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花粉症対策の基礎知識

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花粉症でお悩みの方には辛い季節がやってまいりました。盛んにニュースで杉花粉が飛散している映像を流してますが、なんであの杉の木を伐採してくれないんだろうか?と疑問に思いませんか?この季節は花粉に黄砂にPM2.5次は煙霧だと、まあとにかく麗らかな春というのは今後無いんでしょうね。

 

そんな愚痴を言っても始まらないので、今回のポストでは花粉症をきっかけとして、知っておきたい医薬品の基礎知識についてご紹介します。特に花粉症でお悩みの方の参考に少しでもなれば幸いです。

 

そんなの知ってるよという方も多いと思いますが、花粉症はヒスタミンという物質が鍵を握っています。花粉のようないわゆるアレルゲンと呼ばれるアレルギーを引き起こす物質などが体内に入り込むと身体の中で過剰な防衛反応が起こってしまう状態が花粉症のような症状である、かゆみくしゃみなどを引き起こします。

 

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ヒスタミン(左)とアミノ酸の一種ヒスチジンの構造

花粉症の症状が出た時に選ばれる選択肢としては、医薬品によって症状を緩和しようという試み(対症療法)が最も広く用いられています。ではどんな医薬品があるのでしょうか。

ヒスタミンが問題なので花粉症の症状を緩和する為には、信号となる物質のヒスタミンの生成自体を抑えるか、できてしまったヒスタミンをどうにかするかによってアレルギー症状を緩和する必要があります。そのような用途で用いられるのが抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬には世代があり、第一世代は眠気などの副作用が若干強いという欠点がありました。

 

それに対して1983年以降に発売され、眠気などの副作用が少ないとされているのが第二世代抗ヒスタミン薬と分類される薬です。ヒスタミンを細胞が受け取る受容体(H1)を阻害して、あたかもヒスタミンが生産されていないかのように勘違いさせる薬剤です(拮抗剤といいます)。

ではどうすればそれらの医薬品は手に入るでしょうか?薬局に行けばいい?そう単純ではありません。薬局で買う事ができる薬(一般用医薬品といいます)は限られています。医師の診断を受け、医師の処方箋を受けて初めて買う事ができる薬(処方せん医薬品といいます)があります。処方せん医薬品に該当する坑ヒスタミン薬では協和発酵キリンが販売しているオロパタジン塩酸塩、商品名「アレロック」がよく出されます。

 

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オロパンタジン塩酸塩

でも医師にかかるのが時間的に難しい職業の方だって世の中には沢山いますよね。先日筆者の家族が耳鼻咽喉科にかかろうかと思って掛かり付けクリニックのHPを見たら、なんと九時間待ちという表示で断念した事がありました。この季節は言葉は悪いですが書き入れ時なんですね。

 

そんな時に心強いのが薬局です。薬局で薬を選ぶ際は必ず、薬の箱の裏を見てみましょう。すると、第二種医薬品とか、医薬部外品とかの表示があるはずです。まあ細かい分類は置いておきまして、これらは効能の強さ、ひいては副作用の危険性などによって分類されています。花粉症のコーナーで手にとって選ぶことのできるのは第二種医薬品までです。どこを探しても第一種医薬品は無いはずです(ダミーの空箱は置いてあるかも)。第二種医薬品で花粉症への効能があるとされているものとして、武田薬品工業千寿製薬のクロルフェニラミンマレイン酸塩などを配合した「マイティアアイテクト アルピタットN」のような点眼薬があります。

 

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クロルフェニラミンマレイン酸塩

第一種医薬品は薬剤師との対面販売が義務付けられていますので、薬剤師が不在だと購入することができません。それだけ使用においては比較的注意が必要であるということです。もし、第一種医薬品をなんの説明も無く出してくる薬局があったら、そこでの購入はお薦めできません。そしてこの第一種医薬品で花粉症に効くとされている抗ヒスタミン薬としては久光製薬から鼻炎薬として、塩酸フェキソフェナジン、商品名「アレグラFX」、エスエス製薬から鼻炎薬として、塩酸エピナスチン、商品名「アレジオン10」、興和から点眼薬として、アシタザノラスト水和物、商品名「アイフリー コーワAL」などが販売されています。

 

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塩酸フェキソフェナジン(上)、塩酸エピナスチン(左下)、アシタザノラスト水和物(右下)

これらは当初医師の処方箋が必要だった医薬品の中で、薬局での販売が許可された薬です。このような薬をスイッチOTCと称します。すなわちスイッチOTCは効き目が強いのかもしれません。実際は製薬会社が薬価や利益をどう判断するかという効果とは無関係なファクターも存在するので一概にスイッチOTCなら強力だとは判断しない方がいいのかもしれません。ただ筆者は腰痛持ちなのですが、スイッチOTCのジクロフェナクの湿布がもの凄く効くので助かっています。

 

また、処方薬であれば薬価が決まっているので全国どこでも価格は同一で(調剤薬局によって加算される金額が若干異なります)、かつ保険診療が受けられれば三割負担程度で済みます。一方全く同じ成分の薬のスイッチOTCを薬局で購入する場合は、保険が効かないですし、薬局によって価格が異なる可能性もあります(あまり第一種医薬品をセールで売るというのは聞いた事がありませんが、ポイントが付いたりはしますよね)。実際は医師の診察料、調剤薬局でのプラスアルファが上乗せされるので、トータルした価格はそんなに大きく違わないかもしれません。ということで少しシミュレーションしてみましょう。

 

お医者さんに初診でかかった場合、特に検査をしなかったとして、

初診料+処方箋料で保険点数は338点で自己負担は1010円

調剤薬局に行くと、調剤基本料、基準調剤加算1、後発医薬品調剤体制加算1、薬剤服用歴管理指導料、薬剤情報提供料で85点として自己負担は260円

アレグラ(塩酸フェキソフェナジン60 mg)を1週間分(14錠)処方してもらったとして、薬価は1錠75.60円だから1日15点で7日分は105点として自己負担は320円

合わせると1590円

一方アレグラFXをケンコーコムで買うと28錠が1980円なので14錠は990円。よってスイッチOTCの方がお得でした。およその計算なので間違ってたらごめんなさい。
また、再診で継続的に受診すれば初診料の分は安くなりますので差がどんどん縮まっていきます。

 

いずれにしても、どんな医薬品でも効く人、効かない人、副作用が出る人、出ない人がいるのは事実なので、基本的な知識を持った上で賢く選択していくことが重要です。以上製薬会社のステマでした。

 

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有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

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