカルライティング添削を行うことで,支援案件採択率は平均を上回る42.9%となったそうです!■重点研究戦略こちらには,主に既存の研究拠点やプロジェクトの研究戦略をメインに,全体最適化を行う取り組みが含まれます.大型研究プロジェクトの継続戦略や大型連携研究(産学,国際等)の拡大戦略の立案・推進等を行っているそうです.■マネジメント上記二つは,申請時の職域であるPre-Award的な支援が中心でした.しかし,URAの仕事は,申請すれば終わりというわけではありません!もちろん,申請後の職域であるPost-Award的支援もURAの仕事に含まれます.例えば,プロジェクトに必要な人員・組織・設備の整備,プロジェクトの進捗管理,プロジェクトの会計・財務,知的財産を含む研究成果の管理,広報等々….そうです,これらの仕事は,これまで大学職員や産学連携組織等が行ってきた従来の業務も含んでいます.つまり,URAは全く新しい仕事というわけではなく,従来よりも包括的に研究支援を行う業務であると言えます.
URAの現状と今後について
「研究者からURAになるということは自身のキャリアパスを大きく変更するということ. そして補助事業後も”大学が引き続きURAを必要とし続ける”という真の意味でのURAの定着を実現するには,URAたち自身が業務と価値を創造していかなければならないということ. その意味の理解と覚悟をもって目指してほしい.」